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戯曲「おとぎ鬼草子」~学園篇~

☆彡原案 近畿怪談倶楽部


◎おとぎ鬼草子~学園篇~

☆プロローグ

薄暗く明転していく。
木枯らしの吹き抜ける音。(季節は変更可能)

少女「やだあ。遅くなっちゃった。」
(身震いし)

少女「やだなあ。赤い月。誰もいないや。早く帰ればよかったなー。あーでも!楽しかった!」

男の声「楽しそうだね? デートでもしてきたのかい?」

少女、振り返り

暗転

少女「きゃああああ!!!」


明転すると舞台上に夜子

背後に巨大などくろの影

夜子「『赤い月の夜、女の子を襲う鬼が出る。』
   不気味なうわさはまたたくまに学校内をかけめぐった。
   少女たちは、ひたすら鬼を恐れた。
   鬼のことなんかなんにもしらないのに」

暗転

☆楽園の学園

ラジオ体操第一の音楽
明転

稲森学園中等部 

朝 

教室でラジオ体操をしている生徒の能登と下北。

能登「で、なんでラジオ体操なの?」

下北「ダイエットにいちばん効くんだって」

能登「なにそれどこ情報?」

下北「しらないの?」

能登「ばかね。しってるわよ!」

ラジオ体操第四の音楽

能登「なにこれ!第四って何よ!」

下北「あらあ知らないの?」

能登「知ってるわよ!」

能登、下北、アクロバットをはじめる。

拍手がなくても拍手を求めず、さわやかな笑顔でフィニッシュ。


楓「(食パンをくわえながら)おあよー!」

能登・下北「おお! これが伝説の出会いパン!」

楓「あー知ってるんだ? 恋のおまじないだよね!」

能登「若い人にもわかるように説明すると、
パンをくわえてちこくちこくぅ~って走りながら家を出ると
運命のひとに出会えるっていう昭和のジンクスね」

下北「で、その様子だと出会えなかったのね」

楓「いやー。角からとなりの中学の男子が飛び出してきたんだけど、
とっさのことでついラケットで」
(ラクロスのラケットをぶんまわす)

能登下北「ジンクス、すげえ!」

三浦「(フランスパンをくわえながら)おあよー」

能登下北「なんかまちがってっし!」

三浦「ぷはー。いやージンクスなんて当てにならないねえ」

能登「あてにならないのはアンタの食欲よ」

下北「ところで楓。恋のおまじないなんてどうしたの?」

楓「えへへっ♪らしくないでしょ? なんかさあ試合のゲン担ぎしたくてさあ」

能登「なーんだやっぱりラクロスじゃん?」

下北、上手の美少女に手招きされ近寄る。

下北「かっ! 楓! 先輩! 高等部の滝川せんぱいがよんでるよー!」

一同「たきがわせんぱーい???!!!!」

派手な音楽

三浦「ここでいまさらながら説明しよう。
ここ、稲森学園は中高一貫教育の女子校。
さらに稲森学園中等部略して稲中のラクロス部のエースといえば!」

楓、中央でポーズをとる。

三浦「中等部2年A組! 天草楓!」

三浦「そして高等部ラクロス部部長にして学園のマドンナ! 高等部2年B組、滝川夜子!」

夜子、中央にしずしずと歩き出て、ポーズをとりそうになるが

夜子「その手にのってたまるもんですか、先日80キロになった三浦さん」

楓「あの、夜子先輩、何かご用で???」

夜子「あなた、さっきものすごい勢いで走っていくんですもの。呼び止められなかったから」

楓に近寄り、タイを結びなおす夜子。

夜子「あなた、タイが曲がっているわ。身だしなみくらいちゃんとなさい。それじゃ」

去っていく夜子。

三浦「すげえ。『マリア様がみてる』。みたいだ・・・・・」

能登「せんぱい、それだけのために来たのー?」

ふりかえる夜子。

夜子「あ、そうそう。あのうわさのせいで中等部の部活に来なくなる子たちがいるから。
あなた、よろしくね」

楓「うわさ?」

夜子「知ってるでしょう? 赤い月の。まったく、試合も近いのにね」

今度こそ去っていく夜子。

下北「赤い月のうわさ・・・・」

能登「あれか」

楓「なになにー?」

能登「やだ楓ったら! ほら、赤い月の夜に鬼がでるっていう」

楓「鬼なんかいるわけないじゃん」

下北「いやきっと変質者なんだけどさ、よほどひどい目にあったらしくて、鬼に遭った子はみんな」

能登「なんにもしゃべんなくなるんだって」

三浦「あたし、こ、わーい!」


チャイムの音

暗転

☆楽園の魔物


校長室
校長の酒井がウロウロ歩き回っている。

数学教師の茨木、入ってくる。

茨木「校長先生。なにをウロウロしてるんですか?」

酒井「いや、だって茨木くん、心配じゃないのかい?」
 
茨木、首を傾げて

茨木「なにが?」

酒井「なにが? って。もうすぐ最終下校時刻だろ? また生徒たちが怖い目にあったらと思うと私は……」


茨木「はははっ!」

酒井「茨木君、なにがおかしいんだ!」

茨木「だって、校長、またお忘れなんだから」

酒井「なにをだ!」

茨木、指をパチンと鳴らす。凍り付く酒井。

茨木「ときどきこうなっちゃうんだよなあ、ねえ?」

酒井「……『いばらき』……。そろそろ時間か……」

茨木「ふふふ……」

酒井「(別人のように)身体が震える」

茨木「(からかうように)なにかおそろしいものでもあるのですか?」

酒井「ふふふ、狩ることの楽しみで身体が震えるのだ」

茨木「さあ、いきましょうか」


暗転


☆つづく→








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