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続・ソロジャーナル 制作の手びき


まずは感謝を

以前書いたこちらの記事。

思った以上に多くの方に読んで頂けたようで、ありがとうございます。
たたき台になればと見切り発車で書いたものですが、多くの方がソロジャーナルに関心を持っているのだと嬉しくなりました。

うちの子夢日記「Dream in Dreaming」

で、一作も仕上げないのはどうだと思い、昨夏に一作、仕上げました。

表紙画像。AI生成サービス「midjouney」で生成したものを加工しています

TRPGやPBWという「なりきりゲーム」のプレイヤーさまと交流があったので、どうせなら「普段遊んでいるキャラクター=うちの子をそのまま投入できるシステムがほしい!」と思っての企画でした。

小説など一次創作をしていた方も反応してくださり、SNS等でプレイ報告が上がったのを見て嬉しかったです。
こんな形でもコミュニケーションって成り立つんですね。

さて、せっかく一作仕上げたのですから、振り返りも兼ねて、私がどのように本作を作ったのかを書き記したく思います。
当然ながらこれは絶対の正解ではありません。あくまでこういうやり方もある、程度にとどめていただければ幸いです。

要件定義――誰に・何を楽しんでもらう遊びか

「Dream in Dreaming」制作にあたり、整理したのは以下のことでした。

  • 誰に遊んでもらいたいか(対象者層)

  • 何を楽しんでもらいたいか(醍醐味・システム)

SEさんでいう要件定義、ですね。他にも考えたことはありますが、最低限この二つは決めておくと味がぼやけにくいです。

私の場合、普段関わりのあるプレイヤーさんが「キャラクターの深堀りをできる」システムを作りたいと考えました。
TRPGはシナリオと呼ばれる事件やできごとにキャラクターになりきって主体的に関わる遊びですが、シナリオの外でもキャラクターには日常があり、時には夢も見るでしょう。
普段描かれない、幕間を描くツールがほしい。それが企画の出発点でした。
またゲームのプレイヤーだけに限らず、小説など自身で創作をされる方にも刺さるといいなと、対象者層を決めました。

  • 誰に:TRPG・PBW・創作など「うちの子」が心の中にいる人

  • 何を:夢の風景を楽しんでほしい

次に掘り下げたのは「何を」の部分、夢の性質です。
キャラクターが見るのは楽しい夢か悪夢か、現実の追体験か。

ここはそのままプロンプト(物語の描写を促す指示文)に活かされています。ポジティブな夢でもよかったのですが、「あー楽しかった」で終わってはキャラクターに成長や変化がないと思い、焦燥感やトラウマを想起しそうな文言も含めました。

ただ、ここで注意したのはバランスです。
悪夢的な内容ばかりでは寝ざめも悪く、書く筆も止まってしまいます。
意地悪にならないよう、受け取り手の裁量で「ポジティブ/ネガティブ」を決められるよう、夢に出てくるものは最後まで吟味しました。

ゲームの流れを作る

どんなに楽しくても、終わりなきゲームはいつか苦行になります。
ゲーム進行の流れと、いつになったら終わりかは定める必要がありました。

今回私が決めたのは、「任意のタイミングで終われるようにしよう」ということでした。
対象層にソロジャーナル初心者も含むため、疲れる前に自分の意思で筆をおけるようにしようと思ったのです。

この課題への私の回答は「眠りの深さ」と「めざめの合図」を決めることでした。
眠りの深さはそのまま場面数につながり、「うとうと」ならすぐ、「ぐっすり」なら3~4場面ほど経過してから目が覚める仕組みにしました。
また、夢というものはめざめる直前ほど印象に残るものだと思ったので、「先に終わりのシーンを決める」というある意味逆の手順を踏むことにしました。
(この「めざめの合図」も最初は考えるのが難しそうなので、ランダム表で決められるようにしています)

こうして慣れていない人は少ない場面数から、延々と夢の光景を描ける人は好きなだけと、難易度調整を自力でできるシステムができあがりました。
ちなみに、夢の深さを「うとうと」「こんこん」などオノマトペで表した点は、レビューを求めた他の制作者様にも好評でした。

怖がらず、完成前の作品を誰かに見せる

プロンプトやゲーム終了の処理まで書き上げたら最後の手順。
公開前に、一度誰かに見せてフィードバックをもらおうと思いました。

ソロジャーナルはTRPGに比べ、主観的に取り組む場面が増えやすいです。
ゲームとしての厳密な記述を求められない反面、自分の思い込みで書いてしまうと「遊びにくい」システムになってしまう恐れがありました。

幸いにも私はDiscordのソロジャーナル制作コミュニティに所属していたので、原稿を見てもらいフィードバックをいただきました。
好意的なものもいただけて大変ありがたかったですが、もっと嬉しかったのは改善のアイディアをいただけた点です。

たとえば、公開前のプロンプトは「地平線の見える野原」のように具体的なものもあれば「墓場」「商業施設」など描写不足のものもあり、情報の粒度にバラつきがありました。
受けた意見の中ではこのバラつきにより「情報量の細かいものばかり選んでしまいそう」と、実質的にプレイヤーの選択肢が減ってしまう可能性を指摘していただけました。

フィードバックを元に修正した結果は、ぜひ拙作の「場面と人物を決める」のランダム表をご覧ください。
粒度を揃え、どの一文からも「どんな場面か」「どんな人・物か」の質感が伝わるようになったのではないかと思います。

最後のひねり――カスタマイズ性を持たせる

一番最後に懸念したのは、夢の内容がどのキャラクターにも合致するか、でした。
対象者の定義上、夢の主役にはファンタジー・SF世界の人物から現代舞台、はたまた人間以外の存在も含まれます。
そんな多種多様な人物が見る夢が、プロンプトに書かれてある内容だけでいいのか。

最後まで悩んだ末の結論は、カスタマイズ性を持たせることでした。
早い話が、二回目以降のプレイでは夢の内容を自分に合わせて変化させられるようにしたのです。

ソロジャーナルのシステム上の利点はTRPGほどにルールが厳密でなく、システムが外部に向け「開かれている」点です。
言い換えれば、多少粗があっても破綻せず進めることができ、そのファジィさ故に「プレイヤー自身の手で」調整することも可能なのです。

実際にこのカスタマイズをしてまで遊んでいる方はいまのところ、私の見た範囲にはいませんが、それでもいくらかプレイヤーに寄り添う工夫ができたのではないかと考えています。

まとめと蛇足

以上、参考になったでしょうか。
整理して書くとなんだか大変そうと思われるかもしれませんが、やいのやいの言いながら作るのは頭の体操みたいで楽しいものでした。

なお発表場所ですが、最近は国内でもソロジャーナル専門のコミュニティが登場しているようです。

システム本体だけでなくプレイログも投稿できるので、いろんな関わり方ができるのが嬉しいですね。

蛇足ですが、海外でのソロジャーナルの位置づけは「TRPGほど厳密にはシステムを組めないが、アイディアはある」というクリエイターが、比較的気軽な創作活動としておこなっている節があるようです。
ほか、ゲームとしての定義が非常に難しいながら、リリックゲームという沼も存在するとか……(これはいつか、またの機会に)。

何にせよ、こういうものの基本は「つくってあそぼ」です。
皆様もぜひ、完璧を目指しすぎず、気楽に作って発表してみてくださいね!
こう、にゅるっと。そんなノリで。

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