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ケーキ屋さんはなぜ潰れないのか。

ショートケーキ数百円。ホールケーキでもせいぜい数千円。
それなのに、ケーキ屋さんが潰れない理由、ご存知ですか?

先日、僕はケーキ屋さんにいました。
家族のとあるお祝いのためにケーキを選んでいたのです。

大きなふたつのショーケースにはそれぞれホールケーキとショートケーキが色とりどりに並べられています。

僕はホールケーキの中から桜色のケーキを選びました。

ちょうどその時、入り口で扉が開く鈴の音がしました。
一人のお爺さんがお店に入ってきたのです。
真っ白な髪の毛にチェック柄のシャツ、チノパンにサンダル、という出立ちでした。

お爺さんはショーケースを目指して僕の近くまでやってくると、
一番シンプルないちごのホールケーキを指さしました。
そして店員さんに控えめに聞きました。

「このケーキは買えるんですか?」

店員さんの答えは
「はい。お買い求めいただけます。」

お爺さんは言いました。
「じゃぁ、これでお願いします。」

「プレートのメッセージは、いかがされますか。」
店員さんはお爺さんに尋ねました。

すると、お爺さんは言いました。
たったひとこと、それはとても照れくさそうに、言いました。

「『誕生日おめでとう』でいいです。」

その言葉が耳に入った瞬間に、僕の心には幸せな感情が雪崩のように押し寄せてきました。

きっと今夜、夕食のあとで、お爺さんはソワソワとケーキを取り出します。
そしてロウソクに火をつけたりなんかして、
お婆さんの誕生日を祝うのでしょう。
お婆さんはきっと満面の笑顔で色んな感情を綯い交ぜにして喜ぶのでしょう。
二人はどれぐらい長い間連れ添っているのでしょうか。
それはきっとロウソクでは数え切れないほどかもしれません。
楽しいことばかりではなかったかもしれません。
もしかしたら別れの危機もあったかも知れない。
でも、いまもこうして寄り添って生きているのです。

そんな映像が流れ込んできた僕の心は、とんでもない幸せに包まれたのでした。

さて、ケーキ屋さんはどうして潰れないのでしょう?
だってホールケーキでせいぜい数千円、ショートケーキなんて数百円ほど。
ましてや毎日ケーキばかり食べている人なんて滅多にいないはずなのに。

そうです。
気がつきましたか?

毎日ケーキばかりを食べている人がいるのではなく、
誰かのことを祝っている人が、毎日、途切れないからなのです。

先ほどの、お爺さんのように、
毎日この世界のどこかで、誰かが誰かに「おめでとう」「ありがとう」を伝えている。

だからケーキ屋さんは毎日毎日ケーキを焼いているんです。

きっと、お花屋さんだって然り。
一輪数百円、花束で数千円。
でも、毎日誰かが買いに来る。

少しだけ想像してみてください。
あなたは今、ケーキ屋さんの扉を開けて中に入りました。
甘い匂いに包まれることでしょう。
あなたはいまどんな気持ちですか?
ここに何をしにきましたか?
心に浮かんだのは誰ですか?

少しだけ想像してみてください。
あなたは今、お花屋さんの扉を開けて中に入りました。
ちょっとだけひんやりした温度が心地よい。
目の前には色とりどりのお花たち。
あなたはいまどんな気持ちですか?
ここに何をしにきましたか?
心に浮かんだのは誰ですか??

ケーキ屋さんやお花屋さんって、
いつも暖かい空気に包まれていますよね?

それはきっと、
そこを訪れる誰もが誰かのことを想っているから。

"Thank you(ありがとう)" の語源は
"Think you(あなたを想っています)"
です。

"Congrats(おめでとう)" の語源は
"Con + gratulor (一緒に喜ぼう)"
です。

毎日のように誰かが誰かを想い、一緒に喜びを分かち合っている。
これってとても素敵なことだと思いませんか。

でもね、
いまあなたがケーキ屋さんにいなくてもお花屋さんにいなくても、
周りを少しだけ観察してみてください。

あなたは今日、誰のことを想いましたか?
あなたが今日出会った些細な喜びを、ともに分かち合いたいのは誰ですか?

実は気がついていないだけで、
この世界はすでにケーキ屋さんやお花屋さんのような幸せな空気で溢れているのかもしれませんね。


本日も文末までお付き合いいただきありがとうございました。
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それではまた次回。

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