大宮の監督問題 OWL Channelを聞いて思うこと
youtubeですが音声だけなので「聞いて」どう思ったかということを書いてみます。(上のリンクだと17分から再生されます。ちょうど監督問題を語り出すところです)
まずは岩瀬監督問題です。
まず、この日の大宮を見てですが、チャンネルでも語られている通り「そこまでネガティブな印象はない」という感じです。
全くの初見ですが、41番小野や裏に抜け出したFW中野は素晴らしかったと思います。
もちろん現在最下位なので全く結果が出ておらず、褒められるわけはありません。むしろ勝っていない以上批判されるのは当然だと思います。
チャンネルの中で語られていたのは「チームがまだ壊れておらず、岩瀬監督には求心力が残っている。まだ替え時ではないのかもしれない。」とも語られていました。
そして大宮ウォッチャーの方からは「今年、大宮は初めてトップチームとユースチームが同じ戦い方になった。柏の育成組織出身の岩瀬監督が大宮をようやく街のクラブのあるべき姿にしようとしている。ここで岩瀬監督が去ってしまってはアルディージャの未来はどうなってしまうのか。」と言ったような意見が語られていたが、その方の意見は極めて少数派らしい。(そりゃそうだ)
そうなんだけど、アルビレックスサポーターからすると、この話はゾッとする話です。
新潟にもあったそんな時代 はいそうです、吉田達磨さんです
新潟の吉田達磨さんの時とそっくりなのです。
柏の育成出身で人の心に火を付ける男であり、知識、熱意、人柄が素晴らしく、未だに当時の選手も「あの監督のサッカーをもっと続けたかった気持ちはある」と語ることもあるとか。(僕もリアルに聞いたことがあります)
ロマンがあるんですよね。トップチームの成績以外にそういった影響力を出してくれる監督。
なんですが、ちょっときついかなと思います。
というのもトップチームは勝つ義務があるからです。
少なくともアルビレックスにはあります。独立採算かつ大資本に支えられない独立クラブです。
単年度単年度が勝負です。
ですが、大宮にはある程度負けが許されます。NTT関東が元々のクラブであり、NTTドコモがメインスポンサーであり、1.5万人のスタジアムでも経営が成り立つクラブ。悪くいえば地域密着ではなく、企業密着型クラブです。
クラブに確固たる決意があるのなら、2年でも3年でも時間をかけることができます。
脱吉田達磨後の新潟はどうなったか
2016年、吉田監督を守りきれなかった新潟はその年はギリギリ降格を免れるも翌年2017年三浦文丈監督も解任し、その年J2に降格。
2018年には鈴木政一監督を途中解任、ヘッドコーチを務めていた片渕監督を昇格させる。
翌2019年は片淵体制でスタートを切るも、4月中に解任され吉永監督がまたもユースから昇格。
後述する通り、監督が自分の色を出せるのは2年目からなので4年連続監督を解任するチームが強くなるわけがありません。
この時点だけ見ればアルビレックスは吉田監督とJ2に落ちた方がいいチームになっていたはずです。
ちなみに解任後にバトンを受け継いだ監督の中にはユースチームの指導をしていた吉永さんはアカデミーダイレクターという職責にあったので、そっちにも大きな負の影響ががあったはず。
アルベルト監督を見ていると
吉田達磨監督は3列目からの持ち上がりを重視し、ハーフスペースを使った再現性のある攻撃をやろうとしていたわけでアルベルト監督のやろうとしていたことの五歩くらい手前のところにはいたように思います。
そりゃ当時の選手たちに「あの知識はすごい、あんな考え方ができるなんてすごい、あのサッカーを続けたかった」という気持ちを芽生えさせていたのも想像がつきます。
ただ、アルベルト監督のチームづくりを見ていると「とにかく完成させるのが早い」という印象を受けます。アルベルト体制2年目の今年は序盤から圧倒的ですが、彼は日本に来てから15ヶ月であり、しかも監督として指揮を取るのは初めての経験です。
この圧倒的な速さ。
よく鍛えられたアルビサポーターはチーム始動後すぐに今年の調子がある程度予想がつくもんなんです。
というのもプレシーズンの試合で連勝している年は単純に強く、プレシーズンで勝てていなかったり迷走が見られる年は大学や地域リーグクラブに負けるほど弱いからです。
いいチームを作れる監督はチームのコンセプトが明確で、チームを完成させるのがとにかく早いのです。特に独立系のクラブで財政基盤の弱いアルビレックスにとってはこの「チームを完成させる速さ」はとても重要なのです。
1年目の監督の呪いは編成
一方、1年目監督は明らかに不幸だという点もあります。
1年目の監督には越えられない限界があるからです。
それは編成の壁です。
そのクラブにどんな選手が在籍していて、その選手たちにはどのような戦術が蓄積されているか。
始動するベースが全く違うのです。
新潟でいえば反町監督が5年かけて作ったチームを譲り受けた鈴木淳監督、その鈴木淳監督が4年作ったチームを譲り受けた黒崎久志監督は幸運な監督だったと言えます。
一方、前述した迷走の4年間の監督は不運でもあり、その4年の元凶を作った柳下監督は罪な監督と言えます。次の監督に遺産を残していないからです。
2年目の監督は自分で遺産を作ることができるし、強化部と連動し自分のチームの編成にある程度自分の意思を入れることができます。
やりたいサッカーを体現してくれるアイコンになるような選手がいればそれは話が早いに決まっています。
僕にとって一番分かりやすかった例が代表監督に就任した直後のオシム監督です。
チームづくりのスピードを上げるため本人が指揮していたジェフと当時圧倒的な強さを見せていた浦和を中心に選手を選び、自分のやりたいサッカーや選手に要求するコンセプトをはっきりと示していました。
後から代表に加入する選手たちは「これが求められたコンセプトだ」と理解してから加入する形なので力を発揮しやすいはずです。
そういう意味では大宮の岩瀬監督は不幸でもあるが失格でもある
今は5月です。
チームは2月には始動しすでに3ヶ月が経過しています。
チャンネル内で岩瀬監督を擁護していた意見の中に「今はまだ選手の特徴を測っている状態」といった意見がありましたが、これはS級の監督としては遅すぎます。
もちろん自分に必要な選手がおらず、怪我人が出ている状態では辛いんだと思いますし不運だと思います。
でも、サポーターが岩瀬監督を擁護するには今のチームの結果がついてきていなさすぎます。
もし大宮アルディージャが岩瀬監督に掛けているのだとしたら、今頃は夏に行う強烈な補強のリストアップが完了している頃です。数億ここで使ったとしても、後に支払う呪いの代償を考えれば安いものです。
機能していない外国人選手、攻撃適性のあるボランチ不足、バックラインの控え不足。チームは足りないものだらけです。
アルベルト監督も昨年夏の補強には大きな恩恵を受けていました。
技術(選手)<戦術(監督、コーチ)<戦略(誰をチームに招き入れるか)
組織論で有名な考えに戦略のミスは戦術では取り返せないというものがあります。
日本ではあまり戦略と戦術を分けて考える文化がないのだけれど、実際今年のチームを見ているとよくわかります。
まずはチームに戦力をそろえること。
そしてそのチームに戦術を蓄積させていくこと。1年目の死の谷を超えた今年のアルビレックスの強さはそこが圧倒的に違うのです。
大宮アルディージャと岩瀬監督にその1年目の死の谷をこえる幸運が残っていることを祈ります。
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