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豚足は家で食べられるのか?

業務スーパーに行った。
業務スーパーはなんでもあるから好きだ。
行く度に「きなこでっか!!」している。
あんこもでっかい。キロ単位あんこ。でっか!!


でかい粉。何の何か分からない調味料。
でかいメンマ。安いのか分からない野菜。
多種多様な冷凍食品。見たことないカップ麺。
パックの杏仁豆腐。

中でもいちばん好きなのはお肉コーナーだ。
でかい砂肝やでかいせせりを見ているとワクワクしてくる。
こんなに食べられないよ〜〜🥰している。
通常スーパーでよく見るお肉のビッグサイズだけではない。
こんなのどう食べたらいいの〜〜〜☝️☝️もいる。
例えばテール。
例えばガツ。

例えば豚足である。

豚足って見ることない。
すげぇ!なんでもでっけえ!!とウキウキしていたら
豚足に会う衝撃。
お話には聞いていたんですけど…
本当に実在したんですね……
感がある。
荒木飛呂彦先生にお会いしたら同じ感想が出そう。
写真とか…お見かけしたことはあったんですけど……

豚バラ大好き。豚トロも豚タンも。
幼少から慣れ親しんできた。

豚足さんはハジメマシテですね…………
豚は四足歩行なんだから、足があるのは当たり前。
それに沖縄旅行で食べた覚えがある気がするから、
通常食べられるもの。

そうは理解していても、
いざ豚足と対面するとめちゃくちゃ頭がバグった。

この形からお皿に載るまでが結びつけられない。
あまりにも「豚」すぎる。本当すぎる。

隣に並ぶテールは、そこまで直接ではない。
あぁテールなのねこれ。である。
そのおかげで豚足も辛うじて
「おもしろ摩訶不思議食材」のくくりで見られる。
単体でお会いしていたら即座にごめんなさいしていた。


とは言いつつ、結局その場を離れていた。
「豚足なんて売ってるんだ〜〜!」の感動。
あまりにもそのままだから、こわい。
業務スーパーすげえ!も湧き立つ。

みたことねえでけえ出汁をみる。
豚足なんて売ってるんだな。
個人じゃ使い切れねえ粒あんをみる。
豚足ってどうやって食べんの?
「豚足 レシピ」で出てきたサイトをみる。
けっこう食べ方あるんだな。
豚足の売り場をみる。
いや、さすがに豚足は…。
他の売り場を振り返る。
どうしたらいいか分かんないし。ねえ。

ささみをみて、砂肝をみて、食べやすそうだと思って、
「豚足を食べたらなにか変わるかもしれない」が浮かんだ。

こんなに出来ないって踏み切れないものを
自分の手で成し遂げたらなにかが変わりそう。

抵抗がある。直視すらこたえるけど、
おもしろそうだな〜〜!が脳内でジリジリパチパチとちらつく。

豚足を手に取っていた。両の足を揃えている。

956g 363円


安い。100g 38円。
これも購入出来た理由だった。
挑戦して美味しくなかったとしても落ち込まない。


ここから調理パート。

まな板の上にどん。

これ「本当」なの〜〜〜!?
「本当」ですか?

真っ白でツヤがあって滑らかでこの形状、
イルミューイの赤ちゃんすぎる…。

豚足だ豚足だって意識して買ったのに、
こういう単体の生き物として認識してしまう。
枝分かれした人参みたい。

目も摂食器官もなく
生まれていずれすぐに死んでしまう無垢な生き物だこれ。

自分もヴエコのようにくらっときた。
でもわたしが買ったんだ。

ワズキャンになるんだ。わたし。
包丁を手に取った。


中指と薬指の間に刃を入れていく。

【参考サイト】


まったくこの通りにならない。
こんな簡単に刃入らない…。
試行錯誤していると、手首?辺りで引っかかるとか
刃の向きを変える??といった感覚が理解できた。
ただその段階に行くまで時間がかかる。

正解が分からない。

本当にこれで合ってますか?答えはない。
刃の向きを変えても切れない。

あまりにも命すぎて内心焦る気持ちもある。
あんまりベタベタ苦戦するのは命に申し訳ない…。

ゴールデンカムイを思い出した。
アシㇼパさんすげぇな。杉本すげぇ。

畜産・屠殺している人すごすぎる。
本当にすごい。どうやって切ってんだ。
どう向き合ってんだ。まじですげえ。
技術的にも心情的にも心からすげえすげえと呟いていた。
同時に分かんねえ分かんねえも言ったし
合ってんのかこれ
ゴールデンカムイみたいだこれ
本当にこれ切れるの!?も言っていた。

いちばん分からなかったとき

ざっくりと
①中指と薬指の間に刃を入れて切り離す
②それぞれの指を切り離す
③一口大に切る
の工程だが、①に苦戦した。
②は①とほぼ似ているし、でかい骨がないから少し簡単。

2本切ってみた結果、
・包丁の刃が入る部分を出来るだけ切る
・筋などの身と身を繋ぐ部分をキッチンバサミで切る
・ねじりながらもぎ離す
がやりやすい。
包丁は怪我しかねなくて怖い。あんま無理しない方がいい。
キッチンバサミを使うと解剖感すごい。

中学でイカとか豚の目解剖したの思い出す〜〜
と言いながら作業していた。
2本目では少し慣れて作業と呼べるくらいに工程化できた。

これで一口大程度にバラすことができた。
うそ。三口大とか。もうかぶりつけばいいから…。

このタイミングで豚の毛を処理する。
白っぽく透明で、硬い。
豚毛のヘアブラシっていいんだっけ?
肉と骨の間をフォークで固定してガス火で炙った。
チリっと一瞬で焦げて取れた。
ここは教科書通りに出来た気がして嬉しかった。


驚くべきことに、ここからお皿に乗るまで画像がない。
つかれてそれどころではなくなっていた。
先ほどのサイトを参照していただければ、
わたしが作ったのより綺麗でいろいろな写真がある。

次の工程。下茹で。
臭みを取るらしい。

ネギの青い部分と生姜(チューブ)と一緒に茹でる。
15分ほど茹でた。
ガツも茹でた。ガツ好き。
臭いは思っていた臭みではない。
どちらかというとTheお肉っぽい好ましい香りがする。

これで下処理終わり。
次からは味付け…料理…になっていくのだが、
この時点で豚足が安い理由は心から理解できていた。
そりゃ安いわ。

料理①塩焼き
味付き塩コショウを振りながら焼く。
片面が骨になっているので自然と皮目から焼くことになる。
⚠かなり爆発する。長袖・メガネ推奨。
 水分が残っていたからかな?

めちゃくちゃ良い匂いがする。
あんまり指感はない。たまに指っぽい指がある。


料理②煮込み
煮込みも美味しいらしい。
味付けはいろいろ出来るんだろうけど、
砂糖・醤油のシンプル路線でいく。お酒なかった。
茹で汁に玉ねぎをダバッと、一緒に煮込む。
こんな肉肉しい肉が砂糖醤油で合うのか…?
角煮ってことなの…?
玉ねぎがしんなりするまで火を通した。

実食

豚足の塩焼き
豚足の煮込み

久々の写真を見てね。
けっこう美味しそうでは?
もう食材である。

…よく見ると指なんだけど…。

塩焼き。
脂でペットペト。骨が大きくてスペアリブみたい。
皮がしっかりしている。
とろっとした食感。脂。
塩をかなり軽めに振ったため、豚味を感じる。
もう少し強めに振っても良さそう…だし
わさび付けても美味しそう!
骨とへばりついていて綺麗には食べにくい。
美味しい。

煮込み。
玉ねぎの食感と味付けが神。わたしが天才だった。
個人的には煮込みの方が好き。
とろっと食感が溶けてる。柔らかい!!
美味しい。

ところどころ指なので、
この手で地面を踏みしめていた子がいたんだな…と
思いを馳せた。
おなかのお肉を食べていては想像もしないことだった。
命をいただいています。ありがとうございます。
おいしい。
ありがとう。


まとめ
豚足は家で食べられる。
ちょっと苦戦はするけど、
慣れれば魚を捌くのとあまり変わらない…かもしれない。
片付けもそんな大変ではないし。臭いも気にならなかった。
※料理を絞れば。皿洗いしつつ料理すれば。
 茹でて煮込んで焼いて…に夢中になっていたら、
 シンクに山ができた。大変。
 脂もかなり出るので、処理は温かい内に済ませたい。


豚足を捌くと変われるか?という点については、
答えがすごく難しい。
ある意味ではまったく変わらない。
豚足を捌いた自分になるだけ。
豚足を捌くことが「普通」「出来ること」になっただけ。
もう既に経験として消化した感もある。

だが、豚足を捌いて得られた自己効力感は魔法だった。
行為によって獲得したというより、
挑戦により得られたものな気がする。

おもしろそう!難しそう!でもやってみたい……
心の呟きを拾い、応えてあげられた。

それがすごく嬉しい。
自分を大切にしている実感がある。


もうひとつ変わったこと。
業務スーパーで豚足を見かけても、
「やっぱり安いな。なんか作ろうかな」と
一食材として認識するようになった。

豚足を特別視して遠巻きにしていた自分より
今の自分の方が好きだと思う。

畜産、屠殺、精肉業関係者様、
いつもありがとうございます。
どの部位もおいしく食べられて幸せです。
知識として持っている「お肉は生き物だった」を
実感としていただくことが出来た。
命はありがたいなあとしみじみした。


終わりに
豚の胃壁であるガツもめっちゃおいしい!!
茹でて、キッチンバサミで小さめに切って、
ポン酢と白髪ネギと食べるだけ!!!
シンプルな作り、シンプルな味付けだけど抜群においしい。

居酒屋などで提供しているところも少なくないけど、
食べたことなかったな…という人はぜひ試してほしい。
生活をおいしくするのはちょっとした非日常の繰り返し。

ありがとうございました。

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