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頑固さと、悲しさと、

「長く生きることは、
喜びと思っていましたが、

年を取るにつれて周りに
迷惑をかけるばかりで、

長生きしても良いことは
ないと思いました。」

おじいさんが訥々とつとつと、
僕に語る。

僕には返す言葉が、
見つからない。

おじいさんは、田舎で一人暮らし。
病気もせず、一人で何でもこなす、
カクシャクとした人だ。

話好きな人で、
話が苦手な僕を相手に、
昔話を良くしてくれた。
いつも自慢話をしてた。

突然、倒れて病院に運ばれたと
連絡があり、急遽、田舎に行く
ことになった。

飛行機でしか行けない場所で、
しかも家は山奥にある。

行ってみたら案外元気な姿に
安心したけど、数年前に合った
ときより、小さくなった印象
を受けた。

いつも元気で、短気で、
怒りっぽい人だったけど、

大人しくなっていた。

寂しそうな目をしてた。

田舎には身寄りがないのに、
どうしても離れたがらない。

おばあさんのお墓があるからだ。

死んだら一緒に入れてほしいと
言っていた。

それが望みですと。

おじいさんの悲しいまでの
頑固さが、

僕は、
悲しくて、

僕は、
やりきれない。

帰る日に
挨拶に寄ったとき、

泣きそうな目で、
いつまでも
いつまでも

見送っていた。

僕はその姿が
ずっと目に焼きついて

消えない。


彼岸花(白)の花言葉
「また会う日を楽しみに」

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