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初夏の白昼夢

5月30日、Rendezvous展に行った。


『Rendezvous』
東京 デザインフェスタギャラリー原宿 GALLERY WEST
2022年5月28日‐30日
model: misaki
photo: 萌佳、遊


写真展の告知をネットで見かけて、モデルのmisakiさんの雰囲気や着ているお洋服に惹かれて、行ってみたいと思った。
当日は誕生日だったのだけれど、夜まで特に用事もなく、午前中から原宿に行くことにした。

会場であるデザインフェスタギャラリーは、大学時代に美術部の展示をしたことがあり、場所を知っていた。
(美術部は幽霊部員で何ヶ月かで辞めてしまったけれど)
竹下通りを抜けて少し行ったところを左に曲がる道順なのだが、竹下通りは、一度迷い込むと脱出するのにかなりの時間を要する。

というわけで、竹下通りを避け、迂回して会場に向かった。
明治通りを挟んで、日向と日陰がくっきりと分かれていた。
新作スニーカーでも求めてか、向こう岸に謎の行列ができていて、思わず横断歩道を渡るのをためらってしまった。
反対側は日陰になっていて、失敗したと思いつつ、早足で向かう。
頭上のピンクの日傘が、頼りなげに揺れた。

時折強い風が吹き抜けて、心地いい。
道が合っているのか不安になるような路地を曲がると、ギャラリーが見えてきた。

入口を入ってすぐの小さなスペースが、展示エリアになっている。
四角い小部屋に、一人の女の子の、消えてしまいそうな時間が閉じこめられていた。

春の満開の桜、海辺の観覧車、レトロな遊園地、赤いワンピースと革張りの椅子……。

どの写真も、話しかけたくなるような、手を伸ばしたくなるような写真だった。
ソフトクリーム一緒に食べたいな、とか、観覧車乗りたいな、とか、自然と隣にいるような感覚にさせられた。

会場にはモデルのmisakiさんと写真を撮られた萌佳さんもいらっしゃって、お話できた。
misakiさんは、少し前に同じく原宿で開かれた、戸田真琴さんと飯田エリカさんがやられているプロジェクトの写真展でスタッフをされていた。
その際、飯田さんが撮られたmisakiさんの写真が素敵で、「かわいかったです」と変なナンパのような声のかけ方をしてしまったにも関わらず、私のことを覚えていてくださり、展示を見に来たことを喜んでくれた。

展示の中でも特に気に入った花やしきの写真をまとめたZINEを買うと、サインをしてくださった。
「今日誕生日なんです」と言うと、とても驚かれた。
この後の予定を尋ねられて、まだ決めていないけれど、とりあえず写真展に来てみましたと答えた。

会場を後にして、何か原宿らしいものでも食べようかと思ったが、暑さと人の多さにぐったりして、そそくさと原宿から退散してしまった。

翌日、水色とピンクという、私の好きな色の組み合わせ(思い返すと、同じ色のペンやリップクリームを持っていた)のZINEと、見返しのmisakiさんのかわいらしい文字を撫でながら、

一人で、行きたい場所に行って、会いたい人に会えて、
いい誕生日だった、と思った。

家に帰って思い返すと、強い日差しや、行列、ギャラリーの真っ白な壁やお二人の姿が、なんだか白昼夢のように思えてきたけれど、確かに在った幸福を、今もふわふわと、反芻している。