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ご報告。

私ごとではありますが、昨年末に婚姻届を提出し、結婚いたしました。

結婚相手は俳優の千葉総一郎(泰祐)さんです。
改姓に伴って稲松総一郎(泰祐)さんとして活動していくことになりました。
わたしは変わらず稲松遥として活動してまいります。

この結婚で総一郎さんが婿入り(現在家制度は廃止されているので、婿入りはできないのですが)するということではなく、婚姻届で新たにふたりで作った戸籍に使用する姓に「稲松」を選択したということです。

総一郎さんは出会う前からインディアン(カナダの先住民族)のクリー族の方々と交流があり、リーダーのケネッチという男性と兄弟の契りを交わしていてクリー族のセレモニーでもらう名前をいただいている人でもあるのですが、
昨年5月にカナダのサスカチュワン州の居留地でウーマンズセレモニーというセレモニーに一緒に参加し、ケネッチの妻であり女性側のリーダーであるノラから「クリー族の結婚は二人の間のつながりを大いなるものに捧げること。そしてふたりで通る道の名前を決めること」と教わり、クリー族の伝統的な方法で結婚をしよう、とふたりで決めました。

わたしは「結婚」というものに対して
「今までシングルスで戦ってきたけれどもダブルスを組むのもいいのかもしれない。
精神的な結婚はクリー族のセレモニーで誓えるのだし、
心持ちはテニスや卓球のようなチーム稲松・千葉ペア(順不同)だから法的には事実婚で別姓を保持してもいいかもなぁ。」と思っていたのですが、

総一郎さんの結婚にあたっての希望が『稲松になること』だったので婚姻届を出してこのたび法律婚をすることになりました。
(余談ですが、総一郎さんの「稲松になりたい理由」は直感だそうです。千葉の名字や家から変わりたいということではなくそれが自然な流れだと感じたそう。稲松家も千葉家も変わらず大切な家族です。)

恋愛ということ以上に、
「表現すること」について、
「生きるということ」について、
「人と繋がろうとすることでどんなに豊かな経験ができるのか、逆にどこまでも人を傷つける可能性があることにいかに自分たちが関わっているのか」ということについてここまで人生で話し合った人はいません。

本人からのツイートにもありますが、総一郎さんはノンバイナリー(総一郎さんの場合は男性性と女性性が流動的にうつろう、男性性が強いときも女性性が強いときも中性的なときもある)を自認している方です。

ノンバイナリーという名前を知るまでも、知ってからもなんども自分たちのジェンダーやセクシュアリティ、
日常の中で当然のように語られる「男らしさ」や「女らしさ」、
それらについて感じている違和感や気づき、
ふたりで生きることの呼称が「婚姻関係を結んだ夫婦」でいいのか話し合ってきました。

自分の中に見つけた答えは
「男性のときも、女性のときも砂時計が移っていくその間の流れる砂一粒一粒のように厳密に言葉にできないときも、変わらずにこの人が好きだ」という気持ちでした。

話をしていて楽しい親友であり、
女性性に対してはシスターフッドを感じる相手でもあり、
議論が尽きない頼れる仕事仲間でもあり、
木や自然を大切にして小さな子どもや年配の方の答えをいつまでも待てる忍耐と愛のある姿は師だと思っています。

「結婚しました。」と言っておいてなんですが「結婚がなんなのか」いまだにさっぱりわかりません。
本当に「永遠の愛を誓うこと」ならば離婚届は役所にないはずだし、「愛し合っていること」が条件ならば該当しているのに婚姻が認められないパターンがあまりに多いからです。

自分が社会的な現行の結婚に対して決してめっちゃいいイメージを持っているわけではないのに、日本の法的にも結婚しようと思ったのは、
どこまでも不器用に優しく、とても長い時間をかけて本当の自分の言葉を探すこの人に少しでも「なりたい名前で、自分のままで、この世界に受け入れられている」という実感を持って生きてほしい。
そこに自分が存在したい。
そのためなら自分の理解の行き届かないシステムに飛び込んでみることが
きっと面白い人生経験になると思ったからです。

こうして考えだすとどこまでも厳密に納得するまで考えたい上に、
アレルギーを含めていろんな外的刺激に弱くしょっちゅうダウンする稲松遥と、
おおらかといえば聞こえはいいけど夢中になると他がお留守で、
うっかり多発な稲松泰祐が今日まで生きてこられたのは、
ひとえに寛大さと深い愛情を持って一緒に生きてくれた方々のおかげです。

本当にありがとうございます。

ふたりでめいいっぱい生きて、大いなるものに捧げる二人の繋がりと歩んでいく道の名前についてずっと真剣に考え続けたいと思います。

今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

稲松遥

写真:金子清美さん

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