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2人声劇『最愛の君へ』

最愛の君へ

マイロ
瞳 希久
原案 あのchan

希久(N)キミがここに来たのは…

マイロ(N)僕がここに来たのは…

希久(N)気まぐれな

マイロ(N)夏の日だった

希久(N)君は、私の誕生日と同じ日に、ここに来たね。
物珍しそうに私の家を見て、家の中を走り回ってた。

マイロ(N)僕は、君の誕生日の日にこの家に来たんだね。
新しいお家はすごく広くて、見て回るのが楽しかったなぁ

希久(N)青空、夕立、台風、そしてまた青空…ころころと変わる天気の夏、君は泥だらけになりながら、はしゃいでいたね。
シャワーで洗い流して拭いてあげる。嫌がるドライヤーで乾かしてあげる、君は満足そうに私に抱っこをせがむ。

マイロ(N)秋になると赤、黄色、緑と色鮮やかな街並みを、一緒にお散歩したね。

希久(N)冬になり雪が降り
「雪を触りに行こうか」
お散歩に誘うと目をキラキラさせながら外に出掛けたね。
雪で少し濡れた体を拭いてあげる、まだまだ嫌がるドライヤーで乾かす。
キミはまた、満足そうに抱っこをせがむ。

マイロ(N)春になると寒かった日は徐々に暖かくなり、街中がピンク色に染まったね。

希久(N)そんな1年を何度も過ごし、キミは成長していって…私も成長して、君に構える日が少なくなっていった。
抱っこをせがむキミの頭を撫でながら抱きしめる。
キミは寂しそうに私を見つめる。

マイロ(N)さらに年を重ねると、キミの帰りは遅くなっていった。
キミの居ない家は静かで寂しくて…でも、キミが帰ってきて僕の頭を撫でながら抱きしめてくれると嬉しかった。
だんだんとキミに会う日が少なくなる…

希久(N)仕事、恋愛、そして…結婚。
キミと過ごす時間が減ってくる…キミから遠い場所に住み始めたから、会えなくなる。
離れてから思い出す…キミの眼差し、匂い、温もり。

マイロ(N)キミに会えなくなってもうどれくらい経つだろう…キミが抱きしめてくれた感触を僕は覚えてる。
目を瞑ると昨日の事のようにキミとの思い出が蘇る。
最近はこの思い出に浸る日が多くなったよ…

希久(N)私とキミが出会った誕生日…キミは少し痩せててゆっくり近付きながら私に抱っこをねだったね。
いっぱいキミを撫でて、抱きしめて、その日は一緒の布団で寝たね。
目を閉じるとキミとの思い出が浮かぶ…キミが来た日、キミと過ごした日々、キミがくれた沢山の思い出…

マイロ(N)朝からずっと眠いな…キミと久々に過ごしたキミの誕生日……いっぱい撫でてくれて、いっぱい抱き締めてくれた。
自分の誕生日なのに、僕をずっと撫でてくれたね……ありがとう。
あぁ…眠いな……目が覚めれば、またキミと遊べるのに。

希久(N)キミと出会った日から、この日は来るとわかってた…でも、もう少し、あと少しで良いからこの限りある時間を過ごさせて…私の横で寝ているキミを撫でながら、涙を流す。

マイロ「たくさんの思い出を、ありがとう」

希久「ありがとう、マイロ」

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