『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』

『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』

著者:若林正恭

出版社:文藝春秋 (文春文庫)

発行年:2020年10月10日

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 私はオードリーのオールナイトニッポンが大好きです。お二人のラジオが、私の生活の一部になっています。去年の武道館はライブビューイングで、お二人の雄姿を見て感動しました。と言っても初回から聴いているヘビーリスナーではなく、はっきりとは覚えていないのですが、おそらく本格的に聴き出したのは2014年頃だったと思います。なぜなら、2014年9月に東京国際フォーラムで開催されたイベント「ニッポン放送開局60周年記念 オードリーのオールナイトニッポン5周年記念 史上最大のショーパブ祭り」を一人で観に行ったことは鮮烈に覚えているからです。その時、初めてオードリーを生で見られたので興奮しました。ただ、ほぼ最後尾といっていいくらいの席に座っていたので、かなり遠目からの初体験でしたが。それに、深夜に起きているのは得意ではなかったので、radikoの使い勝手が良いことに気づくまでは、聴けたり聴けなかったりという感じでした。(いつからスマートフォンでradikoを聴いていたのだろう……)そんなこんなで振り返ってみると、社会人1、2年目で毎週必ず聴き始めたことになります。その頃は、学生時代にうっすら感じていた生きづらさが、社会に放り込まれてより一層強く感じていた時でした。(今でも不定期にそういう不安が襲いかかってきますが。)そんなしんどい時期に、オードリーのラジオを聴くことで何だか精神的に楽になって、なんとか仕事を続けていこうと思うようになりました。それから、約7年経ちました。これから先もずっとこのラジオだけは聴いていくだろうという謎の自信があります。長く聴いていたい。それが一リスナーの勝手な願いです。

 と、まあ、回顧はこれくらいにします。何が言いたいかというと、ラジオでキューバ・モンゴル・アイスランドのトークはばっちし聴いていますよ、ということです。自分の立ち位置を再確認したところで……そろそろ本書の感想へと移行していきます。本書は、2017年にKADOKAWAで発売された『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』が文藝春秋で文庫化されたものです。単行本が発売されてすぐ買って読み始めたとき、最初はキューバの旅行記だと思っていたので「キューバ気になるなあ」「若林さんの旅行のプランすごい練られているなあ」と読み進めていたのですが、気づいたら若林さんのやわらかい部分が垣間見えるような展開になり、少しうろたえたのを覚えています。あれから三年が経ち、文庫として刊行されるというニュースをネットで見たとき、これは買わないわけないだろ、と強く思いました。今日書店で買って、すぐ読みました。まずは「キューバ」。今年、金スマのオードリーが特集された回で、若林さんとお父さんとのエピソードが長尺で描かれていたのを観たので、単行本のときより感情移入してしまうだろうなあ、と先回りした考えが頭に浮かんだりしました。その考えを頭から追い出し、まず当時の若林さんの思考からキューバで経験したことを、一個ずつ噛みしめながら追体験していきました。キューバの写真もあって嬉しいつくりです。現地の空気感がほんの少しだけ感じられます。ガイドブックに載っているきれいな写真も好きですが、若林さんが撮った写真も好きだなあと思いました。ちょっと感傷的になってしまったので、読書を一回中断しました。

 文庫化される際、「モンゴル」「アイスランド」「あとがき コロナ後の東京」が新章として追加されました。また、生粋のオードリーのANNヘビーリスナーであるCreepy NutsのDJ松永さんが解説を書かれています。それらの情報をニュースで見たとき、「モンゴル」と「アイスランド」は若林さんがインスタグラムで書いたエッセイに加筆修正したものかなー、と考えました。でも、それらは読んだはずなのに、すでに内容がうろ覚えだったので、今回ちゃんと書籍になって再び読むことができて良かったなとも思いました。実際現地に行ってみたい欲も出てきました。「あとがき コロナ後の東京」は、あとがきのボリュームではないページ数で読みごたえがありました。若林さんの一つの「確信」に、強い意志を感じ取れました。また、今にして思えばCreepy Nutsを知ったのがオードリーのラジオからだったような気がします。(そのきっかけがなかったら、渋谷のライブハウスで飛び跳ねたりしていなかったと思います。)DJ松永さんのラジオ愛、オードリー愛は度々ラジオや対談で熱をもってお話しされているので、どんな解説を書いたのだろうと、すごい興味がありました。実際読んでみると、私のハードルを軽々とこえていく、すばらしいメッセージが書かれていました。少し泣きそうになりました。Creepy Nutsにも出会えて良かったなと、すごい感じました。リスナー補正を差し引いても、中途半端な解説文より数億倍良いと思いました。

 他にもいろいろ書きたいことがありますが、熱を込めた感想文を冷やしたくないので、ここらへんで一旦終えます。


 今夜も、お二人のラジオがとても楽しみです!

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