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グリム童話考察⑦/「ブレーメンの音楽隊って、結局音楽隊になってないじゃん」について

(ブログ https://grimm.genzosky.com の記事をこちらに引越ししました。)

※あくまでもひとつの説です。これが絶対正しいという話ではないので、「こういう見解もあるんだな」程度の軽い気持ちで読んでください。
※転載は固くお断りします。「当サークルのグリム童話考察記事について」をご一読ください。

主人の学生時代の資料の中に、ブレーメンの音楽隊についての資料もありました。
資料によると、このお話は東西南北4つの風と風見鶏(雄鶏)をキーに、4匹の動物が新しい世界を作るお話なのだそうですが、これは同じゼミ生の別の方の研究発表なのだそうなので、ここでは触れないでおきます。
主人が読んでいて気がついたという点について、薀蓄を交えて書いてみようと思います。

ブレーメンの音楽隊は、使い物にならなくなった4匹の動物(下位のもの)が人間である泥棒(上位のもの)に勝つという、逆転のお話(前回の記事参照)ですね。
タイトルにも書いた「結局音楽隊になってないじゃん」、多くの方が思っているのではないかと思いますが、実はこのお話は見方によっては「こちらの世界で役に立たなくなった動物たちが、あちらの世界で立派な音楽隊になっている」お話ともとれるのかなと考えます。現に、泥棒を家から追い出す際に4匹が合体して鳴き声をあげることを「音楽を奏でる」と書いてあり、それ以降4匹は「音楽隊」と書かれていたりします。まぁ、ブレーメンには着いてないんすけど。

音楽隊というだけあり、このお話の重要なテーマのひとつが「音」です。
「音」と「あちらの世界」の関連性は以前の記事の通りで、死んだ存在は音を出すと考えられました。
お話の中で、ろばが犬に向かって「楽団に入ったら、僕はリュート(ギター)を弾き、君はティンパニー(太鼓)をたたくんだ」のように言います。
リュートは動物の骨から作られます。ティンパニーは動物の皮から作られます。
つまり「一緒に音になろう」と、死を暗示していると考えられるのではないかと。
私と主人の考えでは、森はあちらの世界を表すので、4匹はブレーメンにたどり着く前に、少なくとも森に入った時点で死んでいることになります。もしかしたら最初からみんな死んでいた可能性も。そう考えると、ちょっと切ない……。
泥棒がガラスの向こうから現れた4匹を幽霊と見間違えて家から逃げ出しますが、見間違いではなくて本当に幽霊だったということなのかもしれません。

ところでこのお話は、鳴いたり食べたりと、「口」を連想させる内容が出てきます。特にお話のラストに「このお話は聞きたてのほやほやです」という一文がついているのですが、これは原文に忠実に訳すと「この話を語った人の口はまだ温かい」となるそうです。
以前、「口」はあちらの世界への入口と書きましたが、入るだけではなくて、出るものもあります。口から出てくるもの……音ですね。
それともうひとつ、このお話は、ところどころに「骨」という言葉が出てきます。
鶏が「骨の髄まで染みとおるように」鳴いていたり、パンを食べたがっていたはずの犬がなぜか「肉のついた骨の2、3本ありゃいいや」的なことを言ったり。そして先ほどの「骨で作られた楽器」。
主人曰く、グリム童話において、「口」+「骨」=「音」なのだそうです。

グリム童話集において、ブレーメンの音楽隊の次のお話は「歌う骨」というお話です。
簡単にストーリーを書くと、いのししを退治した弟の手柄を横取りしようと、兄が弟を殺して橋の下に埋めてしまいます。兄はその手柄で王女と結婚します。ところが、あるとき羊飼いが川を渡ろうとした際に橋の下に骨を見つけ、角笛の吹き口にちょうどいいと思ってその骨を削って吹き口を作ると、「兄が私を殺して橋の下に埋めました」と音がします。それがきっかけで兄は死刑になり、弟の骨は立派なお墓に埋められることになりました、というお話です。
「ねずの木」も似たような構図ですね。お父さんがスープを食べ(口)、妹が骨を集め、殺された兄が歌う。
そのように、口と骨が合わさると死者の出す「音」になるのでは、というのが主人の考えだそうです。

以上、「4匹は生きてブレーメンの音楽隊にはなれなかったけど、あちらの世界で、死んで立派な音を出す音楽隊になったんだ」という説のお話でした。これだけ書くと切ないお話に見えますが、冒頭に書いたゼミ生の方の発表は「そこで自分たちが生きていける新しい世界を作った」という明るい(多分)内容でした。
最後にもうひとつ、ブレーメンの音楽隊の話の元ネタであろうお話で「狐物語」というものがあるそうです。
それによると、動物は最初は4匹ではなく、もっとたくさんいたそうです。興味のある方は調べてみてください。

Written by : M山の嫁