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キリヒラ#01 矢野さん~あの先輩に聞く!キャリアを切り拓いた瞬間~「割り切る決断」できりひらいた!


<インタビュアー紹介>

写真左から:板井、森

板井:UNIT1所属の営業職。現在の仕事は、展示会を中心にサポート。趣味は、専らサウナ。
森:UNIT2所属の3Dデザイナー。現在は、カンファレンス・店舗什器などをデザイン。趣味は、アクセサリー作りと怖い話。

新企画”キリヒラ“

板井)新4年目から色々な先輩に「キャリアを切り拓いた瞬間」を取材する、その名も”キリヒラ”企画。
栄えある第一回目は、デザイナーの矢野さんにお話を伺っていきたいと思います!
私は、新人の頃から案件などで沢山お世話になっていますが、もりまい(森さんの愛称)は今回が初?かな。
 
森)ゆっくりお話させていただくのは今回が初めてかな。
ブース提案などの際に、矢野さんの実績や仕事の進め方が上手という話を噂で聞いていて、ずっと一緒にお仕事したいと思っていました!
よろしくお願いいたします!

1.博展に入ったきっかけ

森)それでは、早速ですが「矢野さんのキャリア」について教えてください。博展歴はどのくらいですか?

矢野さん)2008年入社だから…、15年目?かな。歌代さん、原さん、秋山さんなどが同期。と言っても、みんなより社会人になるのは遅くて…
最初学部で学んでいたのは、文学部哲学科で全くデザイナーには関係なく。
ただ演劇部に所属して舞台美術をしていたので、舞台にハマって卒業後に就職せず仲間で劇団をつくって、舞台美術を3年ぐらいやっていた。ただ、そのうち演劇業界のことが少しずつ見えてきて演劇に拘らず、空間づくりのできる会社に就職しようと思いました。

最初は夜間の建築専門学校にも行ったけど、ぶっちゃけ建築の就職は学閥がものをいうことを知った。そこで大学院にいくことをアドバイスされたこともあり、大阪大学の大学院に建築を勉強しに入りました。
その後、新卒として就職活動をしている中で、ディスプレイ業界の存在を知って、博展と出会って入社を決めました。

2.入社当時の博展

森)矢野さんが入社された頃の博展は過酷だった…と聞いたことがあるのですが、実際はどうでしたか?
 
矢野さん)今と比べると組織としての体制も整っていなくて手探りではあったけど、商材がほとんど”展示会ブース”に限られていて、頑張りどころはシンプルだった。1000万越えの大型ブースを受注したら、朝礼で拍手がおこるみたいな感じ。
だから、2~3年目までは小規模のブースのデザインを担当して、その後大きなブースを担当できるなど、その当時のキャリアパスもシンプルだったよね。同期も同じような仕事内容や環境だったから、風通しもよく、誰が何かをやっているというのがすぐに分かったり。
そういう中で、南さん(現クリエイティブディレクター)がやっているような大きな案件に、どうやって入っていけるんだろうと模索していたよね。休憩の合間に、声をかけたりして。
今の若手は、色々な商材や選択肢があるから、また違った大変さがあると思う。

あと、自分は遠回りして博展に入ったから、大学時代にデザインをしっかり学んだ同期メンバーと自分を比べて、割とコンプレックスがあったんだけど、博展は経歴関係なく、学べる環境だったから開き直れた。
何より、就職しないでバイトしながら芝居をやっていた時期を思い出すと、全然マシに感じられて頑張れた。

矢野さんが当時手掛けたブースデザイン

森)自分も、大学院を卒業して入社したので、同期より年上なのと、飲み込みがいい方でもないので、建築学科卒の人に比べて、進捗が遅いなどの悩みがありました。矢野さんも同じような悩みがあったのは、安心しました。笑

矢野さん)博展はそういうことを気にする環境ではなかったのはいいよね。面接でもスーパーゼネコンや住宅メーカーではやっぱり年齢はネガティブに受け取られたけど、博展は面白がってた。笑
博展は、その人の個性を見てくれるところはあるよね。

森)確かに博展の人は、ちゃんと仲間に入れてくれるなと思います。

3.キャリアのターニングポイント

板井)その後は、どのようにキャリアを切り拓いていったんですか?

矢野さん)4~5年目になって、任される案件の規模も大きくなったり、自分らしいデザインが少しづつできるようになっていった。
ただ、6〜8年目くらいになるとブースはジャンルや規模など一通り経験したし、ある程度のレベルが安定して出せるようになってくる。すると、自分が同じレベルで、”消費するデザイン”をアウトプットしてる気持ちになってきて…。

板井)そうなんですね…。がむしゃらに働いていたその頃から、今のようなスタンスになったのはいつ頃ですか?

矢野さん)入社8年目ぐらいに結婚したことと、体調を崩したこと、その2点がターニングポイントになった。

結婚してすぐ、仕事と家庭の両立の壁にぶち当たったんだよね。それまでの自分は好きに時間を使ってなんとかやってこれたんだと気付いた。最初は無理矢理早く帰って、家族の時間を過ごして、それから残った仕事をしていたけどやっぱり無理があって。。
そんな風に環境がガラッと変わってことと重なって、体調を崩したんだよね。

プレゼンとか人前で話すときに、過呼吸みたいな症状が出るようになって。
最初は騙し騙しやってたけど、だんだん誤魔化しようも無くなって。

年次的にも、今までの自分のスタンス的にも弱音みたいで周りに相談できなかったし、自分のデザインを責任持って、直接クライアントに伝えられないデザイナーって、ダメでしょと変に思い込んでて。

そんな時に、皮肉にもドイツのiFデザインアワードを受賞した。
賞は一つの目標だったしすごく嬉しい反面、もっと頑張らねばと気負ってしまい、、、結局2カ月ぐらい仕事を休んだんだよね。

iFデザインアワード2017を受賞したブースデザイン

板井)がむしゃらにやりたくても、やれなくなった?

矢野さん)そう、不可抗力で。苦笑
その時は、もうデザイナーは続けられないと思った。じゃあ会社にとって、自分はどんな価値があるのか、立ち止まって考える時間ができた。

そもそも、自分が価値があると思っている”こだわったデザイン”がどんな価値を産んでいたのか、考えるようになって。

森)私も美大出身なので、いいデザインのものを作れればいいと思いがちです。

矢野さん)それまでの自分にとっては、「いいデザイン=こだわったデザイン」だったし、デザインが表現の場にもなっていた。
でも、クライアントにとっての価値って、突き詰めるとビジネスに還元される価値だし、デザイナーの表現が生み出す価値と重なるとは限らない。
クライアントにとって、博展にとって、自身にとって、全てを満たす価値ってなかなか難しい。

今までの働き方ができないって不可抗力があったから、逆に視野が広がって、「自分がこだわってた価値以外にも、いろんな価値があって、そこに新しいスタンスで貢献できる余地があるんじゃないか」と思えるようになってきた。

森)これまで、会社としてやったことのない案件にアサインされることもあったのですが、結局予算がなかったり、案件がなくなってしまったりして、、、目標達成しなくて、なかなか評価されないということもありました…。

矢野さん)そういうチャレンジに価値はもちろんあるし、決して無駄じゃない。
だけど会社である以上、利益を産まないといけない。チャレンジする価値と、しっかりお金も稼ぐ価値。基本的なことだけどこれってすごく難しい。
これは、飯をくうための仕事(ライスワーク)と、自分のやりたいことをやる仕事(ライフワーク)のバランスの話で。
この二つをしっかり区別して取り組まないといけない、と自分も意識するようになった。
まずは復帰してちゃんと会社として利益を残せる仕事もやりながら、自分のやりたいことをやれるように模索していこうって。。

森)その区別って難しくないですか?

矢野さん)区別するっていうとネガティブに聞こえるけど、良い意味でしっかり割り切っていくことが大事だと思う。

仕事に復帰したあとに、営業メンバーが直接、外部のデザイナー(博展が提携している社外のパートナー)へ仕事を依頼する際の管理やフォローをする担当になったんだけど、そこで求められているのはコンペに勝てるデザインをディレクションすること。

決して俺が納得するこだわったデザインを、外部のデザイナーに求める必要はなくて。もちろんデザイナーとして、あがってきたデザインに注文はつけたくなる。
だけど、博展として提案が通るデザインか、プロジェクトの進行がしやすいものか、最終的にちゃんと利益が残せるか、その観点を満たしていたら、それ以上にデザインにこだわりたい、という気持ちはしっかり割り切るべき。

デザインにこだわることで、利益が下がったり、進行が複雑になって工数がかかったりする。ライスワークのためのデザインをオーダーされているんだと、しっかり認識してこの業務には取り組んでました。

面白いのは、営業の皆からは、デザイナー時代よりパートナーディレクションしていた時代の方が感謝されるようになりました。笑
改めて、自分がデザイナーをやっていた頃、自分がこだわるあまり、営業や制作ディレクターの人たちがすごく譲ってくれてたんだなと実感しました。
俺にとってのライフワークが、他のメンバーにとってはライスワークかもしれないし。苦笑

板井さん)矢野さんのポジションがあることで、営業として大変ありがたいです!
それこそ、若手営業がどうやって社外のデザイナーさんに依頼するのか右も左もわからず、、、その頃から矢野さんには頼りっぱなしです。

4.仕事への向き合い方

森)いいデザインが必ずしも、コンペで勝てるわけではないですよね。クライアントがついていけなければ採用されない。その塩梅が難しいです。

矢野さん)若手のうちは、何でもできるようになった方がいいと思うよ。
自分のこだわり全開のデザインもあれば、プロジェクトがスムーズに進められるようなデザインもやってみて、ヒキダシを増やしていった方がいい。
かっこいいデザインしか描けないデザイナーって人材として不便じゃない?

森)どうやってヒキダシを増やしていったんですか?

矢野さん)若手の頃に、大規模な主催プロジェクトにアサインされたときに、最初はどこまでデザインしたらいいかのさじ加減が分からなくて、、、でも、営業の人からは、クライアントはそこまでのことを求ていないと言われて。

こだわったコンセプトやデザインが必要じゃないケースもある。運営を充実させたり、単にコストメリットで受注する案件だってある。あえてデザインを抑えて、プロジェクト全体の効率を上げることも、一つのクリエイティブだと思うし、そういう経験は沢山積んだ方いい。

そして、自分が面白そうだと思う案件には、自ら手をあげてチャレンジすることもやっていかないといけないと思う。

どっちかだけではなく、どちらもできるように。

一見デザイン要素の少ない案件を数多く担当したことで得た経験が、外部のデザイナーのディレクションのときに活きてくる。営業、デザイナー、製作、みんなにとって効率の良い最短距離のデザインは、そういう経験がないとディレクションできない。

森)他の先輩が「矢野さんは仕事の進め方がうまい」と言っていたのも納得です…!

板井)ところで、今はパートナー管理から離れて、展示会事業部に所属されていますよね?

矢野さん)一度は自分で手を動かしてデザインすることから離れていました。けど、去年から展示会事業部ができて、いかに効率的に設計をするかという仕組みづくりの部分で会社に貢献したいと、パートナー管理をする部門から異動したんだよね。

そして、その部分で仕事の時間を圧縮することで生まれる余力の部分で、また自分がデザイナーとしてこだわってデザインする機会も少しずつ増やしてきている。

今は、効率的なデザインとこだわったデザイン、その両極端なことを両立できるデザイナーを目指してます。それが組織にとっても、自分にとっても、いちばん価値があるんじゃないかなと思っています。

一人ひとりのデザイナーが、ライスワークとライフワークを意識して取り組めば、博展はもっと燃費のいい組織になると思う。

こだわったデザインの案件だけが、価値のあるクリエイティブじゃないし、それだけで会社は成立しない。それを自分事として実感するのは若手には難しいかもですが、伝えたいです。

森)私はアーティスト気質の先輩の下につくことが多くて。楽しいことは楽しいんですが、会社として大丈夫かな…という想いはずっとあって。
矢野さんのような、会社としての利益を求めながら、やりたい仕事もやるという考えが新鮮で、もっとお話を聞きたいです!

矢野さん)それぞれの先輩のいいところ、悪いところをみて、エッセンスを抜き出して、参考にしたらいいと思う。

森)いいデザインだったら、時間や休日関係なく、没頭するような風土があったので、このテンションで長く続けるのは厳しいと思っていました…。うまく付き合っていく、という考え方の人もいるということは安心しました。

矢野さん)ニュアンスは難しいけれど、うまくやるときと、腹をくくってやるときはやるというメリハリが大事だと思う。

自分がどういうライフスタイルや、キャリアを望むのか。10年後に、どうなっていたいのかを考えて、仕事と向き合っていった方がいいと思うよ。
でも同時に、若手の頃にはバカになってある程度がむしゃらになって働く時期も必要だと思う。
最初からあれこれ計算高くやっていると、中途半端で何も手に入らないということになりかねないと思う。

自分も体調を崩したときに、デザイナーとしてのキャリアは終わったと思ったけど、会社からこういう仕事もあるからそこでデザイナーとしての経験を活かせばいいと、ちがうキャリアを打診してもらった。

デザインだけじゃなく、育成とかレビューとか他の取り組みが、自分が思っていた以上に評価してもらえていたんだとその時気付いて。そういうのが貯金になって、思わぬところで新しいキャリアをひらいてくれたりするから。

ーーありがとうございました!


取材を終えて

今回、矢野さんの仕事に対する向き合い方をお聞きすることができ、新しい視点を知ることができました!目の前のことだけでなく、自分の立ち位置を客観的にみてコントロールできる立ち回りができるように意識していきたいと思います!
矢野さん、お時間いただきありがとうございました!悩んだときは、またご相談させてください!


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