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“俺たちにとって音楽はビジネスなんかじゃねぇ”ロッキンで学んだUVERworld TAKUYA∞に学ぶビジネス論

“俺たちにとって音楽はビジネスなんかじゃねぇ”と歌うUVERworldから学べるビジネス論やマーケティングが盛りだくさんだった、という話。

(“俺たちにとって音楽はビジネスなんかじゃねぇ”はUVERworld「EN」の歌詞から引用)

昨日、rock in Japan festival 2024に行ってきました。初めてのロッキン。

激しめなバンドが好きな僕はcoldrainやFear, and loathing in Las Vegasとか、頭が振れるようなバンドをまわってはエリア前方を陣取り「めちゃめちゃ楽しー」などと言いながら脳死で楽しんでた。

その日は出演アーティストとしてUVERworldも参戦していた。

僕はUVERworldのライブを見たことが無く、普段からそれなりに曲も聞いていたので、このさいUVERworldも拝んでおこうと思い鑑賞していた。

遠目から、演奏上手いなーTAKUYA∞歌上手いなーなどと呆けて見ていたが、「あ、やっぱUVERworldって他のバンドと違うわ」などと感じながら徐々に演奏に引き込まれていった。

「あれ、UVERworldの演出とか歌詞ってビジネステクニックの宝庫じゃん。だからこんなに売れるしファンがいるんだ」とか思いながら。


①『感情』と『信用』

『感情』

他のバンドと違うな、と感じた要素の一つは、感情が盛り盛りに詰め込まれている、ということ。

TAKUYA∞が書く歌詞はどのバンドよりも具体的で、TAKUYA∞が日々感じたり考えている(であろう)生の言葉がそのまま溢れ出していた。

走り続けようとする僕に誰かが言った
あなたは強い人 怖いものはもうないでしょ
そんなわけない 違うよ

僕は止まるのが本当は怖くて
何もかもが一緒に止まってしまいそうで
まだ終わらないでくれって祈るように走って

いつか起こる奇跡を信じて

「PRAYING RUN」

「そんなわけない 違うよ」とか「僕は止まるのが本当は怖くて」とか、TAKUYA∞の不安がそのまま出ている。どこかで聞いたことがあるような、使い古された言葉や抽象的な言葉ではない、人の素直な感情の吐露。

そして、この「PRAYING RUN」という曲ができた背景。

TAKUYA∞が日課にしている「毎日10キロ走る」ことへの思いを歌った楽曲。

イントロの呼吸音や足音はTAKUYA∞本人のものである。

曲名の通り「祈りながら走る」のがTAKUYA∞の日課であり「どうやったらUVERworldはこれ以上上に行けるのか」「もっといい曲がほしい」という思いをもとに走っているという。

UVERworldが常に華やかなところで過ごしているわけではなく、今も何かにしがみつきながら、さらに高みを目指している姿を知っているファンにこそ伝わる曲である、とTAKUYA∞は語っている

引用:I LOVE THE WORLD - Wikipedia


華やかで成功しているように見えるTAKUYA∞でも、こうやって毎日葛藤を抱えて、自分の内面と向き合っているんですね。
だから出てくる、こうなってほしいという願望や日々感じている不安の声。

それを等身大で歌詞に表しているから、TAKUYA∞の葛藤がそのまま聴き手に伝わってくる。だから聴き手の気持ちが惹き込まれる。TAKUYA∞の感情詰め込みまくりなんですね。


『信用』

で、端的に言うと、気持ちの吐露やストーリーを人に話して自分を知ってもらうことって信用を得ることに直結するんですよね。信用の獲得って自己開示をすることなんで。

初対面の人と話す時は、年齢や職業を話して、趣味を話して共通点を見つけて仲良くなる。目の前の人の普段の姿が見えてきて共感できて、信用して仲良くなる。

映画や漫画なんかでも、主人公の思いやこれまでのストーリーがあるから読者の共感を得て応援される。悪いことしてきた敵役であっても、生い立ちやバックグラウンドを知るから敵にも共感できる。

ビジネスにおいても人からモノを買ってもらうときに、まず信用を得ると購入してもらえる率が高くなる。だからインスタのインフルエンサーとかもそうだけど、普段どんなことしてるとか、どこ行ってるとかを毎日投稿してる。普段の自分を開示してみんなに知ってもらうことで信用が得られるから。

誰だって、知らない人より知ってる人からモノを買いたいし。

自分の気持ちや考え方、生い立ちやストーリー、プロフィールを発信することで、共感を得たり自分の詳細を人に知ってもらえる。知ってもらえるから人からの信用を得ることができる。


TAKUYA∞が自分で普段から感じている不安や願望を、そのまま外に出したような歌詞がたくさん盛り込まれている。生の感情が聴き手の共感を呼んで、信用が生まれ、心を動かしている。

こういう、一人ひとりの信用を得て感動させていくことで「ファン化」していくわけだけど、ファン化についてはここでは割愛。


②『具体性』

『抽象』より『具体』

①の「感情と信用」と少し通じてくるんだけど、具体性は人の興味を掴む。人は具体性が高いことが大好き。

抽象的な表現って、中身が無くてスカスカな印象だったり、どこかで聞いたことがあるような気がして上滑りする。わかりづらい。

比べて具体的な表現は、現実味を帯びていてわかりやすい。

例えば、“愛する人”とか“大好きな人”、“大切な人”とか言われても、ちょっと中身スカスカで抽象的すぎる。

でも、“大切な人の定義って「会えるのが楽しみな人」だよね”とかって聞くと、「たしかにそうだよな」って思いません?

大切な人の定義なんて人それぞれだし、わざわざ言うことでもないけど
それを「会えるのが楽しみな人」とか言われると、「たしかに、彼女とか親友と遊ぶ予定立てると会えるまでが楽しみで、仕事も頑張れるし」みたいな。具体的に内容を自分と重ねられるんですよね。

ちなみにこれも、UVERworldの曲の歌詞からの引用。

遊びに行ったり 飲みに行ったりするくらいの
人ならそれなりにいるけど
大切な人の定義は “会えるのが楽しみな人”
とか言われちゃったら
君くらいしか思い当たらないや

「theory」

人は基本、考えたりするのめんどくさいんで。考えずに済む分かりやすい表現とかが好きなんで。
だから具体的な内容に目を奪われやすい。



『新規性』

具体的な内容って、新規性が高いことが多いんですよね。

つまり、物事が具体的であればあるほど、既視感がない・聞いたことがない話になりやすいから興味を引ける、ということ。

人は、どこかで聞いたことがあるような内容っていまいち頭に入ってこないから。

普段の会話でも、「昨日は外食に行きました~」みたいな誰でも言える内容より、

「昨日は川崎の、ごうっていう串焼き屋さんに行って、そこのせせりとかぼんじりの身が大きいししっかりしてて美味しくって~、、、」とかの方が、情景浮かぶし興味惹かれるし。実際にそこのお店に行った人からしか出てこない感想ですよね。

その日のTAKUYA∞のMCも、具体性もりもりだったんです。

「今日UVERworldのTシャツを着てくれてる人には、UVERworldのシャツを着てロッキンに来てよかったって、そのシャツを着てきたことを帰り道で誇りに思えるように」って。

「UVERworldのTシャツを着てくれてありがとう」みたいな抽象じゃないんですよね。「帰りにUVERシャツ着てたことを誇りに思えるように」って。
アーティストしか言えないし、演奏を聴きにきてくれた人に恩返しを、と思った人にしか言えない。

聞いたことないから、MC聞いてても「Tシャツ着てるって俺じゃん」とか「誇りに思えたらいいな」とか、心を動かされて惹き込まれ始める。

耳にしたことがないフレーズとか既視感がない言葉は、「聞いたことないぞ!」と思って人が興味を持ちます。


③『誰に向けて話すか』

「20代男性で毛に悩んでる人に」とか、「夏に向けてダイエットしたいと考えている女性に」とか、自分の属性に当てはまることを言われると「それ私のこと?」となって自然に耳が傾く。

居酒屋のキャッチでも「安いよ~」とか言われるより「そこのお兄さん」とか呼び掛けられると、一瞬でもそっちに目が行っちゃいますよね。

UVERworldの曲の歌詞にこんなのがあった。

できないことはやらない主義ですってこだわり持って格好いい
分かった そのうえでお前もさ 全部やって確かめりゃいいだろう

つき合うとか 合わねぇとか 相性がいい 悪いとか
気持ちがいいか悪いかは 全部やって確かめりゃいいだろう

もっとああしろよとか 俺に文句があんならば
お前も マイク持ってステージ立って 全部やって確かめりゃいいだろう

「PRAYING RUN」

「できないことはやらない主義です」って、物事をすぐに諦めがちだったり行動を起こせないと自覚している人たちに刺さる。

「付き合うとか合わないとか 相性がいいとか悪いとか」って、恋愛で悩んでる若い男女に刺さる。

「もっとああしろよとか 俺に文句があるならば」とか、人に対して批判的になりがちな人に刺さる。

歌詞にあまり感情移入できずに、ただ音楽に乗って聞いてるだけの人がいても、「それって俺のこと?」と一瞬耳のシャッターが開いて歌詞を聞き込んでしまう。

他にも。

本当の自分を知られることで 離れてく程度の絆ならば
本当の自分を教えて 離れてしまえばいい

本当の自分を知られることで 離れていくその程度の人なら
本当の自分を教えて 離れてしまえばいい

「Eye‘s Sentry」

本当の自分を自分を知られる」って、本当の自分ってなんだろうとか、自分を偽る、のような20代前半のモラトリアムを感じている人に刺さりまくるじゃないですか。

しかもそのあとに「本当の自分を教えて離れてしまえばいい」とか、答えを明言してくれるし。

それに悩んでいる人が答えを明言されたら、「悩みを解決してくれてありがとう」でファンにならざるを得ない。

UVERworldの曲、TAKUYA∞の歌詞はメッセージ性が高いから、自然と「誰に向けて伝えるか」が明確になりやすい。

だから、「俺のこと言ってるじゃん」ていろんな層の人の耳のシャッターが開いて、聞き入る人が多くなるからファンも増えるんだなー、と。

結論


“俺たちにとって音楽はビジネスなんかじゃねぇ”と歌うUVERworldはビジネステクニックの宝庫だった。


ビジネスにも転換できるような、ファンができる理屈が山盛りだった。

もちろん、「ビジネスじゃないとか言いながら結局ビジネスじゃん」という野暮なことを言いたいわけではなく。

自分たちの音楽はビジネスなんかじゃないと言いながらも、思いと音楽を人々に伝えたいと祈るTAKUYA∞とそのメンバーたちの本気の思いが、打算的な考えなしにたくさんのファンを作ってきたんだな。という学び。

ロッキン、控えめに言っても最高だった。


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