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リモート会議で使いたいカタカナ語

通になりたい。

その道を極めた、至高の極みに立ちたい。

そういったヨコシマな思いを持つのが人間という生き物です。ヨコシマなデイドリーム。投げやりなアイロニー。ヨコハマじゃいま。「わがままジュリエット」が思わず脳内再生された挙げ句違う歌にすり替わります。

そんな通ぶりたい欲望が言葉に憑依したのが専門用語たち。なかでもカタカナ語の持つえもいわれぬ優越感。これに抗えるマインドの持ち主はそうはいません。そしてそれはビジネスの現場にも如実にあらわれます。

アジェンダ、マター、アグリー、コモンセンス、ナムサンダイボサツ、コンセンサス、アサイン、アライアンス、アセット、イニシアチブ、オーソライズ、シュリンク、ジャストアイデア、ダイバーシティ、ナムサンダイボサツ、マイルストーン、ローンチ、ユーザーエクスペリエンス、ジョイン、パーパス、ベネフィット、ナムサンダイボサツ、パーミッション、フィックス、バジェット、ナレッジ、ドライブ、カスタマージャーニーマップ、フィジビリティ、ナムサンダイボサツ……

このあたりのキーワードを巧みに散らして会話を交わせば、一人前の渋谷なんちゃってベンチャーのメンバー。なんなら取締役。もしかしたら代表取締役。場合によっちゃあ顧問。なんだ顧問て。

白シャツにジャケット、ピチッとしたタイトパンツにルコックでキメて百軒店をムーンウォークすればとりかつチキンのおばちゃんに挨拶される、そんなエキサイティングでバイオレンスな日々。

もちろんこのnoteをわざわざ読んでくださる良識に富んだ皆様はこういった風潮に「やれやれ…」と行き場のないハルキズムに浸っておられることでしょう。

否!イナックス!!

同士よ。武器を持て。武装蜂起せよ。

リモート会議が一般化したいまこそチャラいカタカナビジネス用語をまくしたてる連中に正義の鉄槌を下すとき!

そこで今回はリモート会議で使うと間違いなく相手が「はてな?」となるカタカナ用語をご紹介します。

さあ、あなたもこれらのカタカナ用語を使いこなしてペラッペラなビジネスパースンを駆逐してやりましょう!

シンコペーション

【使用例】
部下「ここの数字の伸びがいまひとつですね」
貴殿「あ、そこは大丈夫。シンコペするから」
部下「え?」
貴殿「シンコペーションだから大丈夫だよ」

もともとは音楽用語で、強拍と弱拍を入れ替えて独特の効果を…と書いてもよくわかりませんよね。ようは「食う」ってことなんですが。

こちらの動画がわかりやすいかと。こういうやつです。で、なんでこんなフレーズをビジネスの会議で使うのか、というとおかしいからです。

おかしいんですがリモートで、PCのディスプレイ越しに言われると一瞬あれ?音声途切れたのかな?電波状況悪いのかな?と意識の高いビジネスパーソンたちは矢印を自分に向けます。なぜならトラブルが起きたときは必ず矢印を自分に向けよとビジネス書に書いてあるからです。

そんな、小首をかしげている連中を画面越しであざわらうかのようにあなたは堂々と、再び口にします。「シンコペーションだよね」と。

そ、そうですね、と場の空気に耐えきれなくなったヤングビジネスパーソンが折れた瞬間、あなたの勝ちです。あとはその会議に参加している連中がそれぞれの持ち場で「シンコペーション」をつかいはじめれば、ユーキャン新語流行語大賞までラストワンマイルです。

ポイントは、最初に使うときにいかにも当然、という空気でシンコペと略すところです。ふだんづかいであることをアピールしましょう。

エメラルド・フロウジョン

【使用例】
部下「次クールの契約は白紙になりそうです」
貴殿「だったらエメラルド・フロウジョンだな」
部下「は?」
貴殿「外注でエメラルド・フロウジョンだ」

三沢光晴の代名詞とも言えるフィニッシュホールド、それがエメラルド・フロウジョンです。正面から相手の身体を両腕で抱きかかえ…といった技の解説を言葉でするより百聞は一見にしかず、です。ご覧ください。

この動画の音声に注目してください。実況のアナ(おそらく古舘?)が絶叫していますよね。ここがこのカタカナ語を繰り出すポイントです。会議では部下や同僚が「泣き」を入れるシーンが必ず出てきます。

いい大人が泣くなんて、と思うヤングはこんなnote読んでないとおもいますが、泣きますよね、大人だって。むしろ泣きますよ。泣き叫びます。サラリーマンという稼業は昭和のうちは気楽でしたが時が流れて令和となったいま、悲哀に満ち溢れた職業です。

その「泣き」が「泣き叫び」から「絶叫」に近づいたとき。

それを察したあなたはすかさず落ち着いたトーンで「エメラルド・フロウジョン」と口にしてください。会議に同席している全員の脳内で三沢光晴の入場曲『スパルタンX』が流れることでしょう。そしてあの緑のロングタイツを思い出し、えもいわれぬ安心感に包まれるはず。

あとのことは若手にまかせて、さっさとリモート会議から退出してしまいましょう。

ササン朝ペルシア

【使用例】
同期A「うちの部長、在宅で太ったそうですよ」
同期B「マジで?ウケる!」
同期A「もうサンチョ・パンサみたいで」
同期B「草生えるな!!」
貴殿「ササン朝ペルシア?」
同期A「いや、サンチョ・パンサ」
貴殿「なんだよササン朝ペルシアって」
同期B「いや…」
貴殿「教えろよ、部長がササン朝ペルシアって何?どゆこと?」
少女A「……」

久しぶりに高校時代の歴史を思い出したのではありませんか?墾田永年私財法と一緒に記憶の隅に追いやっていませんでしたか?そんなインパクトがありながらなんともご無体な扱いをされているのがササン朝ペルシアです。

ご存知の通り、アルデシール1世が226年にパルティア王国を倒して建国したイランの王朝で、ゾロアスター教の…という解説は特に必要ありませんね。単純に言葉の響きだけを楽しんでいただければと思います。

ちなみに「朝」ってカタカナじゃないじゃん!という向きもいらっしゃるかもしれませんがリモート越しにはそんな細かいことはわかりません。あなたがあくまでカタカナ気分で「ササンチョーペルシア」と発音すればよいだけのことです。

使用例からもわかるように、どんなに疑問をはさまれても押し通すところがこのカタカナ語の滋味あふれるところになります。相手が「そんなこといってねえよ」とふてくされてzoomを退出したらあなたの勝ちです。

デ・トマソ・パンテーラ

【使用例】
麗人「今回の件、コンセンサスは取れてるの?」
貴殿「デ・トマソ・パンテーラ」
麗人「どういう意味?」
貴殿「君は下着の趣味がいいねって意味さ」
麗人「まあっ!」

今回の場合、最後の「まあっ!」は貴殿と麗人の関係性によって両極端の意味となります。もし良好な関係であれば(あるいは麗人が貴殿に好意を寄せている)うれし恥ずかし的な、ほほをほんのり染めるような反応でしょうし、その逆の場合はセクシャルハラスメントNo.1でしょう。

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昭和40年代前半生まれの男子ならもれなく憧れたであろう、イタリアとアメリカの合作スーパーカー。それがデ・トマソ・パンテーラであります。排気量5.8リッターの水冷V型8気筒OHVエンジンを搭載。330馬力、トルク45kg-m。エンジンがフォード製だったことからエンスーからは「本物のスポーツカーではない」と揶揄されたことも。

しかしそんなことはどうでもよくなるぐらいカッチョいいスタイリングではありませんか?

そして当時の小学生はその言葉の響きをおもしろがって「パンティーラ、パンティーラ」とうれしそうに連呼していたのでした。小学生男子って本当にバカですね。でもこんな文章書いている時点でぼくなんか40年以上にわたりまったく成長していないのかもしれません。

ちなみにパンテーラ、中古で980万円ですって。

決して買えなくないですよね。億してないわけだから。300万ぐらい頭金つっこんで、残り680万円。男の60回ローンで月12万円ぐらいでしょうか。ボーナス払い併用なら月の支払い10万円に抑えられるかも。

もういっそパンテーラに住民票移して住んじゃう、という漢が一人ぐらいいたっていいじゃない。どうせ一度の人生さ。

■ ■ ■

いかがでしたか?意識高い系(笑)サラリーマンに対抗するには己の意識をいかに低くするか、ということが肝要であるということをお伝えしたかった今回のカタカナ語特集。

ほかにもハレーション、ウェーデルン、バイオレーション、グリーストラップなどビジネスと全く関係ない世界で使われているカタカナ語をもってくれば基本的に同じぐらいの無意味力を発揮することでしょう。

【使用例】
「隣の課の千尋とウチの課長、デキてるって」
「うーわっ!ハレーション起こしてるな!」

【使用例】
「これ以上ひっぱると年度末の予算超えるぞ」
「ああ、バイオレーションだ。撤退しよう」

ね、なんとなく意味わかんないけどそれっぽくないですか?

え?それだと冒頭で誹謗中傷していたチャラリーマンと何ら変わらないんじゃないか?そういわれてみればそうですね。まあ、こんなこと言ったり考えたりラジバンダリの時点で同じ穴のムッちゃんですから、仲良くやるほうがなにかとポジティブですね!

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