「狗」Ch.5 by Priest (翻訳)

・晋江文学城で無料公開されているPriest先生の非公式翻訳です。
・誤訳、意訳あります。
・刺激の強い内容が含まれていますので、苦手な方は自衛ください。また、一部省略しています。


第5章

 一時間後、黎永皓たち一行は陳萍の家に到着した。
 黎永皓は捜索令状をドアに叩きつけ、一歩下がって顎をクイと上げて合図した。
 「三回ノックしても返事がなかったら蹴って開けろ」

 陸翊は建物のテラスに寝そべって外を眺めていた。高層ビルとはいえこのエリアはよく緑化されており、広い敷地に三、四棟の建物があるだけだ。陳萍の家があるこのフロアからは北エリアの景観がよく見え、南には大きな国立公園が広がっている。
 ロクでもない奴とのシェアハウスを余儀なくされた陸翊の亡霊のような顔つきは、ようやく少しの人間らしさを帯び、小声で尋ねた。
 「この家、いくらするんだろう?」

 黎永皓は腕を組み、部下がドアを蹴破って進入するのを見ていた。
 「俺たちの月給を合わせて、メシを食わずにいても、家賃だけでやっとだろうな――お前、買いたいのか?だったら、明日から二人で立ちんぼしねえと」
 陸翊は弱々しい目で彼を見た。
 「まあ、お前のその辛気臭さだと、むしろお祓いに呼ばれるのが関の山だな」

 高級住宅の気密性は高く評価すべきだろう。ドアが開いた瞬間、数人の警察官が同時に鼻を覆った。
 部屋は何だか生臭いような、何とも言えない異臭に包まれている。この生臭さは他の何とも言えない臭いに混じり、格別に嫌な感じだ。

 陸翊は顔をしかめると、突然、目尻をピクリと動かした。

 しばらくして、キッチンで蓋の開いた圧力鍋を警察官が発見した。

 (凄惨なので省略します)

 その時、圧力鍋を抱えた警官は、トイレにいる別の同僚の声を聞いた。
 「黎隊長、ちょっと来てください。ここに包丁と鉈があります。部屋中血まみれで......ああ!子供の服があります!」
 鍋を抱えた警官は事態を理解した。圧力鍋の取っ手を持つ手が激しく震え出し、瞳孔が開き、圧力鍋を激しくコンロの上に投げ返した。鍋の中の液体が手袋に飛び散ると、青ざめながらそれを見つめ、そして吐いた。

 騒ぎを聞いた黎永皓は、何が起こったのかわからなかったが、本能的に鳥肌が立ち始めた。
「小宗、どうした?状況はどうなってる?」

 陸翊は靴カバーをつけて浴室に足を踏み入れた。浴室には床一面に血痕が残っている。
 二本のナイフが無造作に床に放置されてある。
 一方でその横の洗濯機の上には子ども服一式がきれいに畳まれていた。
 現場の混乱と床一面の血水の中でその子ども服は、まるで全く別の絵画のように、少し異様な有り様だった。

 手袋をしたまま陸翊はきちんと畳まれた服をめくり、小さな紺のトップスを指差して、黎永皓に尋ねた。
 「僕の記憶が正しければ、両親や目撃者の証言していた男の子の服装と一致する」
    黎永皓は、もう彼の言うことは何も聞きたくないと思った。

 陸翊はため息をついた。
 「まずこの場所を封鎖するようした方がいいと思う。それから、捜索するのは子どもじゃなくて陳萍の方だ」

 黎永皓は後ろ髪を引かれながら、信じられない思いで厨房の方を向いた。
 陸翊が続ける。
 「以前、カニバリストの逮捕に立ち会ったことがあるけど、あの匂いは一生忘れられなかったな」
 
 黎永皓はイライラしながら手を振った。
 「陳萍はどこにいるんだ?」
 陸翊は彼に向かって言った。
 「鍋はもう冷えているか?」
 黎永皓は手で口元を覆い、しばらく胃液が逆流しそうになった。なんとかこらえた後、陰鬱な表情でキッチンに入った。胃袋の中身をすべて吐き出した部下に顔を顰めて「ばか!掃除しろ!」と言い放った。
 圧力鍋に残っていた液体はまだ多少温かい。人がいなくなってからそれほど時間が経っていないようだ。

第6章


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