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円山応挙が精確に描いた鳥のスケッチ帖……《写生帖(丁帖)》

先日、「今季トーハクの江戸期美術が豪華過ぎて……ドキドキするレベルでした @東京国立博物館①」というnoteを書いたのですが、その第二弾です。


■円山応挙の《写生帖(丁帖)》

まずは円山応挙の《写生帖(丁帖)》です。

丁帖ということなので、この他にも甲、乙、丙の巻物もあるのでしょうね。今回の丁帖も、展示されているのは、鳥を描いた部分ですが、巻物の左端を見ると、まだまだ続きが描かれているようでした。

noteのタイトルには「スケッチ」と記しましたが、スケッチの意味を調べると「人物や風景などを大まかに描写すること。写生、粗描・素描、ドローイングとも言う。また、画稿ともいい、肉筆画の一種である」としています。「大まかに描写すること」という意味では、ちょっと今回の《写生帖(丁帖)》での精緻な描写を考えると、ちょっとスケッチとは言えないのかなと。

写真だと、その精緻さを表現しずらいのですが、実物を観ると、「こんなところまで観察して、それを描いているのか」と感心してしまいます。

写生帖というよりも……それぞれの鳥についての説明が付記されていれば、立派な図鑑と言えるのではないでしょうか。当時であれば「図譜(ずふ)」と言っていいでしょう。

鳥が羽を閉じている姿はもちろん、広げた羽も別途に描いています。

野生の鳥を、そのまま観察して、これだけ詳細に記すのは至難なはずなので、きっと捕まえた鳥を観察して描いたものなんでしょうね(違うのか?)。

円山応挙が自ら捕まえたとも思えないので、採集人を雇ったのか、弟子に捕まえさせたのか……それこそ図譜を制作している人たちと協働したのか。可能性は色々と考えられますね。

色んな可能性が考えられるなと思って調べてみたら……。これは、他の人が描いた鳥の図巻を見ながら、まさに「写生」したものなんだそうです。ちょっとがっかり……と思いつつも、円山応挙の研究熱心さは変わらないですね。

詳細については集英社の『学芸の森』というサイトに、以下の通り記されていました。

メモ書きも添えられ、一見すると応挙による一次写生のようだが、これは渡辺始興(わたなべしこう、1683~1755)の「鳥類真写図巻」を応挙が忠実に模写したもの。

集英社の『学芸の森』

■岡本秋暉の《鳥類写生図巻》もすごい!

以下は岡本秋暉筆の《鳥類写生図巻》です。

秋暉は、幕末期の画家で、小田原藩主大久保家に仕え、写実的で精緻な表現に装飾性を加えた花鳥画を得意としました。本作では、雉や鶏孔雀などさまざまな鳥類を素早い筆遣いで描いています。秋暉の直系子孫である岡本家に伝来しました。

解説パネルより

岡本家に代々伝えられたという通り、本図巻が東京国立博物館に寄贈したのは、岡本隆光さんということです。

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