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「ほどよく忘れて生きていく」

「ほどよく忘れて生きていく」
―91歳の心療内科医の心がラクになる診察室―   藤井英子著 
サンマーク出版

  お彼岸に実家のお墓参りに行った帰り、めったに入ったことのない書店でこの本を見つけた。天国の父母が私に気づかせてくれたような気がして買って来た。

 

 著者は91歳の心療内科医だ。産婦人科医を7年間していたが、子育て(7人)で医師を辞めた。が、育児をしながら栄養学・心理学を学び、51歳で精神科医になる。漢方薬に関心を持ち、漢方専門医としても勤務し、30年以上、精神科医を続けてきた。
89歳で「漢方心療内科藤井医院」を開院した。91歳の現在も週に6日、悩める多くの人々に寄り添い、漢方薬を処方しているという。 
「いやなこと、執着、行きすぎたこだわり、誰かへの期待、後悔、過去の栄光は、ほどよく忘れるほうがいい」
  71項目にわたって、“自分をいたわること”と、そのヒントを丁寧に教えてくれる。
「自分ひとりだけで生きていたなら、起きないことや感じないさまざまな困難を抱えながらも、やっぱり人は、ひとりでは生きられない。
  だからこそ、普段から大切にしてほしいのは、何より自分を大切にすること」
そのために、具体的な人間関係の場面や悩みについて、「今」できることをして、心の不安をかるくするようにやさしく語りかけてくれる。
   時にはご本人の体験談も読む者を励ましてくれる。
「14年前に夫を亡くしたとき、子どもたちの教育費の借金が残っていました。・・・(中略)・・・ただ必死で、目の前のこと、患者さんに向き合う日々でした・・・目の前にあるやるべきことは、すべて、意味があって与えられたもの」
  91歳と言うのが信じられない著者だが、「年齢によって失われたことがあったとしても、朝目が覚める限り、私たちには新しい今日が与えられています。今日できることに関心をむけましょう」と語る。この言葉に、勇気と励ましを与えられた。
  読み終えて、私の「人間関係のほどよきところ」を探す旅はまだまだこれからだなあ・・・と感慨深く本を閉じた。

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