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気になる符牒

生まれついてのミーハーで、仲間内だけで通じる「符牒」なんてものに非常に興味があります。ただ符牒というと流通小売の世界が中心になるので、もう少し範囲をひろげた「隠語」のほうが正確かもしれません。

東京事変のドラムの刃田さんはよくカウントで「ピン、リャン、ゲタ、ダリ」と鮨屋の符牒を使いますね。ああいうのナイスですね。渋いです。学を感じる。

一方でいわゆるギョーカイ用語というのはあまりいけすかないです。「ツェーマンゲーセン」「アゴアシ付きで」「ケツカッチン」「ザギンでシースー」といったワードを日常生活に散りばめるのは軽薄の極み。腰にパステルカラーのカーデガンを巻いていてもNGです。

最近ではすっかり市民権を得ましたが、ほんの30年ほど前は吉野家にて「つゆだく」「アタマの大盛り」が通じませんでした。

余談ですが知人のウダガワくんが吉野家の店長やってた時、ある禁忌が多い国の方がご来店されて「牛丼並の肉抜きネギ抜きつゆ抜き」を注文していったそうです。世界は広いです。

話を戻します。

やはり符牒、あるいは隠語は本来隠蔽したい言葉の代替であるべきで、これみよがしに声高に語るものではありません。

自分の半生を振り返ると、接客業に携わっていた時代が5年ほどあり、そのときに覚えた隠語はいまだに記憶しています。いくつか紹介しますね。

ネコ…台車
「物置からネコ取ってこい」
「ネコ…いませんでした」
「バカ」

倉庫…トイレ
「倉庫行ってきます」
「営業中なんで困ります」
「バカ」

兄貴…古いネタ
「兄貴から取ってこい」
「どっちも鮪ですよ」
「バカ」

弟…新しいネタ
「あれ?これ弟のほう?」
「一緒ですよ鮪のサクなんて」
「バカ」

ヤマ…品切れ
「鮪ヤマです」
「カワです」
「バカ」

ダボ…二合
「一ノ蔵ダボです」
「ダボダボに注ぐんですか」
「バカ」

ムラチョ…醤油皿
「ムラチョとって」
「ホラッチョってあのショーン…」
「バカ もう許してやれ」

クロモジ…爪楊枝
「クロモジくれる?」
「なんて書きましょうか」
「バカ」

太郎…例のGです
「うわっ!太郎でたぞ」
「次郎は?」
「バカ」

ミッキー…例のRです
「おい、ミッキーいるぞ」
「ミニーも一緒ですか」
「バカ」

いずれもお客様に不快な思いをさせないための用語ばかり…というわけでもなく、日本酒2合をダボだなんて呼ぶのはオーナーが日大ゴルフ部出身だったから、みたいなローカルルールもあったりしました。

あとホールの責任者がスペインかぶれだったときの名残りで数のかぞえかたが「ウノ、ドス、トレス…」でした。これもお客様、特に本職の方々にしょっちゅうからかわれたものです。ドスって兄ちゃん、そんな物騒なもん持ってどないすんねん、みたいに。

そんな陰キャ同然の人生を歩んできたこともあり、いまだに飲食店などにいくとつい店員さん同士の会話に耳をそばだてて、新しい符牒や隠語を収集するのが趣味なのですが…昨年の緊急事態宣言以降、すっかり飲み屋さんに行く機会を失ってしまいました。

符牒収集マニアとしてはガッカリです。残念でなりません。百合子には一日も早く飲食店営業再開の号令をかけてくれよと切に願うばかりです。

でもですね、実は。

ついせんだって、住んでいるマンション1階のコンビニ(しかもヤマザキデイリーストア)でふたりの店員さん(これが名コンビ)が口にしていた符牒をゲットしたんです。それがこちらです!

「な、京浜東北線だったろ?」
「や、まさか京浜東北線とは」
「フフフ」
「まいりましたね」

いったいどういう意味なんだ京浜東北線って!
誰か教えて!

(もちろん直接聞く勇気はありません)

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