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負けたことがニュース

 注目された将棋の叡王戦最終局、藤井聡太八冠は伊藤匠七段に敗れた。22連勝していたタイトル戦番勝負での初敗退で、八冠を継続することができなかった。

 藤井ファンとしては残念ではある。しかし逆に言えば、これまでは勝つことが当たり前だっただけに、「ついに負けた」が大ニュースになるのだから、やはりすごい。「犬が人を噛んでもニュースではないが、人が犬を噛んだらニュースだ」に近いものがある。

 藤井さんは終局後のインタビューで八冠を維持できなかったことについて「それは時間の問題だと思っていた」「(八冠挑戦について)今の時点ではまったく考えていない」と話したという。インタビューの映像は見ていないが、きっといつもどおり淡々としていたのではないか。

 かつてのインタビューで藤井さんが「タイトル数などをモチベーションにしていると、続かない」と話していたことを思い出す。つまり藤井さんにとっては「将棋の実力をつけること」だけがモチベーションであり、結果はそれについてくるだけ、なのだろう。それだけ将棋が好きなのだろうな。

 小学生の頃のエピソードから「藤井を泣かせた男」といわれてきたのが、新叡王になった伊藤さんだ。これからは「初めて藤井を破った男」として、何十年も二人で名勝負を繰り広げていくのだろう。

きのうはそのスタートとして記憶される日になった。
(24/6/21)

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