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おとぎ鬼草子~学園篇~2

☆鬼が来る


楓「あーあ。がんばりすぎたあ! 遅くなっちゃった」
(楓、空を見上げ)
楓「わあ。おっきくて赤いお月さまだ」
(楓、あたりをキョロキョロしてからラクロスのラケットをマイクがわりに)
(戸川純の「玉姫様」の一節を熱唱)
楓「赤い月のよるっ! ざしきろーうのおーくでっ! たまひめさーまの! ほっさはつーづーくー」

男の声「ふふふ。物騒な歌だな」
楓「やだっ! 聴かれてた!」
男の声「恐怖に満ちた声もききたいものだな」

楓「誰? どこにいるの!」

(楓、思わずラクロスを構えて身構える)

男の声「そんなものでどうしよういうのだ?」

(楓のまわりがさらに暗くなっていく。スモーク。淡く青い光が充満していく)

茨木童子「赤い月は我らが現れるのをことほぐもの。さあ、お前も酒呑童子様の糧(かて)となるのだ」


(鬼たちがわらわら現れ、奥から酒呑童子登場)

酒呑童子「ほう。元気がよさそうだ。そのエネルギーを我に捧げるがよい」

楓「あなたたち、だれ? なんでそんな恰好してるの? なにするの?」

茨木童子「さあ、あらがわなければ痛い思いはしない。こちらへ来るのだ」

楓「やだよ! なんか、とても胸がザワザワして、ピリピリして! とても嫌な感じ!!」

酒呑童子「こわがることはないぞ。さあ、くるがよい」

楓「うわ! 身体が勝手に!」
(楓、酒呑童子たちのほうに引き寄せられる)

茨木童子「さあ!」

楓「嫌だっていってるのにぃ!!」

(閃光)

茨木童子「なんだ? この光は!」

酒呑童子「茨木、なんだ、どうした? なんだか、頭がぼうっとして」

(酒呑童子、崩れおちる)

茨木童子「くそっ! 酒呑童子様が『もどって』しまう!」

(茨木童子、酒呑童子を抱きかかえる)

(女の声が響き渡る)

声「楓! ラケットを構えて! 目覚めるのよ!」

楓「え? (ラケットを構える)めざめ……る?」

(さらに閃光)

(光がひくと、楓、手に剣を構えている)

楓「なにこれ!」

鬼1「なんだあれは!」

鬼2「大きなものが!」

(巨大などくろの影がうつる)

鬼3「ガシャドクロだああ!」

鬼4「滝夜叉姫か!」

(夜子、ガシャドクロを従えて現れる)

夜子「楓、目覚めるのよ。さあ! その剣を使って!」

楓「そんな……そんな!」

夜子「やらなければもっと多くの犠牲がでるのよ! あなたならできるわ!」

楓「そんな……」

酒呑童子「滝夜叉、だと?」
(酒呑童子、大きく崩れひざをつく)

茨木童子「ちっ! 鬼たち! そいつを殺してしまえ!」

鬼1「し、しかし」

茨木童子「どうした! 俺に食い殺されたいか!」

(鬼たち、構える)

酒呑童子「いばらぎ……我は、我はいったい……」

茨木童子「酒呑童子様!」

(鬼たち、楓に襲いかかる)
(とっさに楓、剣を振る)
(楓と妖怪たちがやりあっているあいだ、茨木童子、酒呑童子を連れてその場を去っていく)

(楓、妖怪たちと戦う)

(劣勢になる楓)

(夜子、片手を振り上げる)

(大きな雷の音と閃光)

暗転
(静寂)
明転

(ラクロスラケットをもって、崩れ落ちている楓)
(かたわらに立つ夜子)

夜子「楓、だいじょうぶ? ケガはない?」

楓「ケガはないけど……。あんまり大丈夫じゃありません」

夜子「あなたはよくやったわ。酒呑童子は逃げたけど」

楓「滝川せんぱい……これ、なんなんですか? どういうこと?」

夜子「楓、あなたまだ完璧には目覚めていないのね」

(夜子、声もなく泣き出す)

(楓、あわてて)

楓「ちょ、ちょっと! せんぱい! どうしたんですか?」

夜子「ごめんなさい。そうね。仕方ないわ。いきなりすべて思い出せと言っても。楓、あなたにはね、酒呑童子と戦う力があるの」

楓「しゅてん???」

夜子「少女たちを狙っては、そのエネルギーを吸い取りわがものとして力にする、あの鬼よ」

楓「おに?」

夜子「あの鬼を倒さなければ、犠牲者はもっと増える。楓、私だけではだめ。いっしょに戦ってほしいの」

楓「……あ……はい。って、えええええ!!!」


暗転


☆彡つづく!



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