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【らんまん】あらゆる草に名前があることを知る

日本の植物分類学の祖・牧野富太郎をモデルとして描く、NHKテレビ小説『らんまん』。今週は、槙野万太郎(牧野富太郎)が、郷校「名教館(めいこうかん)」に入校しました。はじめは学問への興味を示しませんが、寺脇康文さん扮する、学頭(校長)の池田蘭光(モデル:伊藤蘭林)に、ツユクサやオオバコなど、植物の名前とその特長を教えてもらいます。字が読めればもっと植物について知ることができる……それがきっかけとなり、槙野万太郎は学問に目覚めるるのです。

ドラマの中では【オウセキソウ(鴨跖草)】として紹介されていた【ツユクサ】
7月くらいになると、あちこちに咲いていますね

さて、ドラマでは槙野万太郎が、名教館(めいこうかん)オーナーの塚田家の当主(モデル:領主の深尾家)に、祖父を通して入学を誘われています。実際にも牧野富太郎は、同館で学んでいるのですが、その前に寺子屋にも所属していました。ただし、名教館(めいこうかん)には伊藤蘭林という名物学頭が居たのも事実なので、学問が面白い! と開眼したのは、同館に入学してからなのかもしれません。

【ツユクサ】

そんな池田蘭光こと、実在した伊藤蘭林は、文化12年(1815年)9月28日に土佐(現在の高知県)で生まれ、天文暦算、書道、武術などに優れた才能を持っていました。彼は私塾の蘭林塾を開いたのちに、名教館に誘われます。そして同館での門下生として多くの偉人たちを輩出。その中には、警視総監や宮内大臣を歴任した田中光顕や、植物分類学の祖・牧野富太郎も含まれています。また、牧野富太郎の弟子で植物学者の吉永虎馬や、「セルボーンの博物誌」の翻訳者である西谷退三、音楽家の外山国彦など、多くの著名人が蘭林の教えを受けました。

こうした人たちを輩出したのですから、牧野富太郎も彼から多くの影響を受けたとしても不思議ではありませんね。

【ツユクサ】

ドラマでは、番頭の懐中時計を分解してしまう……というシーンが描かれていました。これは、(分解したパーツを模写したかどうかは不明だが)牧野富太郎の有名な逸話のひとつ。佐川町の「富太郎ふるさと館」に再現された幼少期の牧野富太郎博士の部屋には、バラバラにされた懐中時計も再現されているそうです。

親であれば誰もが、「子どもって、なんでも分解したがるよね」と感じたシーンではないでしょうか。子どもは色んなものに不思議さや興味をいだいて、「なんで?」と思うもの。そして「なぜ?」を知りたくて、なんでも分解しちゃうんですよね……男の子は特にかもしれませんね。

でも分解すると、たいていは親から怒られますw 当然でしょう。分解して元通りに組み立てられるのならよいですが、それは無理な話です。つまりは使い物にならなくなってしまう可能性が高いから、親から怒られるわけです。そうしているうちに、子どもたちは分解しなくなります。同時に、これも自然なことなのでしょうが、様々なことに不思議さや興味を抱かなくなってしまい、「なんで?」と思う回数が成長に従って減っていってしまうのでしょう。

ドラマの中で、祖母・タキを演じる松坂慶子さんは、懐中時計を分解して、夢中になってパーツを模写している槙野万太郎の姿を見て、「懐中時計はまた買えばいいきに」とつぶやきます。現在、小学三年の息子を育てる親としては、できるだけ、このタキさんのように子どもと接してあげたいなと思います。もちろん、わたしの大事にしている腕時計を、知らない間に分解されていたら、激怒しちゃうと思いますけどね。

参考:『英学者 牧野富太郎 人文学としての英学

■富山県の高岡市万葉歴史館で『牧野富太郎と万葉集』を開催中

植物分類学の祖と言われる牧野富太郎さんは、なにも植物にだけ詳しかったわけではありません。植物を皮切りに、日本語(国語)はもちろん、漢語や英語など、語学に習熟していきます。さらに植物を基点にして興味の幅を広げていった牧野富太郎さんは、晩年には、万葉集で詠まれた植物の図鑑『万葉植物図譜』を制作していたそうです。こちらの図譜は、残念ながら生前に刊行するに至りませんでした。

高岡市の万葉歴史館では、その名もずばりな『牧野富太郎と万葉集』という企画展を、今日(4月12日)から6月12日まで開催しています。制作途中に描いた原画の複製を展示しつつ、牧野富太郎さんと万葉集との関わりを紹介しているそうです。

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