不幸メイト

フッ軽なので友達はたくさんいる方だと思う。
でもその中でも、特にこいつとは長い付き合いになりそうだ、というやつらがいる。親友というにはなんだかくさいしそんなかんじでもないが、十年後パタッと会ったときにも普通にゲラゲラ飲みに行きそうなやつらだ。
私にとってそういう人には共通点があると気付いた。

それは、「人の不幸を笑えるやつら」だ。

優しい人とか、思いやりがある人とか、面白い人もいる。
でもなんかこう、心から気が合うなーってやつらは不幸を笑えるやつらだなと思う。
言い換えるとそれなりの不幸なら面白がれるやつらだし、
感受性が乏しいやつらだとも言える。
正義感の強い方から最低なあほ共と言われても仕方がないだろう。なんの口答えもする気はありません。あなたが正しいです。我らが不正解です。

とは言え不幸にも限度がある。本当の不幸はつまんなそうに聞く。「ここまでなら笑っていいやつだ」という価値観が合う人かもしれない。
例えば、「じいちゃんが死にそう!」には笑えるけど、「じいちゃんが死んだ」は笑えない、みたいなことだ。もちろん私とじいちゃんの関係性をその話し方から察したうえで、だが。

端的に言うと、「私のお姉ちゃんニートやねん」と打ち明けて爆笑するやつは、ムカつくが非常に仲良くなれる。こっちは本気で困っているのに!

馬が合うやつら往々にして己のやや不幸エピソードを持っている。

顕著なのは友人K。
飲みで鉄板のくだりに、「まあKは母子家庭やからな」というものがある。
これは非常に汎用性が高い。Kが意味の分からないことで怒っていたり凹んでいたりしたら、大体「まああんたシングルマザーやしな」と言っておけばいい。Kは「シングルマザーは不幸なんですか!生まれたときから不幸なんですか!?」とぷんすか怒る。一方で、「奨学金?『母子家庭で父親が養育費を払ってくれなくて…』て書きゃあ一発よ。」とずる賢く不幸な女としての姿を利用している。
私は高校の友人FによくKのことを話した。そしてそういえばあいつ母子家庭やねん、と言うとFは爆笑した。即興で
「片親百人一首いきます。『母方の~』」
とか言ってゲラゲラ笑うのである。そういう奴らなのである。

KやFはいやというほど一緒にいるが、そんなに会う訳でもないけどこいつ好きやなーっていうのもいる。
例えば大学の友人Y。
Yは大学の文化祭でワッフルを売る模擬店のリーダーをしていた。しかし文化祭前日ワッフルを外に置いたまま帰ると、当日の朝それが全部盗まれた。無残なことに、ワッフルの空の袋が辺りに散らばり、残酷に中身だけが抜かれていたのである。
Yは「一個くらい残してくれてもいいやんか…」と声を震わせてしくしく泣いた。
しくしく泣いた結果、次の日右目にでかいめばちこができた。
この前久しぶりに飲みに行くと、「彼氏と別れた…」と落ち込んでいた。しかもコロナに罹った直後インフルエンザに罹り、気分も体調も最も悪い時に別れようLINEがきたのだ。しかも自宅療養のため気晴らしに外に出ることもできず、人にも言えず、一人寂しく部屋で枕を濡らしていたらしい。あまりにも可哀想で私もさすがに涙を禁じえず二人でおいおい泣いたが、「別れる原因はなんだったの?」と聞いたら、「食の好みのちがい」と言っていた。そんなわけがあってたまるか。

友人Fはお気楽者すぎて不幸に見えたことがない。
中高のときやらかしすぎていたし色んな人から怒られすぎたせいで強靭なメンタルを持っている。
強いて言うならそれが裏目に出ることもある。例えば私が寝坊したせいで飛行機に乗り遅れたとき、「なんで起こさへんかってん!」と怒ると「今まで急かされたことしかなくて人を急かしたことなんか無かったから、どうすればいいか分からんねん!」と言っていた。
しかしFの強いところは「辛いことがあっても寝たら忘れる」ということだ。これってすごく難しいことだと思う。
反抗期、Fはお母さんと爆裂喧嘩していたが、夜に怒鳴り合ってふてくされて寝ても次の日の朝には「おはよ~ごはんなに?」とケロっとしているのである。お母さんはこれに「娘は何かおかしいんじゃないか」と逆に頭を悩ませていた。忘れるふりをしてるんじゃなくて、本当に忘れているのだ。この神業には私も何度も驚かされたし生きる上で習得しようと参考にしている。

大学の友人Mは、基本真面目だが私やKの不幸話にはきっちり笑うタイプである。不幸を笑うことは人によって「は?」な反応をされるのだが、そのへんの線引きがうまい。
この前Mとテレビを見ていて、今日のトップニュースを当てようとゲームを始めた。「島根県にて食中毒で50人が搬送」「10月の猛暑日最多」「パンダの赤ちゃん生まれる」などキャッキャしていたが、実際のトップニュースは「父が入院した妻と子を刺し自害」だった。さっきまで「絶対食中毒だ!」と嬉々として笑いあっていたのに、あまりに重いニュースで静まり返った。事実は小説より奇なりとかなんとか言って、神妙にニュースを見た。

バイト先の店長から「持ちビルにペンキを積んだトラックが突っ込みビルが全焼した人」の話を聞いたこともあった。しかもトラックが突っ込んだ先は一階にあった宝石店であった。死者ははなし。本人が店に登場したときは興奮したが、強く生きてらした。すごいぜ。


まあこういったかんじで、不幸なやつらは面白いし私も不幸を面白く語るのが好きなのだ。
この感覚って分からない人にはほんとに分からないと思うし、
「気が合う奴らの共通点」って人によって全く違うんじゃあなかろうか。

なんだか面白いので、もし皆さんも(読んでいる方がいれば!)自分はこれだなってことがあればお聞きしたいな~と思う。

本日はこれで!アデュー!


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