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グリム童話考察⑤/死後の世界と人魚姫

(ブログ https://grimm.genzosky.com の記事をこちらに引越ししました。)

※あくまでもひとつの説です。これが絶対正しいという話ではないので、「こういう見解もあるんだな」程度の軽い気持ちで読んでください。
※転載は固くお断りします。「当サークルのグリム童話考察記事について」をご一読ください。

不思議の国のアリスは、ウサギを追いかけた先の穴から不思議な世界へ迷い込みます。このような異世界に迷い込む系のお話というのは、過去も現在もたくさんありますね。
最近のお話は分かりませんが、むかしむかしのお話において、「この世ではない不思議な世界」とは一体何を表すのか? それはずばり、死後の世界だろうと思われます。
日本人が「死後の世界」と聞くと、イコール天国や極楽といった「死んだ人がたどり着く先で、そこに行った人は帰ってくること無く永久にそこで暮らし続ける、生きてる人には手の届かない遠いところ」のようなイメージがあるかと思いますが、キリスト教が広まる以前の西洋では、そういった捉え方ではなく、死後の世界つまりあちら側の世界とは、我々の生きるこちら側の世界と表裏一体で並行して存在している、たとえば鏡のこちら側と向こう側くらいの捉え方だったのではないだろうかという見方もあるそうです。
そもそも昔の日本も、イザナギがイザナミを連れ戻しに黄泉の国へ行ったり、一旦地獄へ落とされた人間が元の世界に戻ってくるような民話があったりと、似たような考え方をしていたのではないかと思われます。先に述べたような「一方通行の天国」の考え方が出てきたのはキリスト教の影響なのではないかなとも考えられますが、今はこれといった根拠を挙げられないのでとりあえず置いておきます。

さて、いつの時代も、人間の最大の関心ごとは「生と死」です。
古代エジプトでは死からの復活を願い、ミイラを作ったといわれています。その古代エジプトですが、太陽信仰の文化でもあります。なぜ太陽なのか? それは、太陽は沈み、また昇るため、復活の象徴とされたからという考えがあるそうです。
太陽は海(水)に沈み、「あちら側の世界」へ行く。そしてまた海(水)から「こちら側の世界」へ出てくる。人間は生まれる際、水に濡れたような状態で生まれてきますから、その辺とかけているのかもしれません。そしてその考え方はギリシャやローマ等、ヨーロッパ各地に影響を与えていると思われます。
ちなみに、太陽が沈む際に一瞬緑色に光るグリーンフラッシュという現象があります(パイレーツ・オブ・カリビアンにも出てきます)。そのため、太陽の色「金・赤・緑」はあちらの世界への入口・またはあちらの世界のもの、といった特別な意味が含まれることがあるそうな。

そのように、「水の中」=「死後の世界・あちら側の世界」というようなイメージがあり、西洋の昔話では湖のほとりといった水辺や井戸などは、あちら側の世界へ通じているのだそうです。
なお昔の人は、「こちらの世界/陸とあちらの世界/水の両方の性質をもつものは両方を行き来するすごいヤツなんだ」と考えました。水陸両用、つまり、カエル、カニ、カメ、ガチョウ、ズゴックなど。これらがお話に出てきた場合は、それはあちら側の世界を暗示するような存在という可能性があります。すみませんズゴック関係ないです。

ところで昔の人は、物事を二元的に考えている部分がありました。「あの世」「この世」という考え自体も二元的ですが、「目」と「耳」も同様に二元的なものと考えていたそうです。つまり、目で見えないものは音で聞こえると。前回の記事にも書きましたが、死者の魂や死後の世界は、普通の人間には目では見えません。あちら側の世界は、生きている我々からすれば「音の世界」だということです。

さて、ここでようやく人魚姫についてのお話です。
人魚は水の中、つまり「あちら側」の世界の住人です。「こちら側」の世界の住人である王子様では、その声を「聞く」ことはできたかもしれませんが、姿を「見る」ことはできません。
人魚は魔女と契約して、声と引き換えに人間になります。つまり、こちら側の世界の住人である王子様の目に「見える」ようになるかわりに「音」を失ったと、こういう風に考えることもできるわけです。
(※ただ、グリムと違いアンデルセンがどこまで意図的にこうした民話のエッセンスを自分の話に盛り込んでいたかはちょっとわかりません。)

なお、同じようにグリム童話で「音」を扱ったと思われるお話があります。

ルンペルシュティルツヒェン(Wikipedia)

「ルンペルシュティルツヒェン」の「ルンペルシュティルツ」はポルターガイスト的な妖怪を表すそうで、つまり「音」ですね。
小人であるルンペルシュティルツヒェンはあちら側の世界の住人であり、それを「音じゃん」と正体を見破られたために2つに裂けてしまったというお話なのかな、とも考えられます。

ちなみに、あちら側の世界への入り口としてよく出てくるのが、先ほども書いた湖や井戸のほか、穴、口(特に狼)、森などがあります。

そのようなことを意識しながら西洋の童話等を読むと何か発見があるかもしれませんし、私は水陸両用モビルスーツの中ではアッガイが一番好きです。

Written by : M山の嫁