『対人距離がわからない ――どうしてあの人はうまくいくのか?』

『対人距離がわからない ――どうしてあの人はうまくいくのか?』

著者:岡田尊司

出版社:筑摩書房(ちくま新書)

発行年:2018年6月10日

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 内容紹介より。

 人には、それぞれのほどよい対人距離があり、それはパーソナリティ、愛着スタイル、感覚特性、発達特性などにより決まる。中には初対面でもすぐ親密になれる人や、親密さをうまく演出し利用する人もいる。親密になる技術や偽りの親密さから身を守るスキルは、社会適応と成功に今や必須だ。幸福な人間関係を築き、安全基地を手に入れるために欠かせない技術を臨床データとともに解き明かす。

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 タイトルがまず良いです。私もそう思います。対人距離があまり分かりません。今いる職場は、今のところうまくいっているような気がします。(たぶん。)あと、初対面なのに急に距離を詰めてくる人は、どちらかといえば苦手です。そう思う反面、こんな自分に構ってくれてありがとうという気持ちも若干あったりします。感情って複雑です。さて、本書では、アメリカ精神医学会の診断基準DSM-Ⅳとやらに基づいた10個のパーソナリティ・タイプに沿って話が続きます。

〇遠い対人距離を好むタイプ→回避性パーソナリティ/妄想性パーソナリティ/シソイドパーソナリティ/失調型パーソナリティ/強迫性パーソナリティ

〇近い対人距離を好むタイプ→演技性パーソナリティ/依存性パーソナリティ/境界性パーソナリティ/自己愛性パーソナリティ/反社会性パーソナリティ

 という具合です。『パーソナリティ障害』(PHP新書)では更に詳しく掘り下げているようなので、近いうちに読んでみようと思います。

 このなかで、演技性パーソナリティの特性が印象的でした。〈芝居がかった振る舞いや性的な魅力によって、注目や関心を惹きつけようとするタイプで、人目を惹く格好をしたり、本当のような嘘をついたり、悲劇のヒロインに自分を仕立て上げたりすることもある。対人距離が過度に近く、初対面なのに、馴れ馴れしく接近してきたり、ボディ・コンタクトをとろうとしたりする。〉(p.25)もはや私の固定化された交友関係のなかには、こういうタイプの人はいないと思われますが、時々そういう方とは何回か外部でお会いしているような気がします。昔は、何かしらのイベントとかで……。最近は友人の知り合いなどが……。もしくは私が気づいていないだけで、身近にそういうタイプの人間が存在しているのか? そういう自分も演技性の一面を持っているんじゃないのか? 何だか分からなくなってきました。

 また、この箇所を読んで心の中で「ひゃー」と震えました。〈演技性の人は、愛着の性質を知り尽くし、それを巧みに活用する。つまり本当に愛着しているかどうかはともかく、愛着したように振る舞うことで、相手に愛着を感じさせ、対人距離を縮めてしまう。その場合に、彼らがよく用いる手法の一つが、アイコンタクトやボディタッチを積極的に行うということである。〉〈アイコンタクトは、視線と視線がふれあうだけなのだが、スキンシップと同じように愛着システムを活性化し、愛着ホルモンのオキトシンの分泌を活性にする。つまり、目を見つめ合うだけで、親密さや好意が生まれやすいのだ。〉(p.148)ここだけ切り抜くと、ナンパ術っぽい感じがしてしまう……。それは私のせいです。アイコンタクトって私が思っていた以上の効果があることに驚きました。

 本書を読み終えた後、思わずため息がでました。冒頭で書いた初対面に距離を詰めてくるような人たちが、究極的に言うと、社会でうまくやっていたり成功していたりしているタイプなんだなあと思ったからです。ただ、いわゆる安全基地になってくれている方がいるいま、〈ずる賢く、自分勝手な人たちから身を守るとともに、幸福な人生を支えてくれる身近な関係〉(p.200)を大切にしてきたいと切に思いました。

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