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2023年の9月を振り返る

早いね。もう9月も終わるね。光陰矢の如しとは本当によく言ったものです。

ちなみに光陰矢の如しって出典は定かではないけど古今和歌集に『梓弓 春たちしより 年月の いるがごとくも 思ほゆるかな』という歌がおさめられていて、意味合いが似てるのね。

ってことはこの感覚は平安時代から変わっていないというか、1000年ぐらい前から令和の世までわれわれ日本人が脈々と受け継いできたステキなサムシングなわけ?

いまステキと書きました。

わたしはステキと書く度に、六本木のコピーブティックのボスを思い出す。

あれは東急沿線新聞のコラム「あらかると」のコピーチェックを依頼したとき。拙いわたしの原稿に「素敵」と書いてあるのを見つけたボスは烈火の如く怒りました。

「いいかバカヤロー!素敵なんて漢字使うんじゃねえ!素敵はひらがなかカタカナにするんだバカヤロー!」

話をバカヤローで挟むとはこれいかに。景山民夫著の『トラブルバスター』に登場する関東テレビの田所部長以外でバカヤローのサンドイッチを使うのはボスだけでした。

「あの、しゃ、社長、な、なぜですか?」

「なぜだぁ?バカヤロー、ゴミ虫野郎にしちゃ珍しく頭が回ってんじゃねえか。一回しか言わねえからよく聞けよ、このお前のミミズが這いつくばったような字を見てみろ!

素敵

ってまったく偉そうに漢字で書きゃあテメエの低脳ぶりも誤魔化せるとおもったんだろうがよ、この俺には通用しねえんだよ。なんだよこの敵ってのは、ええ?敵だなんてちっともステキじゃねえじゃねえかよ、このスカタン!まったくこれだから田舎もんの学歴なしはよ、字面のセンスってもんもねえのかよバカヤロー!」

言葉は悪いし、暴力も振るうのですが、このボスにひっついて3年間。最後は夜逃げしましたが、55歳になるまで一応文章を書く仕事で喰えているのはボスのおかげだと思います。

最近仕事中も首っぴきのこの本を読むと、そのことをしみじみと。

一家に一冊。一社に一冊。一人に一冊

しみじみとしたところで9月を振り返ってまいりましょう。


Xを捨てよ書を読もう

9月は通勤時間を読書に充てました。これ、結構意識的にやらないとつい、ね。りんかい線の状況とか、渋谷の駅の様子とか、エックスしたくなっちゃうんですけど。

そんなムクムクと湧いてくるエックス・ドラッグ・ロックンロールをグッとこらえて、遅読派の自分にしてはたくさん読んだよ。備忘録も兼ねて記しておきましょう。

創始者たちーイーロン・マスク、ピーターティールと世界一のリスクテイカーたちの薄氷の伝説/ジミー・ソニ著 櫻井祐子訳

実はこの本、読み始めたのは7月の半ば。だけど653ページだけあってなかなか進まなかったんです。ただでさえ本を読むのが遅い上に、通勤の行き帰りだけでは細切れで、しかも登場人物が全員外国人かつ大量に出てくる始末。

おかげで10ページ進んだと思ったら26ページ戻ることになったり、の繰り返しで、ようやく9月に入って読了しました。

内容は、面白かったです(雑)。わたしのクライアントの9割がスタートアップなので、ものすごく通じるところがあり、また学びにもなり。イーロン・マスクが「X」にここまでこだわるのもうなづけます。

起業とかスタートアップに興味ある方は必読。

教養を磨く 宇宙論、歴史観から話術、人間力まで/田坂広志著

田坂さん、昔っから好きなんですよね。あ、昔といってもビジネス戦士だった頃だから25年ぐらい前かな。

行間がめっちゃ空いてて、ページ数の割にスッと読み終えることができるのと、短い文章の中にサムライ魂をくすぐる一言半句があるんです。

ページをめくれば懐かしい、いつもの田坂節。今回もグッとくるエピソードの数々です。田坂さんの本を読むと無性に営業がやりたくなります。

物語思考 「やりたいこと」が見つからなくて悩む人のキャリア設計術/けんすう著

けんすうさんはロケットスタートでいつもがんばっている頃からウオッチしている不思議な人。

起業家なんだけど、なんか事業欲とか、ビジネスの匂いがあんましないんですよね。投資家なのかもだけどお金臭さもない。インターネットが大好きな頭のいいお兄さんって感じです。

頭がいいので、わたしのような凡人がのらくらモヤモヤ考えていることにスッと答えらしきものを出してくれたりして。なので彼の「アル研究所」に毎月課金してます。

この本も迷えるヤングに向けて書かれているんですけど、要所要所でわたしのような茫漠と生きてきた人間にとっても「おお、そうか」と学びになることがあります。

息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。/幡野広志著

写真集のような、エッセイ集のような。でも不思議じゃない。一編ごとのテーマも含めて本ぜんたいで見事に調和のとれた一冊。ずっとそばに置いて、時折パラパラとページを捲って楽しみたい。

未必のマクベス/早瀬耕著

帯に珍しく書評が書かれている。今年の1月19日に亡くなった目黒考二さんのペンネーム「北上次郎」名義での書評。

そこには「これほど素晴らしい小説はそうあるものではない」とあります。ふだんならこの手の惹句にはひっかからないわたし(なぜならこの手の惹句を考えるのがわたしの仕事だから)。

だけどある晴れた9月の日曜日、上野大統領で飲んだ帰り、交通会館の三省堂で目黒さんに誘われるかのように手にしました。

これほど素晴らしい小説はそうあるものではない。本当にその通りでした。著者の早瀬さんは1967年生まれだから一つ上。俺は作家じゃなくて本当によかった。もし同業だったら嫉妬に狂って筆を折るね。

それぐらい面白い小説です。

日本のサカモト 別冊ele-king  坂本龍一追悼号

これはもう、何も言えません。わたしが子供の頃から私淑していた音楽評論家の北中正和さんが一時期教授と疎遠だったとか、いろんなことが見つかるムックです。


渋谷駅で見かけるおかしな人

本の紹介だけでだいぶ長くなってしまったので手短に。

最近、やたらおかしな挙動の人を渋谷駅で見かけるようになった。いや、もしかしたらおかしいのは自分で、実はそっちの方が常識なのかもしれない。つまりおかしいと思っているのは自分だけで第三者から見れば「別に…」というサワジリスティックな感想に終わるだけのことかもしれません。

なのでちょっと、2、3例書いてみることにする。

①スマートウオッチゲート突破人

ほらよくあるじゃない、アッ⚪︎ルウオッチとかさ、いろんな機能がついている腕時計。渋谷のベンチャー界隈ではもはや珍しさもなく、むしろわたしのROLEX AirKingのほうがグルッと回って新しさを感じるぐらい。

まあそんな新しものが好きな人は好きでいいんですけど、ここんところあの時計にSuicaとかPASMOを仕込んでいる人っているでしょう。

そういう人って改札通るとき、妙に無理な態勢になるんですよね。

ほら、右利きの人って左手首に時計をしますよね。だけど大抵の改札機は右にセンサーが付いているから、左腕をむりやり右側に捻りつつ、上腕をぐるっと下に向けないといけない。あの不自然さって人間工学に基づいていないところから生まれるわけ。人間工学、エルゴノミクスね。アベノミクスじゃないのね。

そうするとどうなるかっていうと、結構な確率でエラーになるんです。つまり「カード読み取り不可」もう一回やり直せって。

だけど彼らは絶対にやり直さない。閉じかけたゲートを無理くり突破していくんです。自分は悪くない。悪いのはApple Watchだ。ジョブズだ。と言わんばかりに。

おかげでとばっちりを喰らうのは後続の人。ゲートは閉じるわ、もう一回タッチとか言われるわ。さらに後ろの人から「チッ」と舌打ちされたりして。そしてなぜか結構な頻度でこの後続の人になりがちなのが、わたしなのでした。チッ。

②降りる人が先なのに

これはわたしがせんだってXにて問題提起をしたのですが、したのですがまるで賛同を得られなかった問題でした。なぜだろう、と思ってあらためてXを確認すると「下書き」に入っていたんですね。そりゃ得られないでしょうよ、賛同。

渋谷駅から埼京線川越行きを利用する40代50代のサラリーマン諸氏よ。電車は降りる人が先って小学校で習わなかったかい?あんたらがドアの正面に突っ立ってる限り俺は会社に行けないし、あんたらも永遠に渋谷駅から出られないぜ。

と、いうことです。今日も渋谷駅三番ホームでは静かな攻防戦が繰り広げられているのでありました。


がんばれ日本!

8月末から9月の頭にかけてバスケットボールのW杯がありました。いや、すごかった。世界の強豪を相手にめちゃくちゃいい試合ばかり。ふだんスポーツ観戦は相撲と競馬のみというわたしもさすがにテレビに齧り付いていました。

渡邊も河村もすごいし、比江島にはもう何もいうことないけれど、個人的に応援していたのは富永でした。彼のスリーはマジ芸術的です。同じ名古屋出身ですし、これからも推していこうと決めました。

そしてせんだって、惜しくもパリへのチケットを今回獲得することは叶わなかったのですが女子バレーのW杯がありました。わたしはこう見えて小学生の頃から女子バレーをうっすらチェックし続けてきた(変態にあらず)者ですが、今年の全日本女子は強かった。はっきりいって例年とはまるで別人種かってぐらい強い。

そのことについて書きはじめると5000字を軽く超えそうなので、9月の振り返りではここまで。ただし、一つ不思議に思っていることを最後に。

いったい日本のスポーツ選手、あるいはチームはいつからこんなに世界と互角に戦えるようになったのか。野球しかり、サッカーしかり、バスケしかり、バレーしかり。その辺について思い込みと妄想を今度したためてみます。


ここ数日、ようやく暑さもひと段落。とはいえ9月なのに全然秋めいていないし、明日は猛暑日だなんて予報も出ているぐらいです。

どぉなっちゃってんだよは岡村靖幸ですが今年も残り3ヶ月。いつも拙noteを読んでくださっているキトクなみなさまに、どうかいいことがたくさんたくさんありますように。

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