アメリカはやはり広かった。

 どうもどうもいやどうも。

 ゲームは好きなのですが、このところデジタル・アナログを問わず、がっつりと腰を据えて遊ぶゲームを遊べていなかったので、一念発起して好きなジャンルである鉄道ゲームを大晦日から元日にかけて遊んでみようではないか、というのが今回のお話。

 鉄道ゲームというと、おそらく多くの方が思い浮かべるのが桃太郎電鉄かと思います。あるいはA列車で行こうとかRAILROAD TYCOON、はたまた蒸気の時代ひも電etc. etc…
 線路を敷設し、貨物を運び、お金を稼いで会社を大きくする。時には地域を発展させる。楽しいですよね? ロマンですよね?

18XXって何だ?

 いきなりですが18XXというゲームのジャンルをご存じでしょうか。
 Francis Tresham氏がデザインした1829に端を発する、ある地域の鉄道網の発達(と鉄道会社の興亡)を扱ったゲーム群です。1829の場合はイングランド、最も有名なもののひとつである1830であればアメリカ東部、変わり種としてはアステロイド地帯の資源掘削をモチーフとした2038といったように、様々な地域や時代を扱ったものがあります。もちろん、日本を舞台にしたものもあります(Shikoku 1889とか)。
 プレイヤーの立場は資本家。ゲームの目的は、ゲーム終了時に「自分の」所有する現金と株式の時価総額の合計を最も高くすること。そのために鉄道会社を設立し、株式を売買し、線路を敷設し、列車を運行させ、収益を得て、それを将来のために内部留保したり配当したりしつつ、「自分の」資産を増やしていくわけです。

 ここで2回「」付きで、自分の、と書いたのですが、会社の資産と自分の資産はきっちり分けなければならないからです。そして、線路の敷設や列車の購入は会社のお金でしなければなりません。自分の資産と会社の資産を混ぜることができる唯一の機会は列車の強制購入が発生した時だけ。
 鉄道会社は列車を所有していなければならないのですが、ゲームの進行とともに列車が旧式化し、廃止されます。列車の世代交代が上手くいかず、列車の廃止により会社の所有する列車がなくなった場合、強制的に列車の購入をさせられます。会社の資産では列車の購入資金に届かない場合、その会社の社長が自腹を切って購入資金を捻出しなければなりません(できなければ破産し、ゲームから脱落します)。つまり、会社の資産と個人の資産が混ざる時はよろしくない状況であり、勝利から遠のく事態であるということです。

 それじゃぁ収益は全部内部留保し、列車購入資金を貯めればいいかというとそうでもなく、全額留保すると株価が下がります。特定の条件を満たす株式の売却を行っても株価が下がります。そして、株価が0まで下落するとその会社は閉鎖となり、倒産となります(会社の閉鎖の条件はゲームによって違うかもしれません)。
 そして、株式があるということは、会社の乗っ取りや先行き不安な会社の押しつけも発生しうるということでもありますよ。

 ランダムな要素があるのは(全てのゲームを知っているわけではないので断言はできませんが)ゲーム開始前の状況設定まで。以後の状況を左右するのはプレイヤーの判断のみ。
 ……と書くと敬遠される方もいらっしゃると思うのですが、最後まで生き残って東西(南北)連結する、とにかくトンネルを掘りまくる……といったロマンを追求する遊び方もできると思っているので、自分で線路を引くタイプの鉄道ゲームが好きで、プレイ時間が長めでもいいという方はチャレンジする価値のあるゲームかと思います。

 そして、わたし自身、過去3回ほど18XXを遊ぶ機会はあったのですが、いずれも最後までプレイできなかったので、この年末年始にトライしようと思ったのです。

1846

 18XXは18561830(タイルにエラーのあるMayfair社版)を持っていましたが、1856は実家に置いていたら処分され、1830は持っているだけの状態という体たらく(遊ぶにはエラータイルを修正しないといけないから)。
 他のゲームとともに、新たに購入したのがGMTの1846です。

 舞台はアメリカ中西部。東部の鉄道網が発展し、次第に西部へと鉄道網を延伸してゆく……というシチュエーションです。GMTのゲームはコンポーネントがしっかりしたものが多いのと、舞台となる地域がわかりやすいという理由で購入。その時には全く気にしておりませんでしたが、ルールブックに初心者向けにデザインしたとデザイナーが書いてましたので、結果オーライです。初めて18XXに触れる人と遊ぶにはよい選択でした。

言語の壁

 問題は日本語版でもないし、パッケージに入っているルールは英語のものしかない。GMT公式サイトやBGGを見ても日本語への翻訳は公開されていなかったので、自分で翻訳となるわけで。
 しかしながらネットで最新版ルールやFAQを容易に入手できるようになり、しかもAIを活用した様々な翻訳サービスが登場したことで翻訳環境も大きく変わり、原文を流し込めば「それなりに」内容がわかるようになりました。
 わたしが利用させてもらっているのがDeep L。こなれた日本語に訳してくれるので大変重宝しております……が、たまに肝心な部分を端折っていたりするので、やっぱり自分でも訳してみます。なんだかその文章は違う気がして、手直ししたいのだけど、いい日本語の言い回しが思い浮かばなくて、結局Deep L訳を採用ってなことも多々あります。あとは、訳文に引っ張られて誤りを見過ごしてしまったことも。
 とはいえ、Deep Lはとても優秀で便利です。はい。

 大晦日に行われる年越しゲーム会1ヶ月前にはルール部分はほぼ翻訳できました。1846はコンポーネントの言語依存が低いため、全員がルールに目を通せばこの時点でもプレイすることは可能ですが、さすがにそこまでの勇気はわたしにはなかった……

プレイアビリティを上げたい

 ルールブック末尾にサマリシートが掲載されており、少なくともこれに記載された内容を盛り込んだものを作らないとプレイはままならないだろう、と花子(そう、わたしは一太郎派)でサマリシートを作成です。

サマリ作成中

 翻訳したりサマリを作ったりしている時にいつも直面するのが、老眼に優しいものを作るとページましまし問題。文面を工夫してねじ込もうとしても、確保したいフォントサイズに阻まれて泣く泣くレイアウト変更したり、限られたページ数(サマリは両面印刷で収まるようにしたい!)でやりくりするために手が止まることもしばしばです。
 それでもなんとか入れたいことをねじ込んでサマリも完成、となったのですが、年賀状を印刷したり、お正月の準備しているうちに大晦日になってしまったわけですよ。ルールの見直しが1/3程度しか完了しておりませんけれども。

年越しゲーム会へ

 年越しゲーム会というのは、某ボードゲームプレイスポット(というのが正しいのかわかりませんが、プレイスペースの貸出メインで、少数のゲームも販売している店舗です)で毎年行われる12月31日夕刻から翌朝にかけて一晩中遊べるゲーム会です。色々な人が集まり、店舗に置いてあるものや、参加者が持参した色々なゲームを遊べ、カラオケもあるイベントです。
 さすがに2020年はオールナイトではなく21時まで。この地域での感染者数はわずかであったものの、コロナを警戒してわたし以外誰も来ませんでしたが……
 2021年はワクチンの接種があったことや感染者も少なかったことからオールナイトでの開催です。もちろん、マスク着用、手指消毒などは当たり前。

 ここ何年か、Facebookで遊びたいゲームを公開してから大晦日のボードゲーム会に持って行ってるのですが、遊べたためしがない(そもそもウォーゲーム/シミュレーションゲーム寄りだったりする)ので、1846以外に、一人でも遊べるLabyrinth、ソリティアゲームのPacific Subs(国際通信社からでた日本版)も持っていきましたよ。

 わたしがお店に到着した時には、すでに十数人のお客さんがおり、思いおもいにゲームを遊んでいました。とりあえず、挨拶を済ませて、遊べるようにタイルやマーカーをボードから打ち抜いたり、カードを分けたり。
 途中でラミーキューブの人数合わせに付き合って、ラミーキューブで遊んだりしているうちに(ももいろクローバーZのカウントダウン番組を観ながら)年越し。家でも蕎麦を食べてきたのですが、ここでもカップ麺の蕎麦をいただき、丑三つ時になんならんという頃合いに、勇者2名を加えた3名で、持ち主含め初プレイの重量級ゲームに挑戦です。
 ルールブックには慣れたプレイヤー3人が手際よくプレイして3時間という記載がありましたが、さてどこまでプレイできますか。。

気付けば6時間

 当然のことながら、ルールの説明(インスト)から入ります。ゲームの骨格部分を説明するのはそこまででもないのですが、枝葉の部分を説明するのが苦しい……。ひとつは項目が多いこと。例えば、株価の変動や非公開会社(Private Company)の特殊能力、シカゴの扱いなど、どれも判断に影響を与える項目で端折れない。もうひとつは、そうした説明がどうつながってくるのかピンとこなくて頭に染みこみにくいこと。
 この頭に染みこみにくいのは、説明してる方も喋ってて苦痛になってくるんですよね……。例を挙げればいいけれど、インストだけで何時間? ってことになるので、身体で覚えろ! となりがちなのですが。

 ゲームが始まると、予想を裏切って、比較的スムーズに進んでいきます。
 ニューヨーク・セントラル鉄道、ボルチモア&オハイオ鉄道、チェサピーク&オハイオ鉄道の3社がまず設立され、その後グランドトランク鉄道、イリノイ・セントラル鉄道が続くのですが、シカゴは(史実と異なり)一向に発展せず。理由としては北部線路は互いに利用されないよう牽制し合っていたのが大きいかと。
 フェイズIV(最後の時代区分です)突入でグランドトランクが列車廃止に伴う強制購入の危機を首の皮一枚で乗り越え(社長が資金提供)、マップ南部で東西が連結され(ほぼわたしひとりで繋いだので時間がかかった)、いよいよ東西を横断する路線が出てくるか! というところで時間切れ終了。
 とはいえ、概ね以後の展開が見える状態だったので満足なり(勝敗で言えば、決着がつくまでやってたら最下位になっていたはず)。東西を連結できはしたものの、ひとつの列車で東西を結ぶように繋ぐのは一苦労でした。いや、アメリカは広いねぇ。

 インスト開始から終了まで約6時間。予想ではインスト抜きで5時間でしたので、予想よりも時間がかかったかな?
 初めて18XXをプレイされた方曰く、「インストの時にはルールがわからなくて絶望したけど、ゲームが始まったら2時間ぐらいに感じた」とのこと。わたしも遊びたかったゲームで遊べて、なおかつ初めてプレイした人に(インストはともかく)楽しんでもらえたようで嬉しゅうございました。
 ゲームボードには必要な情報が簡潔に盛り込まれ(英語ではありますが、中学生でも読めるくらい、だと思います)、読めばもっとスムーズにゲームを進めることができたはずですが、英語だとみんな読まないのね。。
 あと、購入したのは2nd Printingだったので、ルールブックに記載のない非公開会社が2社出てきて驚いたりもして。

 と、いうことで訳していなかった部分を訳したり、頭から読み直して訳語の統一や表記の工夫をしてみたり、ようやく一区切りついたのでもう一度遊びたいなぁ……6時間ぐらい確保して。

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