頑固さと、悲しさと、
「長く生きることは、
喜びと思っていましたが、
年を取るにつれて周りに
迷惑をかけるばかりで、
長生きしても良いことは
ないと思いました。」
おじいさんが訥々と、
僕に語る。
僕には返す言葉が、
見つからない。
*
おじいさんは、田舎で一人暮らし。
病気もせず、一人で何でもこなす、
カクシャクとした人だ。
話好きな人で、
話が苦手な僕を相手に、
昔話を良くしてくれた。
いつも自慢話をしてた。
*
突然、倒れて病院に運ばれたと
連絡があり、急遽、田舎に行く
ことになった。
飛行機でしか行けない場所で、
しかも家は山奥にある。
行ってみたら案外元気な姿に
安心したけど、数年前に合った
ときより、小さくなった印象
を受けた。
いつも元気で、短気で、
怒りっぽい人だったけど、
大人しくなっていた。
寂しそうな目をしてた。
*
田舎には身寄りがないのに、
どうしても離れたがらない。
おばあさんのお墓があるからだ。
死んだら一緒に入れてほしいと
言っていた。
それが望みですと。
おじいさんの悲しいまでの
頑固さが、
僕は、
悲しくて、
僕は、
やりきれない。
*
帰る日に
挨拶に寄ったとき、
泣きそうな目で、
いつまでも
いつまでも
見送っていた。
僕はその姿が
ずっと目に焼きついて
消えない。
*
彼岸花(白)の花言葉
「また会う日を楽しみに」
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