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斜行ってなんで起こるの?

丸編み生地を作っていく上で後に起こる問題として避けては通れない『斜行』。
「え、待って、避けては通れないの?」って言う方、厳密に言えば避けては通れません。避けては通れない理由としては「そもそもカットソーの丸編みってなんだ?」の回で触れてますので参考にしてみてください。ただ、これを改善する為に色々なテクニックはあります。その代表的なものに「SZにするか?双糸にするか?」という、糸の撚りに関わる説明をされると思うのですが、「正直わかんねー」という人も多のではないでしょうか。

なぜ糸の撚りで斜行を改善できると主張されるのか?僕らの世界では『当たり前』とされている糸の撚りのことを少し掘り下げて考えていきます。

S撚り?Z撚り?

単糸という言葉の意味を知っていますか?30/1とか40/1とかの表記で示されているモノです。ワタから糸に紡ぎ上がっただけの時、全ての糸は初めは単糸です。例外としてサイロスパン(精紡交撚)は表記上30/2のように双糸表記ですが、構造は単糸です。見た目も単糸です。サイロスパンに関してはまた後で書きます。

単糸は糸を撚り上げてくる際に片一方へぐるぐると回しながらワタを紡ぐので、出来上がった時には一方方向へ偏った撚り方向があります。そして基本的には左撚りで撚り上げられます。これがZ撚りです。

そしてこの糸の撚りにかかっているエネルギーが逃げようとして生地が歪むのが斜行です。

この斜めになっている柄が編地の横目で、黄色く矢印を下向きに引いているラインが編地の縦目なので、単糸のボーダーは必然的に斜めになります。生地で仕上げる時になるべく横目を重視して縦目を斜めにさせますが、生地をカットして開く(丸編みは筒状に編まれるので開く作業が必要)時や、仕上げの時には基本的に縦方向へ引っ張られながら工程を通りますので、服にして洗った後に縦に縮んで脇線が斜めにズレてくるという事故が起こるのです。

これを改善するために左撚り(Z)とは反対に撚られた右撚り(S)と交互に編むことで逃げようとするエネルギーを相殺するという方法があります。
右撚りは先ほどの左撚りと逆に撚っているからそのままなのですが、なんでS撚りというかと言うと、下図を参照ください。

こう言うことです。見た目の話です。Sに言葉上の意味は含まれてません(Zも同様)。

確かにSZにしたら、斜行は軽減します。ただし、撚り係数が同等の場合に限ります。撚り係数とは簡単に言うと、糸を撚った時のチカラが同じくらいか?ということです。例えばSとZが同番手の時、同じ距離(1m間)の間で撚られた回数(T/m=Twist per meter)が同じなら、撚り係数は同じということになります。マニアックですね。でもこの数値が合わせられないと残念ながらエネルギーの相殺ができないため、斜行は起こります。

そしてSZにした際、目面が完全に変わってしまうという点も理解が必要です。「SZにしたら斜行止まるならそれにしてください!」なんて安易に飛びつくと、生地が上がってきた時に「なんじゃこりゃ!」ってなります。
どんなことが起こるかというと、生地目がジグザグになります。

斜めになる程度は軽減されていますが、見た目が全然違いますね。これを許容するかどうか、斜行を諦めるかどうか。そもそも単糸を辞めるか。するとどういう方法で斜行を避けられるのか。それが双糸です。

双糸って

単糸が片撚りでエネルギーが一方方向に働くから斜行するというのはご理解いただけたと思います。で、もっともオーソドックスに斜行を避ける方法がこの双糸という方法です。
双糸とは、基本的に、単糸を二本撚り合せた物のことを言います。撚り合わせる時に、単糸の撚り係数が相殺されるように反対によってある物が双糸です。つまり、上撚りは右(S)撚りになっています。言葉ではややこしいので、ちょっと極端に図解します。

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