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コロナ案件にメディカル・イラストレーターとして関わって思うこと

私はメディカル・イラストレーションというニッチな分野が専門です。メディカル・イラストレーターとはサイエンスとイラストの両方のバックグラウンドを持ち、医療や科学の情報に特化したイラストレーターを指します。

科学とイラストのどちらも良いとこどりをした、と言えば聞こえは良いですが、日本ではまだまだ確立した分野ではありません。

COVID-19の急増に伴い、コロナ関連の大型案件に関わることになりました。この仕事を通してメディカル・イラストレーターがその真価を発揮する場面や個人的なやりがいについて、改めて考え直す経験をしたので、自分の仕事について思ったことを残してみようと思いました。

人材も情報も物資も枯渇する中で発揮できる能力

関わった案件はジョージア州アトランタのエモリー大学がクライアントです。世界中で爆発的に感染人口が増えているCOVID19、所謂コロナの医療現場ではマスクや手袋などの防具(PPE)が世界的に足りていません。

医療防具は本来使いまわすように作られていません。ですが防具が足りない中ではどうにかして現場を回すしかありません。「医療防具の安全な使いまわし方」についてのリソースは少なく、地方や発展途上国での情報格差はより劣悪です。

私たちの至上命題は、急激に感染者が増え、物資・人材・情報が世界的に足りないCOVID19大流行の状況下で、安全に防具を使い回して医療現場を回す方法を考え、情報伝達することです。成果物は医療現場にいる人にも簡単にプリントできるレターサイズのpdf資料です。以下のリンクからご覧になれます。

この案件でメディカルイラストレーターが起用されたのは情報がほぼない「医療防具の安全な使いまわし方」について、無菌状態を保つ状況を最小の指示で論理的に考えられるからです。パンフレットは公開前に医療従事者によって査読されますが、彼らは治療で忙しく、イラストレーターに指示を出すことにあまり時間をとれません。最小限のマネジメントで情報の質が高いものを作れることを買われています。

情報デザインの本質

クリエイターは見た目のクオリティのプロフェッショナルです。サイエンスとイラストの両方を扱うメディカル・イラストレーターは、科学的に筋の通ったわかりやすいストーリー作りとイラストを担当します。

限界集落の地方の病院で手袋が足りておらず、溢れる感染者や死者にどう対応すれば良いか困っている医療従事者たちがいる。こういう状況を考えたとき、今できる最も「意味のあること」は何か?紛らわしくないこと、正しいこと、最速で公開までこぎつけること。情報デザインと見た目の美しさは別物なことを実感し、自分の役割について再確認させられた気持ちになりました。

メディカル・イラストレーターのやりがい

コロナの状況下、何か自分にできることはないかずっと考えていました。こんなにインパクトを与える形で関われたことにびっくりだと同時に、微力ながら力になれたことをとても嬉しく思います。経済悪化でフリーランサーにとって厳しい状況にある中で、能力を買ってもらい、仕事があることはありがたい限りです。自分なりに人や社会にインパクトを与えられる方法があることを再確認し、大きな自信になりました。また情報をデザインする、という形で関われることは私にとってとてもやりがいがあることだと実感しました。

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