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続編がリリース間近なので『Deadly Premonition』の魅力を知ってほしい

※この文章は、某所のゲームライター募集にエントリーするために書かれたものです。このとき取り上げたゲーム『Deadly Premonition』を改めて紹介する良き頃合いとなりましたので、細部を手直しした上で公開いたします。

『レッドシーズプロファイル』、または『Deadly Premonition』というゲームをご存知でしょうか?

このゲームは2010年にPlayStation 3及びXbox 360用ソフトとして発売。このときの日本版のゲームタイトルが『レッドシーズプロファイル』、そして海外でのタイトルが『Deadly Premonition』でした。

その後、完全版の発売時、日本でのタイトルも『Deadly Premonition』に統一。2019年には『Deadly Premonition Origins』のタイトルでNintendo Switchにも移植されています。

物語の舞台は、アメリカ北部の田舎町・グリーンベイル。FBI捜査官のフランシス・ヨーク・モーガンを操作して、この町で起きた猟奇殺人事件の真相を暴くのが、ゲームの目的です。しかしただ町の住人たちに聞き込み調査をすればよいわけではなありません。事件にゆかりのある場所は怪物が出現するダンジョンになっており、ここでヨークは事件の真相を掴むため、体を張って怪物たちを倒すことに。夢かうつつか、その境界が曖昧になるような不思議な展開の数々が胸をざわつかせます。

ちなみに、この舞台設定からは意外に思われるかもしれませんが、開発を担当したのはアクセスゲームズという日本の企業。れっきとした国産ゲームなのです。

グリーンベイルの町は広大なオープンワールドになっており、プレイヤーは自由に散策しながら、捜査を進めていきます。グラフィックはオリジナル版発売当時の水準から見てもお世辞にも美麗とはいえませんが、片田舎としての実在感や、住人たちの生活感などを総合した独特の「空気感」はたいへん味わい深いものになっています。

そしてこのゲームの最大の魅力はあまりにクセが強いキャラクターたち。町の住人もちょっとした脇役までほとんどが印象深い変人ながら、いちばん強烈なのは主人公であるヨークその人。彼は捜査中、気になることがあると自分の中にいるもうひとりの人格、「ザック」に頻繁に話しかけます。車の運転中も、カルト映画の薀蓄をザックに向かって延々と語ることがしばしば。傍から見れば独り言が過剰気味な危ない人物にしか見えません。

また、捜査を共に行う保安官との食事中、過去に関わった猟奇殺人事件の内容を詳細に語り出す(普通の感覚ならば吐き気をもよおすようなグロテスクな内容)など、一般的な感性とのズレを自覚できていないような描写も強烈。ヨークの“一見クールに見えて作中いちばんの奇人”という可笑しさに、プレイヤーはいつしか、次はどんな言動が飛び出すのかと夢中になってしまうことでしょう。

前述のとおり他のキャラクターもほぼ変人なので、ひとたび会話が始まったときの着地点は、誰にも予測できません。加えて、珍妙な会話のテンポ、脱力感を誘うサウンドトラックなども、本作の体験の唯一無二性に大きく貢献しています。

戦闘が爽快感に欠ける、グラフィックも操作性も前時代的、ゲームプレイが間延びしているなど、たくさんの欠点を指摘されながら、オンリーワンな魅力で世界中にコアなファンが存在するこの『Deadly Premonition』。メディアの評価も真っ二つに割れており、その賛否両論ぶりは「最も評価の割れたサバイバルホラーゲーム」としてギネスブックに登録されたほど。

筆者もそんな本作の虜になったファンのひとり。続編『Deadly Premonition 2:A Blessing in Disguise』がNintendo Switch用ソフトとして発売されることがNintendo Directで発表されたときは、思わず声を上げてガッツポーズをしてしまいました。

個人的にはSwitchへの移植、そして2020年7月10日の続編発売を機に、任天堂タイトルのファンにこそプレイしてほしいゲームです。任天堂は「誰がプレイ(操作)しても間違いなく楽しい」ゲームをたくさんリリースしています。一方『Deadly Premonition』は「プレイ(操作)していて楽しい」とは言い難く、それでいてその他の部分で人気を博しているゲーム。

「楽しい」「つまらない」以外の評価軸によって支持される本作をプレイすることは、きっとあなたのゲームに対する感性を、より豊かなものにしてくれることでしょう。

追記(2020/8/12)

Gamer様に続編『Deadly Premonition 2: A Blessing In Disguise』のレビューを寄稿しました。

このnoteと重複する記述もありますが、ゲームを構成する様々な要素をより掘り下げた内容となっています。こちらも読んでいただけると嬉しいです。

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