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『DUNE/デューン 砂の惑星』 これは始まりに過ぎない

今作は公開直後にまず観て、そこから2週間後に再度鑑賞。その間に興行収入の見込みがついて続編の製作が発表された。それを踏まえて観るとまた感じ方も変わってくるものだ。初見時にはタイトルに「Part One」と付けられているのに気づいて「おお」となったし、どこまでが描かれるのかも含めて楽しむことになった。

今作を語る前にまず触れておきたいリンチ版は映画館では観ていなくてTV放送のものを最初に観て、好きな作品なんでその後は観たくなったらレンタルで観るということを繰り返してきた。
詰め込んだ仕上がりで、公開時は酷評もされたりしたということは後に知ることになるが、個人的には刺さるところが多くあって好感を持っているし、「あらすじじゃないか」「ボイスオーバーが」という批判されがちな点を全然受け入れてきた。原作よりも先に触れたということもあるだろうし、子供の時からTVアニメを映画版にする際に圧縮してひとつの作品にしたものを観てきた経験も助けているのかもしれない。確かにリンチ版は後半で特にダイジェスト感が強まって、大急ぎで進んでいくのは苦笑するよりないが、愛すべき作品だと思っている。
TVシリーズもあってミニシリーズとは言え、90分×3話をかけて原作を映像化した。それを思うと、今作は155分となっているので、続編も同等と考えると出来ることの幅は広くなって良かったなと思う。

こういう背景を知らずに観た人たちにとって今作はどのように受け止められているのだろうか、という疑問はある。ティモシー・シャラメのファンへの配慮はあったと思うが、やや退屈なものになったのは否めないかな。それは何に由来するかと言えば、世界観を見せるためのショットがそれぞれしっかりと時間をとって配されていて、それを楽しめるかどうかで評価はわかれると思われるから。そこに冗長だという見方がなされると評価は低くなるだろう。しかしあえてそれをやっているから今作は素晴らしいのだ。
皇帝の使者とのやりとり、アラキスに到着した際のシークエンス、美しい文様を描いた砂漠の上を飛ぶオーニソプターなど良いショットが多くあって、それだけで最高だなと思える。だからなるべく大きなスクリーンで観るべきで、初回をDolby Cinemaで観たときと2回目の通常のスクリーンではやはり前者が圧倒的に良かった。もちろん音響もそう。そしてDolby Cinemaの特徴として高いコントラストがあり、それは暗がりや夜のシーンの明瞭さに寄与していたことには触れておきたい。そういえば2週続けてDolby Cinemaでハンス・ジマー(ノー・タイム・トゥ・ダイも彼)の音楽を聴くことになったのは面白い成り行きだった。もちろんIMAX作品に相応しくより大きなIMAXスクリーンで観るにこしたことはないが、その環境が地元では無いのが残念ではある。

また今作はとにかく大きな建造物、大きな宇宙船、大きな採掘機とそのキャリアーなど、この物語世界のスケールの大きさを示していたりして、そうした各デザインも面白く観ていた。そのあたりは「ドゥニ・ヴィルヌーヴの世界 アート・アンド・ソウル・オブ・DUNE/デューン 砂の惑星」に詳しい。

今作の冒頭で語りをしているのはチャニ。これは続編ではチャニがよりフィーチャーされる、というヴィルヌーヴの構想を知って2回目を観たので、なるほど最初からそういうつもりだったのだとわかる。
また2回目で気付いたことの中にジャミスのことがあって、ポールが見る予知イメージにチャニとともに繰り返し出てくるのが彼だ。それは戦っているだけでなく、ポールを導こうとする発言をしている。だから初見のときとはクライマックスでの彼の行動の受け止めが変わってくる。つまりジャミスはポールたち母子を実は「信じたい」のだということ。伝承に救いを求めているからこそ、あの決闘を求めるのだ。あのフレメンの集団の中で彼こそが確かめたがるのはそういうことだろう。そしてポールは彼を圧倒してフレメンに認められる。それはジャミスにとって最悪なのではなく、むしろ求めたことなのだ。彼がポールを救世主へと導く手助けをしたということ。ポールはそのことを感じているし、だからスティルガーに対して勇ましくも「手を貸せ、協力しろ」と迫るのだ。ポールは助けられた立場ではなく助ける側に立とうとしているのは、ジャミスの想いを感じているからで、仕組まれた伝承だとしても自分の運命を受け入れる決意をしたところで「Part One」が終わる。最高。

今作はリンチ版のように大きな状況の説明はされずに、メランジの重要性への言及は少ないかと思った。だからこの連作ではメランジを巡る物語というよりも、もっと重要なものがあるとみていいのではないかと考えている。そしてそれは続編でわかるのだろう。楽しみだ。

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