教育の地殻変動(2)

子育てに関する話をしよう。

前回、
・回線格差
・地域格差
・予算格差
の3つの要素が、緊急事態宣言下の各都道府県において、平均学力レベルの変化に影響してきそうだ……という予測について触れた。これを今回から、順に解説していこう。

一つ目の回線格差は、この緊急事態宣言下にあって鬼札と化した「ネットを介した学習手段」の有無についてだ。この重要性を理解するには、まずは学校の外で子供が可能な、学習体型について考えてみるとわかりやすくなる。

現状、登校して学校で学ぶという選択肢が取れない自治体において、子供達が学ぶ方法は大きく5つ。

・通信教育(いわゆるベネッセや公文らの通信教材。高額)
・学習塾(まちまちだが概ね高額、有料)
・教材の購入(ドリルや問題集。比較的安価)
・独学(図書資料や教科書使用。絶対的安価)
・ネット教材のダウンロードや動画の閲覧(絶対的安価)

のように分類できると考えられるが、これらは一長一短がある。

まず通信教材の類は、「学校で安定した成績をあげる」という点においては、非常に効果が高い。かつては、業界を内部から見てきた者として断言できる。
彼らはえげつないほど、各学校・各教材会社から情報を収集する。知識や技能を習得させるだけなら、恐らく学校教育より、遥かに効率がよい学習方法とさえ言えるのではないか。
反面、このアプローチは中流以上の家庭でなければ、確実に家計を圧迫する。月毎に万単位の費用がかかる訳で、なかなか高価な買い物だ。絶賛経済停滞中で、大混乱が起きている昨今、簡単に取れる手段ではない。

学習塾も同様だ。
公教育と異なり、企業や個人事業主である彼らの対応は素早い。学校よりはるかにスピーディーに、動画教材の整備や、宿題の開発に手が回っていると聞く。しかし、こちらもやはり生活に余裕のない家庭が取れる、一般的な教育手段とはならない。

翻って、教材の購入による自主学習は、5つの方法の中では、中庸に位置する特徴があると考える。それなりの費用でも、解き進めさえすれば、ある程度の結果が保証される。
だが、こちらは学習者が、一定以上の教育水準に到達しているかが問題となる。教材があっても自力で解き、理解できるだけの基礎学力がなければ、あるいは金を溝に捨てる行為になってしまうからだ。
自力でテキストを読み込み、構造を理解して問題をどんどん解ける、そんな子供は多くない。当然、「わからない」と悲鳴をあげることになる。
そうなると、どうしても大人が学習を助ける必要が生まれて来る。宿題を”やらせる””完遂”させるだけでも、四苦八苦している親は多い。教育的負担は、時間や労力という点で、大幅に増えることになる。

独学に関しては、言わずもがなと言うべきだろう。
それで学習が成立するような神童ばかりなら、日本の将来は明るいのだが、我が国の現状はむしろ、
「受動的に教わることは得意でも、主体的に状況を切り開き、自ら獲得することは苦手」
という国民性の方が強化されているように思える。

そんな訳で、昨今、急速に勢いを増してきているのが、ネットを介した教育なのだ。これは現状、最もコストパフォーマンスに優れた学習方法の1つではないかと思う。

例えば解説動画やHPでの解説、無料の問題配布サイトは、増加の一途を辿っている。詳細は割愛するが、「無料 プリント ◯年生」や「動画 ◯年生 (教科名)」等のキーワードで検索をかけてみたところ、結構な数のサイトが見つかった。
実際に子供にやらせてみた経験がない身で申し訳ないのだが、こと計算問題等、いわゆる知識・経験の習得に関して言えば、有料の問題集等に手を伸ばさずとも、十分に賄うことが可能な内容に思えた。気になる方は検索してみることを勧める。

加えて、子供自身が端末を扱い、情報活用能力を高めない限り、これからの時代には対応できない。
ソサエティ5.0の到来が、少しずつ、だが着実に近付いて来ている昨今、スタンドアローンでは生活自体が立ち行かなくなる。そんな中にあって、コンピュータ端末及びインターネットを介した情報収集&分析、活用といった能力は、使用経験を伴わずに伸びるものではないからだ。

そこで問題になるのが、
『回線格差』
なのである。

テレワークが激増したこともあり、これまでは容量制限があるwifi等でも十分だった家庭が、一斉に固定回線設置に舵を切っているという報道が目に入ってきた。さもありなんという感じだが、もはや回線の必要性は、就労だけではなくなってきているということだ。

https://www.sankeibiz.jp/business/news/200408/bsj2004082200005-n1.htm

これに加えて、子供が使用するための、専用の端末を与えられるかどうか、という問題が大きい。子供をもたない自分ですら、
「自分が仕事でも、個人的にも使用するスマートフォンを、子供に長時間貸し与える」
ことのストレスやリスクは、馬鹿にできない大きさであるとすぐにわかる。
まとめると、

・保護者の教育に関する情報収集能力
・子供の学習活動に回せるだけの回線容量
・学習活動に回せる端末の有無
・紙媒体での出力可否(プリンターの有無)

辺りがポイントになる。最悪、出力装置がなくてもなんとかなる部分もあるかと思うが、やはり紙媒体の有無は、学習効率に大きな差を及ぼすことは間違いないと思う。回線格差は今後、そのまま学力格差へと繋がっていく、と考えられる。

とりあえず、今回はここまで。続きは気が向いた時に。

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