エッセイ 冬のカゲロウ
春の陽気のように暖かい日
カーテンを開けて光を入れれば
暖房もいらないくらい
少しずつ春が近づくのを感じる
*
夜になり
買い物にいこうと車に乗ると
運転席の横の窓ガラスに
カゲロウがとまっていた
真っ白な体に透明な羽
僕が車を走らせると
必死に窓ガラスにしがみつく
きっとこの陽気に騙されて
羽化してしまったのだろう
夜の寒さに驚いてるに違いない
僅かな命を寒い中で過ごすとは
不憫に思えて仕方ない
でもカゲロウには
どうすることもできやしない
ただ必死にしがみついて
精いっぱい生きるだけだ
食べることも
眠ることもせずに
生きてる限りを
恋を実らすことだけに費やす
このカゲロウに
実る恋はあるのだろうか
なんとなく
自分と重ね合わせたときに
カゲロウは窓ガラスから
いなくなっていた
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