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いずれあやめかかきつばた(この際違いをはっきりさせよう)

■長年の疑問

ずっと疑問だけどそのままにしていたり、ネットで調べてその場では分かった気になるけどいつまでも「どうだったかな?」と残っている疑問ってありますよね。

私のそんな疑問のひとつは「あやめ、かきつばた、しょうぶはどう違うの?」でした。

あえて平仮名で書きました。杜若、菖蒲は漢字でも見かけますがあやめは?? 変換すると「菖蒲」も出てきます。菖蒲とあやめは本当はおんなじなの?? 菖蒲園、は聞くけどあやめ園、かきつばた園は聞かないですよね。

この際、みなさんも一緒にこの疑問に決着をつけましょう!

■始まりはお茶のお稽古場

そもそもこの疑問はお茶のお稽古場の話が元でした。5月の季節を表すお道具に、かきつばた、しょうぶはよく登場します。

しょうぶは五月の節句と結びつき、兜の意匠と一緒に「尚武」とかけて男の子の健やかな成長を祈ったり。軒にしょうぶの葉を投げ上げて疫病を封じたり。そして古典文学のスーパーヒーロー、在原業平が東に下る際に途中の愛知県は八橋というところでかきつばたを見て、京都に置いてきた妻を思って和歌を読んだ、その頭の文字が「かきつばた」になっているというのはたしか高校の古文で習ったはず。

その日のお稽古ではその「八橋」という銘の棗(なつめ。お茶を入れる漆塗りの小さなふたものです)を使っていました。水辺に八つの板を渡した橋がかかっています。その水辺にかきつばたの花。水は、曲水という日本画に独特の渦巻模様で表されています。橋は銀の、花は金色の蒔絵でした。

そこでぼそっと「かきつばたとしょうぶの違いが分からないんだよね……」と呟いたところ、その場の全員(と言っても3名と小ぢんまりしていますが)が「実は私も」「調べたけど忘れちゃった」と小さい声で同意してくれたのでした。

■花しょうぶとしょうぶは違う!

しょうぶ湯、軒に投げ上げるしょうぶは緑色のすっと細長い葉っぱの束。よもぎと一緒にまとめてあったりしますよね。香が強く、疫病を避ける。そもそも旧暦の5月は現在の梅雨の時期なので、病気が蔓延しやすい。こんなふうに使う「しょうぶ」は「菖蒲園」で咲き乱れている「花しょうぶ」とは違うんです!

今の時代ですから、ちょっとネットで調べれば、それぞれの違いはすぐわかります。ただし、このしょうぶ/花しょうぶの前提が分かっていなかったので、私は混乱しました。

しょうぶは、サトイモ科。花しょうぶはアヤメ科。別の分類なのです。サトイモ科のしょうぶの花は、がまの穂のような姿だそうですから、見分けたい花の分類としては花しょうぶ、あやめ、かきつばたの3種類ですね。

■生えている場所の違い

菖蒲園には水が張ってありますよね。かきつばたが生えているのは、先ほどの在原業平の八橋の和歌のエピソードでも分かるように湿原です。湿原だから橋が渡してあるわけです。このなかではあやめだけが乾いた場所に生えています。

ゴッホの「アイリス」を思い出して下さい。根元は茶色の土です。あやめはこんな風に土から生えています(ゴッホのアイリスはジャーマンアイリスかもしれません)。

国宝の尾形光琳の「燕子花図屏風」(かきつばたにはこの漢字もありますね)には、はっきり水は描かれていません。金箔を貼った背景から花と葉のシルエットが切り取られています。しかしすっぱりと切れた根元の表現は水面から伸びる葉を表しているように見て取れます。

花しょうぶは、水の張った場所に生えている印象が強いですが、調べてみると湿地と書かれたり、水辺と書かれたり、乾燥地と湿地、と書かれたりしています。

植物園の看板には、このように表記されていました。友人の発案した覚え方は、土の上から順に「あしか」。これでかなり違いが整理されたのではないでしょうか。

・あやめ=乾いたところ 

・花ょうぶ=水辺 

・かきつばた=湿地

■花の柄の入り方の違い

そして、もう一つ必ず書かれているのは、花びらの付け根の柄の違いです。昨日、三者の違いを撮影するべく、近所を自転車で走り回りましたが、あいにくジャーマンアイリスしか撮れず(くっきりしたあやめ模様は分かりやすいと思います)。

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図解しますので、今後はみなさん来年の5月にご自分の目で確かめてみて下さいね。

いずれあやめか

■最後になりましたが自己紹介

お茶のお稽古を続けて10年。お稽古は仕事の合間の大切なリフレッシュの時間でした。仕事はファッション系のテキスタイルの仕事を30年続けていましたがコロナによるリストラでこの3月末に退社することになりました。

さて。第二の人生をどう過ごそうか? 模索の日々です。思い切って、お茶や着物の世界に居場所を作れたらいいなと手探りを始めました。

お茶の世界で10年の経験は、まだ入り口に差し掛かったばかりのところです。しかしコロナ禍の不幸中のごく小さな幸いですが、裏千家の会員向け「オンライン茶道学」という配信が始まりました。私のようなぺーぺーには直接講義を受ける機会の無いような先生方の講義に参加出来るのです。

そのお花の講義、茶室でのお花の役割や道具の組み合わせ方の説明の最後に先生がこうおっしゃいました。

「花は、素晴らしいです。芽が出て、葉っぱがついて、蕾がついて、やがて花が咲きます。毎日水をやり、愛でて、花と向き合う自分も必要では無いでしょうか。みなさんもぜひ、花を育ててみて下さい。」

当たり前のことだと思いますか?

私は仕事を失って途方にくれていた時に、この言葉にはっとしました。

過去を振り返って後悔したり、先のことを考えて不安になったり。足がすくんで、立ちずさんでいたような時期でした。

しょうがない、過去が失敗だったとしても、少しずつ、前に進もう。ほんのちょっとずつ、葉が一枚一枚ゆっくり開いていくように、時間を前に進めていこう。と考えることが出来ました。

日々、悩みながら気づいたこと、好きなことについて、を綴っていこうと思います。


ウツノミヤハルコ
この世界の片隅で、テキスタイルへの愛を語ります。布好き、着物好き、お茶に興味のある方と繋がりたい。趣味は茶道(裏千家)とサッカー鑑賞。どちらかというと民藝好き。柔らか物の着物より紬が好きだが、お茶の世界との矛盾が悩ましい。コロナリストラで求職中。お茶や着物の世界をお仕事にしたい!

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