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詩 寒のもどり

冷たい雨がふる。

それは寒のもどり。

昨日までの暖かな日差しは、
人の気持ちを緩め、
服装も軽やかになり、
気持ちも浮ついていた。

それを見計みはからったように、
冷たい雨が、僕をいじめる。

だって、
暖かくなってきたじゃないか。

なのに、
なんで寒くなるんだ。

もうずっと暖かくて、
いいじゃないか。

どうしてまた、
寒さをつれてくるんだ。

僕は足元に溜まる水たまりを見ながら、
つぶやく。

寂しいのかな。
だれも、冬が去るのを引き留めなくて。

悲しいのかな。
だれも、冬を好きと言ってくれなくて。

僕は考える。
冬は好き?どこが好き?

虫がいないのは好き。

冬の透き通った空が好き。

コートとマフラーとグローブをして、
寒さと暖かさを一緒に感じれるのは好き。

朝の冷たい空気に吐く、白い息が好き。

寒い朝に光輝く朝日が昇るのを見るのは好き。

夕方、日の落ちるときに空に広がる、
紫いろのグラデーションが好き。

なんだ、僕は冬が好きじゃないか。

そして、すこし寂しがっているじゃないか。

だから、許してくれないかな。

寒のもどり。

冷たい雨が、僕をいじめる。

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