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ツバメ

川沿いにある土手の上の小道を歩く。
ここは、僕がよく行く散歩道。

小道の桜並木は、
すっかり緑色に染まり、
新緑の季節の訪れを告げる。

小道を歩いていると、正面から
小さな子を連れた母娘がゆっくり
歩いてくる。

川の水はキラキラと輝き、
穏やかに流れていく。

ふと、目の前に、
スーっと降りてくるものがある。

桜の木から糸を出して、
降りてきたシャクトリムシだ。

それを見た、さっきの女の子が、
嬉しそうにかけ出す。

そこへ、
サッーっと地面スレスレに、
ツバメが飛んで来る。

見ていると、僕たちを通り過ぎ、
クルッと旋回し、川の方へ、
飛んでいく。

よく見ると、
周りはツバメで一杯だ。

こんなにもたくさんのツバメが
飛び交うのを見たのは初めてだ。

次から次とやって来ては、
地面スレスレに飛んで来て、
通り過ぎる。

本当に地面スレスレに飛ぶんだ。

それにしてもツバメたちは、
気持ち良さそうに空をとぶ。

自由に飛びまわる。

ベンチに座った僕の目の前を
通り過ぎたりして、
ビックリさせる。

家に帰ってからも
目の前を飛び交うツバメの光景が
脳裏に浮かぶ。

桜の新緑と、キラキラ輝く川との間を
自由に飛び交うツバメの群れ。

風を切り、滑るように、自由自在に
飛ぶ姿は美しい。

きっとその姿は
もう見ることが
できないに違いない。

なぜだろう。

奇跡に近い偶然の結果
目に出来た光景なのに
そのときにはそうは思わない。

こんなことには
きっと、また出会えると
簡単に考えてる。

でも、同じ瞬間は二度はなく
二度と出会うこともない。

誰かの目を気にしていると
大事なものがすり抜けてく。

今、ここが、大切なんだ。

僕はまだ、わかってない。

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