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ジャンププラス原作大賞 応募作

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人を描くことに興味があり、骨太な物語が好きでずっと紡いできた物語です。 物語上、暴力表現を含んでいますが、そこを避けては理想の世界を描けず、苦しくても目を背けずに読んでもらえたら…
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『キバの唄』第3話 前夜の月

『キバの唄』第3話 前夜の月

霧の様に煙や土埃が舞っている。

男達は咳き込みながら、あたりを警戒して銃をこちらに向けたまま、ずっと騒いでいた。俺の両腕を抑えてた二人もびくりと体を震わせ、警戒しているのを肌で感じる。
どんどん自分の中から溢れそうになっていた黒い渦が静まっていくのがわかる。

「っ!?誰だ…ッ!」

図体の割に、ストライプスーツ男は思い切り狼狽え、身振り手振りで屈強な男達に自分の周りを囲うように指示する。
あと

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『キバの唄』第2話 正体

『キバの唄』第2話 正体

「キバの唄っ!?」
「ばっ…!声が大きい…っ!」

突然声量を上げた仲間の肩を、少女は、反射的に小突いていた。
小突かれたほうは、ここぞとばかりに大袈裟に肩を押さえて痛がってみせ、彼女を睨む。

「ってぇ…!んだよ、暴力反対!キーリール!見ただろ?今の!ひどくない!?」
「悪い。銃の手入れしてたから見てなかった。」
「はぁっ!?」

実際に銃の手入れをしている仲間に、少年もそれ以上巻き込むことがで

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『キバの唄』第1話 闇の守り人

『キバの唄』第1話 闇の守り人

足が、もう動かない。
息を吸っても、うまく吸えない。足が震える。汚れた指先も、寒さと感じた事のない恐怖で震えを抑えられない。

「諦めろ。」

男の静かな声が聞こえると、心臓を思い切り掴まれた錯覚がして、顔をしかめてしまった。止まってはいけない。

逃げなければ。離れなければ。

懸命に行き止まりの鉄製の壁を手探り、叩いたり、蹴ったり、隙間でもないか指先で探り必死で突破口になりそうなものを探した。

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『キバの唄』あらすじ

『キバの唄』あらすじ

北の自然豊かな小さな国―オルカラド王国。
その国を守るかのように、悪い芽を夜な夜な摘んでいく謎の戦闘集団。
人々は、口を閉ざす代わりに彼らの圧倒的な強さを讃え、与えられた身の自由や安全への感謝を唄にして言い伝えていく。

人々は唄う。彼らは、正義の狼だ、と。

これは、この小さな、国際的に名もなき国に突如として現れた希望の物語。
そして、この希望の光が差す空を、虎視眈々と覆いつくそうと目論む者の闘

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