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小説 雨は降り続く #2

4月YY日
今週もまた、憂鬱な一週間が始まった。

朝、いつもの時間にダイニングに行く。まだディーノは起きてこないらしい。お袋に、"お兄ちゃん起こしてきて"と言われたので、ディーノの部屋に行き叩き起こす。
ディーノの寝起きは気をつけないと、いきなり暴れだすからタチが悪い。

だいたい、一つ上の兄貴との折り合いが良くないのは、親父が調子に乗って付けたこの名前が原因だと思う。ディーノとミウラ、仲が良いわけが無い。
更にその後に生まれた、歳の離れた妹にどんな名前を付けるのか不安だったが、生まれた妹はカレラでもストラトスでもパンテーラでもなく、エランだっだ。可愛いエランはうちのアイドル。

朝食を摂りながらニュースを観ていると、相変わらず食糧危機の話をしていた。きっと今年は米は作れないとか、野菜なんかも壊滅的だとか、いい話は聞くことがない。とりあえず食べられればいいけど、やっぱり昔の方が食べるものがいっぱいあったな。

着替えを済ませて学校に向かう。降雨予報では今日の雨は弱いらしいから、歩いて行くことにしよう。親父の会社も道路工事ができずに苦しいらしいから、使わなくていいお金は節約しないと。

途中でイオに会う。学校に行くというのに、相変わらずの派手な蛍光イエローのレインコートだ。とは言っても、学校ではレインコートの色まで規定はしていない。なのでみんな思い思いのレインコートでオシャレをしてくるようになった。まあ、これぐらい大目に見て欲しいとは思うけど。
入り口でコートを脱ぎ、各々の袋に入れる。長靴をロッカーに入れ、靴に履き替える。最近はロッカーの大半をコートと長靴が占めるので、物が置けなくて困ったりする。

授業のことはよく覚えていない。唯一張り切ってやっていた体育も、最近はマンネリで面白くない。できる事が限られているので仕方ないけど。

放課後、イオと一緒に部室に行く。僕は屋内競技なので、体育館の取り合いになるけど同じ競技が続けられるからいいけど、陸上部や野球、ソフト部の子達は可哀想だよ。さすがにグラウンドが使えないのに部活を続けることはできないので、今年から一時廃部になることになった。今さら長年続けてきた競技を変えられないよな。イオは野球部だったけど、そんなわけで僕と同じバスケ部に入った。僕が誘ったんだ。

練習が終わり、家に帰る頃に雨が強くなったので、バスを使うことにした。今日は川が溢れるほどではないから、いつものルートで帰れた。

バスの中で誰かが、このバスのルートが変わるらしいって話をしていた。うちまでのルートは二つしかない。このルートが無くなったら、もう一つしか残らないけど、僕らにはどうしょうもないから、これ以上道が崩れないように祈るしかないかな。

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