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ポリエステルはすげーヤツ。

お久しぶりの #丸編み生地製造の勉強 の更新です。
個人的に色々と重なり、最終的には肺炎で寝込んでいましたが、元気に復活しました。待ってくださっていた方々、お待たせして申し訳ありませんでした。

さて、知っているようで知らないポリエステル。僕自身、曖昧な状態で16年を過ごしてきたわけですが、この度学びの機会を得て、改めてポリエステルの凄さに、そして余りにも多すぎる情報にノックアウトされてしまいました。織りや編みの現場にいる人や、生地企画をしている人たちが普段考えているポリエステルの常識が、ポリエステル製造者側の認識と大きくずれている現実も目の当たりにし、改めて繊維の知識を適切に持つ重要性を感じたのであります。マニアックな話になりますが、突き進みます。

まずポリエステルの原料は何か、ご存知でしょうか。
そう、石油です。石油から生成される成分を細かい金型から押し出して繊維化したものがポリエステル繊維になります。

原料が石油で生成されるポリエチレンテレフタレート製品は僕らの生活に密着しており、繊維の他にペットボトルなども仲間になります。
だからペットボトルを綺麗に洗浄して不純物を取り除き、再度溶解して金型から押し出せばポリエステル繊維として再利用出来ます。
僕ら繊維業界ではそんな再生ポリエステルのことをエコペットとか言ったりします。

樹脂だから水は吸わない

ということで、ペットボトルと同じと考えれば、繊維そのものが水をほとんど吸わないということは理解できると思います。ポリエステル繊維が水を吸ってしまったら、ペットボトルはびちゃびちゃになっちゃいますからね。

タオルとかでポリエステルを使っている場合やスポーツ向けのインナーなど、『吸水速乾』をうたっている商品に関しては、繊維が水を吸うというより、繊維断面が水をキャッチしやすい形状(テトラ構造や星型などの異形断面)をしていてかつ繊維が細い物を使用することで毛細管現象という性質を利用して水を生地全体に広げやすいというだけです。
速乾に関しては、繊維そのものが水を吸いにくいですから、空気に触れる表面積が大きく設計してある生地であれば他の繊維より圧倒的に早く乾きます。
強く振ったら水が飛んでいくイメージをしてもらえたらわかりやすいかと思います。

強くて扱いやすくコストが安い

化学の力で生成できるということは、資源が有る限り供給を続けることが出来ます。目に見えて供給が不安定な天然繊維に比べて、その原料価格は安価です。
そして熱加工で変幻自在。プリーツなどをかけやすいのも、高熱で変形させて冷ますことで形状安定するので、意匠性の高い加工にも向いています。
また同じ原理で形状を安定させることでイージーケア性に優れます。洗ったら型崩れするということもほとんどありません。

ここまでの説明で、今の所、ポリエステル最強説が浮上しました。
僕個人としてもポリエステル、好きです。生産面では物性的に安定しているからトラブルも少ないですし、普段の服装の中にもかなりの高確率で入っています。

万能であることが特徴というのがこの素材の強みと言った感じです。

しかしその独特な性質が故に、気をつけなければいけないこともあります。

昇華移染という事故

基本的には染色堅牢度は非常に優秀です。が、稀に昇華移染という事故が起こります。
ポリエステル自体は非常に緻密な分子構造のため、色をつけていく場合、高温高圧にして繊維の分子構造を弱め、繊維よりも小さな分散染料分子をを中に押し込んでいかなければいけません。

この染料の分子が小さすぎる物を選定してしまった場合、もしくは、繊維分子を不安定にするほどの高温多湿状態にしてしまう状況下になった場合、繊維から染料が気化して他繊維に移染する事故が起こります。

クリーニングや洗濯で移染する場合、生地の洗浄不足で染料残留という原因が特定しやすいのですが、染料分子の問題や、高温多湿での保管状況などは、いつどのような条件だったかなどを特定することが難しく、一般購入者からすると怒りのやり場のない状況になってしまいます。

ポリエステルは昇華移染してしまうという前提条件を課して、なるべく低温低湿で保管しておくなど、工夫が必要です。

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下段の紺色が隣のメッシュに色移りしているのが確認できると思いますが、これが昇華移染です。

基本的には起こらないように処理されていますが、事故が起こることもあるのです。残念ながら、事故を確実に避ける方法はないので、起きてしまった場合は販売店に相談しましょう。生地屋さん及び染工場はこれらに対して基本的に起こるものとしてノークレームで突っぱねてくるかもしれませんが、その辺は工業マーケティングで生地屋及び染工場に訴えていきたいと思っています。

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