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社会的手抜き〜わりと身近な心理学④

「わりと身近な心理学」シリーズの4回目は、「社会的手抜き」について。
集団で生活をしていると、たくさん人がいるはずなのに、自分ばかり…と思ったり、なぜ、誰も手を差し伸べないのか…と思ったことありませんか。課題の遂行について、集団の場合にはどのような影響を及ぼしているのだろうか。
今回はそんな疑問について、心理学知見からお伝えしたいと思います。

社会的手抜きとは

集団の中にいるため、本来なら発揮される個人の能力が生かされない場合がある。社会的手抜きとは、たくさんの人がいるにも関わらず、効率的に物事が進まないことをいいます(池田ら,2017)。
人が多いことで、力が分散されるどころか、みんなが他人事になってしまい、責任の拡散が起こり、動機づけが低下するため、業務が進まないということです。
一方では、意味のある課題に対しては、人数が増えても社会的手抜きが減少するというという結果もあることから、課題に対する目的や意味について伝えることで、動機づけが出来るのではないかと考えられる(本間,2015)。


傍観者効果

1964年、アメリカでキティ・ジェノヴィーズという女性がニューヨークの街中で刺殺されるという事件がありました。
30分以上も凶行が続いたにも関わらず、誰も警察や救急車を呼んだりすることはなく、残念ながら、被害者は死亡してしまったのです。
「誰かが対処するだろう」という気持ちを周囲の人の多くの人がもち、傍観者になってしまったということです。
冷淡さ、無関心、巻き込まれたくないという心理、犯人への恐れなどが原因であるが、誰かが警察を呼んだであろう、救急車を呼んだであろうと、誰もが考えたのです。
結果として、緊急事態を発見したものが1人であれば、何かしなければならないと思うが、目撃者が多くなると、何かしなければならないという気持ちが分散してしまう。また、自分が助けることで、もっと有能な救助者の妨げになるとの懸念もあるとした(Adam Hart-Davis,2018)。

社会的促進

一方で、集団で一つの目標に向かうことで、大きな力を発揮して、目標を達成することもあります。
このことを社会的促進といいます。
但し、それは、必ずしも課題達成に影響を及ぼすとはいえず、評価懸念などもあるのではないかと考えられている(本間,2015)。

まとめ

集団において、同じ方向を向いて、ひとつの目標や目的を達成するのはとても難しいということが、先人の研究でも明らかとなっている。しかし、意味のある課題に対しては、促進されることもわかっている。よって、達成するためには、集団において、その目標や目的を理解すること、そのためには、コミュニケーションがとても大切であるといえるでしょう。緊急事態においても、周囲が何らかの会話を積極的に行うように出来れば、皆が他人事にならず、いち早く助けることが出来るかもしれない。そんなことを思います。

引用文献

池田謙一ほか(2017).社会心理学 有斐閣,188-191
本間道子(2015).セレクション心理学26  集団行動の心理学 サイエンス社,113-145
Adam Hart-Davis(2018).Pavlov’s Dog 創元社,96-97


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