2024年の皐月を振り返る
ここ数年の傾向として、楽しい出来事が4月と5月に集中している。
愛犬ヒッチコック(フレンチブルドッグ・牡)の誕生日記念箱根旅行も。
大型連休も。
ひろのぶと株式会社の株主ミーティングも。
パンダリーノも。
すべて4月と5月に行われるイベントである。
今年に関していえばここにスナワチPOP‐UPストアが加わる始末。
楽しいことが波のように打ち寄せては引いていく。そしていま、わたしの両手にはなんともいえない虚脱感が。
わたしの辞書には5月病はない。
その代わりに6月病がある。
かゆいところはありませんか
ぼくはこうみえて表参道と原宿の間にあるサロンに月イチでサンパツに行ってます。ついこないだお邪魔したとき、入店当初から仲良くしているギャルに髪を洗ってもらいました。
「ハヤカワさァん」
「ん?」
「かゆいところはありませんかァ?」
その瞬間。
「いまだ」とおもった。
「いましかない」とすらおもう。
ここでわたしは長年にわたって思い巡らせてきたある事柄について、遂に質問する機会を得たのであります。
「あのさ、かゆいところはありませんか?って聞いてさ、ここがとか、どこを、みたいなこと言う人っていなくない?いないよね?だったら意味なくね?」
業界にはびこる符牒といいますか、思考停止トークが大好きなんです。アパレルショップでいうところの「あ、それボクも色違い持ってます」みたいなやつね。ヘアサロンの「かゆいところがありませんか」もそのひとつ。
「えーっ!っていうかァ、確かにィ!ウケるんだけどォ」
そういいながらギャルはコロコロ笑います。笑ったのち
「でもォ、ゼロじゃないですよォ」
というではないか。わたしはガバっと起き上がり(嘘)「えっ!?いるの?かゆいところ指定してくるヤツ」と思わず詰問調に。
「50年前ならともかくいまどき東京人なんて100%毎日髪洗ってるだろしかも朝シャンなんて言葉が死語になるぐらい洗髪は社会のエチケットとして定着しててそんな都会の人間が頭かゆいなんてありえないはず」
と早口でまくしたてると
「あれですよカラーしたあとのお客様とかですねェ。あと、頭皮って皮膚といっしょだから乾燥肌の人は意外とかゆくなるんですヨォ」
「なるほど…」
「そういうことがあるからァ、聞かないわけにはいかないんですゥ」
5月の学び:かゆいところはありませんか?というサロンの洗髪担当者からの問いかけに、実際にかゆい部分を指定する客は一定存在する
NIMUDEを洗った日
昨年、なかなか仕事がうまくいかず落ち込んでいた時に、原宿で開催された『スナワチPOP-UP STORE』でNIMUDEのジーンズを衝動買いした。
もともと買うつもりはなかったのだが、なんとなく落ち込んでいた気分が変わるかも、と思って試着したら、えもいわれぬ高揚感に包まれたのだ。そういう体験をしたことがなかったのでちょっとびっくりした。
鏡に写ったNIMUDEを履く自分を見て
「うおお…はわわ…こ、これ買いますっ!ください!!」
オーナーはニコニコしながら細身のタイプもあるけど最初のNIMUDEはズドンとしたスタイルのこれがおすすめですネ、と教えてくれた。
そのあとエフレ(Xフレンド)のユーコと居酒屋で乾杯し、愚痴を聞いてもらったらさらにスッキリした。そしてなんと週明けにはそれまでスタックしていた仕事が急にゴールを迎えたのだ。
つまりNIMUDEは俺にとっての仕事の救世主であり、購入以来ほぼ毎日のように履き続けている。
そんなNIMUDEは「洗わないこと」を至上とするデニムブランドなので、わたしもせっせと洗わずに履き続けてきたのだが、ある日、NIMUDEの達人として有名なこれまたエフレのイケダ園長と渋谷の立呑富士屋本店で呑んでいるとき「そろそろ洗ってもいいんじゃないですか」という話になり、それなら購入半年経過する5月に洗うぞと決めたのであった。
“デニムを育てる”という観点からジーンズの洗い方のお作法を研究すると、それはそれは奥が深い。最初の水が肝心だ、という者がいるかと思えば、いや水道水はいけないという者がいる。やはりここは人肌程度に温めたお湯をと口をはさむ者がいて、それならば断じて前夜の風呂の残り湯にすべしと忠告するものがいる…
と、ここまで読んで「おっ、これは仲畑貴志の名作コピー『角÷H2O』だな」とわかるあなたは広告マニアです。
しかし「おっ、これはカレルチャペックの『園芸家12ヶ月』の引用だな」とわかるあなたはさらに上を行く広告ヲタクでしょう。
それはおいといて、ひっくりかえしてボタンを閉めて、ネットにいれて真水で素早く洗ったNIMUDEはどうなったか。
それがあなた、ますます愛着が湧いてくるではありませんか。
いい色になるとか、履きやすくなるとか、ヒゲが、ハチノスが、といった次元を超えて、より一層お気に入りになった。
なんなんこれ!?
育てる服の奥深さ、面白さといおうか。ふつう自動車でも家でも新品から価値が下がっていくものだが、これは時間の経過とともに価値が上がるような気がして。はじめての感覚ですが、とても楽しいのである。
これがいわゆるぼくと一緒に歳をとる服。なんですね。
カレッタ汐留におもう
ある企業のコーポレートメッセージ(最近ではステートメント、などと呼ばれメジャーなクリエイターたちが侵食しにきている領域です)を作成するにあたりここ数年で類似表現がないかチェックするために、汐留のアドミュージアム東京に行きました。
めっちゃひさしぶり。コロナのときは予約制でしたがいまは入場自由です。ぼくは35年前からこの図書館でコピー年鑑や朝日広告賞、毎日広告賞などの関連書物を眺めていました。もちろん35年前は名前も場所も違いましたけどね。
今回もしっかりと収穫があり、またもともとの目的とは違う角度での情報収集もできました。ここにくるといろんな拾い物ができるんですよね。
ひとつ、近年のコピー年鑑を見ていておもったことがあります。それは、最近の広告がつまんないことは中の人たちもわかっているんだな、ということでした。特に50代以上のベテランクリエイターほど、現状に憂いています。警鐘を鳴らしています。
そして、そんなことよりさらに強く激しく警鐘を鳴らさねば!とぼくがおもうのは、そのアドミュージアム東京が入居しているカレッタ汐留の枯れた汐留ぶりです。
何人の人がわかってくれるか自信はありませんが名古屋の栄という繁華街に佇むナディアパークにも負けず劣らずのひっそり閑。ちなみにナディアパークにはあの『LOFT』がメインテナントとして入っていたのですがあまりにも採算があわずに逃げ出した、という逸話があります。
カレッタ汐留も空きテナントスペースだらけ。入口すぐのところに「マツモトキヨシこの奥で営業中!」と大きなポスターが貼ってあるほど。きっとお客さん逃げちゃうんでしょうね。
ちょうど時間としては夕方の5時過ぎだったのですが飲食店にも人気(ひとけ)はなく、あるパスタチェーン店では客数ゼロをいいことにアルバイト連中が客席で寝ているシマツ。
ううむ…大丈夫かこんな東京の都心で、と心配になりました。
心配になった挙げ句にググったらこんな記事が。
昨年の11月にすでに、自分がこの目で見て感じたことが記事化されていました。文春ってとこがアレなんですけど、まあ、ひと記事ごとのライターに罪があるわけではないですし。
記事内容をまとめると立地が悪いのに加えて建築家やデザイナーなどまちづくりに関わるクリエイターたちが人の導線を考えないことが原因である、ということでした。もちろんそこにコロナによるリモワの浸透など、計画時より大幅に人のにぎわいが消滅したことも加わっています。
しかし、わたしはカレッタ問題を拡大解釈し、本当に日本は大丈夫なのか、とますます不安を募らせるのであります。
いま東京にはタワマンが雨後の筍のごとく生まれ、そのどれもが即完売、億クラスの物件も飛ぶように売れているそうです。もちろん日本人以外に海外(主に中国)の富裕層がビシバシ買っている背景もあるでしょう。
でもこの先30年後、50年後、80年後。
それらのタワマンはどうなっているのか。
ナディアパークやカレッタ汐留がじわじわ衰退しているのと同じことが都心部タワマンで起きないとは言い切れませんよね。だからこそナディアやカレッタをなんとか復興させることに知恵を絞るべきではないでしょうか。
誰が?
市長とか都知事とか。
権力持ってて偉い人が。
イベントラッシュの一ヶ月
既に文字数大杉なのでダイジェストで。
◎ひろのぶと株式会社・株主ミーティング
すごかった。あんな株主ミーティング参加したことない。
落語に阿波おどりにお金に関するパネルディスカッション。
終了後、代表取締役の前に握手を求める株主たちの長蛇の列。
なんなん。
面白すぎるやん。
終わったあと株主有志と飲みにいったら「ハヤカワさん思ってたんと違う!」と100回ぐらい言われました。どう思ってたのよ、もうっ。
◎銀座のジャズバーで生演奏
エフレのミチュルル©さんにお誘いいただきジャズバーにライブを観にいきました。お店はこの5月で36年の歴史に幕を閉じる『銀座シグナス』。
この日のステージはCHOCOLAT PLUSというバンド。ドラムの人はオリジナルメンバーと違うようでした。
このバンド、ミチュルル©さんの旧知のグループらしく、事前に恐ろしいほど期待値を上げにきます。ぼくは「まあ、そこまで言うならお手並み拝見」ぐらいの角度で演奏を眺めていましたが最終的に『BLUE GIANT』に出てきがちなジャズクラブの客になりました。つまり宮本大の演奏を最初、懐疑的な態度で耳を傾けているうちに次第に心を奪われる、というアレです。
ちなみに同じくエフレのウエチさんもいて、ウエチさんが前回のライブの時にリクエストした曲(とても難しいナンバー)を披露してくれました。ウエチさんの目に光るものを見つけ、思わずもらい泣きする55歳のオレ。
予定外、想定外の感動は実にサスティナブルであると知った夜でした。
◎パンダリーノ2024
5月26日の日曜日、聖地・渚園キャンプ場にてフィアット・パンダのオーナーミーティング『パンダリーノ2024』が開催されました。
早いもので5年目の参加です。パンダ乗りにはコミュニケーションお化けみたいな人が多くて、ぼくはすっかり陰キャ&コミュ障ぶりを発揮することになってしまいます。
当イベントについては後日レポートします!
と、いうことでサクッと書き終えるはずが盛りだくさんになってしまいました。毎月反省しているのに改善されないとはナニゴトか。反省します。
6月、一年でもっとも鬱陶しい季節がやってきます。
心にも体にもカビを生やさぬよう、ドライモードで過ごしましょう。
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