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『南極点のピアピア動画』

『南極点のピアピア動画』

著者:野尻抱介
出版社:早川書房(ハヤカワ文庫)
発行年:2012年2月25日

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(内容紹介)
 日本の次期月探査計画に関わっていた大学院生・蓮見省一の夢は、彗星が月面に衝突した瞬間に潰え恋人の奈美までが彼のもとを去った。省一はただ、奈美への愛をボーカロイドの小隅レイに歌わせ、ピアピア動画にアップロードするしかなかった。しかし、月からの放出物が地球に双極ジェットを形成することが判明、ピアピア技術部による”宇宙男プロジェクト”が開始される――ネットと宇宙開発の未来を描く4篇収録の連作集
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 本書を読み終えて漠然と感じたのは、ニュアンスが難しいのですが、どことなく牧歌的な空気感があった頃のネットの住人たちを見ているようで何だか懐かしいなあ、と。とはいえ、ニコニコ動画の黎明期に参加していたわけではなく、電車男もドラマ化されて知ったくらいのネットユーザーなのですが、このおもしろいことを追求する躍動感が、「冷笑」や「炎上」などがまだ表層的にあまり出てきていない頃を思い出しました。それと同時に、私は大学生の頃にとてもはまったツイッターに一定の距離を開けている現状を再確認しました。
 最終章の「星間文明とピアピア動画」を読み終えた後、「こういうことが現実になったら面白いな」と楽しんだ半面、(誤読かもですが)彼女がいわゆるGAFAみたいな存在に置きかえてみると……とも思うと、本書で提示したSFとしての展開がすでに達成されているとも考えてしまいました。

 ちなみに何気なくカバーをはずしたら、サイン本でした。見逃すところでした。9年前にタイムスリップ。

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