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繊維製造工業マーケティングのすすめ。番外編

このテーマで書くのはおよそ4年ぶりになります。個々の小手先テクニックの枝葉は1~20で書いてますが、最近改めて良い案件が集まるところには集まるというのを実感しており、なんとなく上手くいってないんじゃないかなと感じる部分に関しては自社ブログでも少しだけジャブを打っております。挿絵が使い回しで申し訳ありません。これ以上性格の悪さを隠せる絵を描く自信がありませんでした。

などと、偉そうに語っておりますが、20年近くこの業界に身を置いて様々な会社様のお取り組みを拝見させていただいて、上手くいってるケースにある種の共通点があるように見受けられ、僕の拙い文章能力で言語化できるかどうかわかりませんが、共有させてもらえればと思い今回筆?をとった次第であります。

結論から言うと、視野と手段、見せるべき順序と段階的選択肢、この組み合わせに継続する覚悟(または忍耐とも言うべきか)で結果に繋がっている人たちが多いです。僕の体感ですが。

例えば上記リンク『誰得。』の中で書かれている、原料及びマシンスペック頼りの高品質素材では、積み上がったコストに対する市場の理解がまだない国内では、それである必要性そのものがない感覚は、おそらく皆様がご商売されていてなんとなく認めたくはないけど、実商売上は否定できないと思います。

一方で、ストーリー性があるかどうか一見わからないにせよ、同じ品質条件でも商売が成立している会社が存在しているのも事実です。
僕も前職時代は常々(〇〇社で売れてるあの素材は作ってんの俺らだし、大したことやってねぇのに、なんでウチでは買ってもらえなくて、奴らは買ってもらえるのか?)と、憤っていた時期もありました。

大きな違いとしては工業サイドは「これこれこう(製造上の希少性なり付加価値)だから素晴らしい素材です」と言う訴求に対して、「これは〇〇(アイテムなど)にすると普通の素材(対比がある)よりも肌あたりと袖通りが良い(ファーストタッチの言語化)んですよ。で、その着用時の心地よさが長続きしやすくて(原料上のメリット)、型崩れもしにくい(マシンスペックによるメリット)んです。」的な、着用者メリットの訴求に対する裏付けに製造上の工夫があるところです。

ただこれだけだと、まだ国内ではそこまで高単価商材は売れにくいです。もう一声、踏み込む余地があるとしたら、そこが製造者が市場に提供するに値すると信じている心意気とその熱量に比例するところかと思われます。
それでも国内市場だけでは、製造工業が設備投資して回収できる数量は期待値に届かない可能性が高いです。

ここまで『国内では』と書けばある程度想像できると思いますが、やはり海外で評価を得るのが先にあると、僕は考えます。

少し下品な言い方をすると「海外メゾンの採用実績がある」ことが、自ら発信するより、勝手に世間に周知されている状態になるのが先、と言う方が合っている気がします。
もちろん国内商売だけでも、そういった空気を外側からつくることで固定ファンを獲得されている会社様もたくさんいらっしゃいます。そしてその状況をつくることは、一両日中になんとかなるものでもありません。
誤解を恐れずに言うと、周りにそういう隠れた日々を積み重ねて評価されている人たちがいて、その表層を真似しただけで、いきなり業績がよくなると信じている人が多いです。

実際どういう積み重ねがあったか、殺されない範囲で書いてみたいと思います。死んだらその時は弔ってください。

視野

と言うことで、視野は国外マーケット進出です。
おそらくどなたも一度は考えておられるかと思われますし、なんならその手はもう打ってるぞと言う方も多数おられると思います。

少なくとも、国外進出して成果が全く出ないということは、最近では少ないのではないでしょうか。

ひと昔前だったら、プライスシートやサンプル手配に関する煩わしさを事前準備しておく発想もなく、国外に提案しに行ってみたものの、言語と商流の壁で「やったけどあかんかったわ」状態も散見されました。

今は事前準備に関しては各社ある程度なされており、不明点があれば周りに聞ける環境もある状態ですので、この段階で準備どうしたらいいの?ってレベルで国外に出ていくことはまずないと思いますが、もしノリと勢いだけで国外に原材料やマシンスペックに頼った高品質だけで勝負に出ようとしている方がいらっしゃったら、それは国内市場と全く同じ結果になるのでおすすめはできません。

相手が国外だろうが国内だろうが、素材は洋服の構成要素の一つであるという認識が必要で、日本製だから無条件で歓迎されるという思い込みは捨てた方が良いかと思われます。
どちらかというと、高品質が担保される高額素材が受け入れられやすい相手が、日本よりはいるくらいの感覚が良いかと思います。

手段

洋服の構成要素の一つでしかないのであれば、展示の方法も趣向を凝らす必要が出てきます。なので一球入魂が如く、これでどうだ!って素材を一色だけペロンとハンガーにしても、目に入ることが難しいのは、国内展示会でも痛感されていることと思われます。

最近は各社一素材に対して想定される使用アイテムやそれに付随したトレンドカラー提案などが標準的になっています。そこまでしないと選べない人が増えたというのもあるかもしれませんが、そこまでしてないと考える領域が増えてしまうので手間がかかるからある程度はその辺もカバーして欲しいと思うのは、相手がアパレルブランドに限らず工業だって選ぶ材料にある程度予測される未来が見えなければ採用しにくくなっている現実と同じかと思います。

とは言え、製造工業主体で感性の領域に自信がない場合はなおさら肩肘張って余計な色つけしない方が怪我は少ないかもしれません。逆にもう、一色全統一してブース内に異様な空気を漂わせるか。
各社色々と目に留まる工夫はされていると思いますので、逆張り的な展示もありかもしれません。

なんせ目に留まる方法を熟考して望んでもらいたいところです。

目に留まる方法が功を奏し、お客様が足をとめて素材を触ってくれたら勝てる自信があれば、サンプルピックの可能性も高まります。
いざサンプルを欲しいと言われたら、ピックアップシートを記入してもらって後日・・・なんてやってたらもう遅いです。
スワッチはその場で手渡せる状態で用意しておくのが良いです。
海外に荷物を再度送り込むのは時間とお金がかかりますし、何より鉄は熱い内に打ての如し、相手の「これだ!」っていう熱量をその場で掴むスピード感を実現するためには、プライスとミニマムなどFOBベースでも情報を記載したスワッチをその場で渡す方が、後日着分発注につながる可能性は高いです。

とは言え、やはり相手も商売なので、ファンタスティック!バットトゥーエクスペンシブ!的なことも当然あり得ます。

さっきまで盛り上がったじゃん・・・と思うかもしれませんが、ここでも素材はあくまで構成要素の一つという意識を忘れない方が次のステップにスムーズに入れます。

見せるべき順序と段階的選択肢

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