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未経験からソフトウェアエンジニアを目指すということについて

2019年からの活動として、プログラミング未経験の社会人からソフトウェアエンジニアへの転職を目指す人たちのサポーターをする仕事をはじめました。

※ サポーターの具体的な内容は、プログラミングの基礎学習のサポート、IT業界に転職するにあたってのメンターなどです。

僕自身のキャリアとしては、

------- 新卒~4年目 -------
中規模SIer
------- 4年目~7年目 -------
Web系企業(自社サービス担当)
------- 7年目~10年目 -------
フリーランス(スタートアップ系) 
------- 現在 ~ -------
創業したてベンチャーの一人目のエンジニア

といった感じで、比較的に「日本のプログラマ事情」の広範囲を体験できていることから、相談相手としては役に立てるのかなと思っています。

この仕事を始めてから、転職業界(プログラミングスクール業界)の現状や未経験からの転職体験談などに興味が湧き色々と調べることが増えました。今回はそんな経験から思った未経験からソフトウェアエンジニアを目指すとはどういうことについて自分なりの考えを書いてみます。

※あくまで、個人的な感想ベースのため事実とは乖離する部分があるかもしれません。ご容赦いただけると幸いです。

未経験からソフトウェアエンジニアを目指すということについて

僕がプログラマとして新卒で入社したのは10年ほど前になりますが、「未経験からソフトウェアエンジニアを目指す」という事自体の意味は随分変わってきたと感じます。

僕が働き始めた頃も、未経験からエンジニア転職(主に中途)というルートは一定数ありました。ただしその当時、未経験からのエンジニアというのは「転職が上手く行かなかった人が就職するための最後の手段」といったイメージがあります。
この当時のITエンジニアという業界は「低賃金・高稼働」の代表業種と言われていて、大学生が就職活動する際の優先度でも最後まで選択されないような位置づけでした。

しかし、この10年で業界の位置づけも大きく変わりました。スマートフォン普及によるインターネットの一般化、GAFAMを代表とするテックカンパニーが一般にも認知されるようになり、いつしかプログラマは花形の職業になりました。 業界の平均年収も向上し、近年では「IT・エンジニア」は学生のなりたい職業ランニング上位になっています。

その結果、いま「未経験からソフトウェアエンジニアを目指す」ということは、明確なキャリアパスの一つであり、ステップアップのための手段として認知されているのだなと感じます。
(別切り口のため深堀りしませんが、市場が高騰しているため業界関係者が煽っていることも原因としてあるかなぁと思ってはいます。。)

転職先の環境は変わったのか?

では10年前と今とでは、未経験者が目指す転職先の環境は変わったのでしょうか?

個人的な考えにはなりますが、それほど大きく変わっていないのではないように思います。

日本における未経験や経験が浅い人を歓迎するIT企業の多くは、SES(準委任契約)、受託開発(請負契約)が主軸の事業会社です。(感覚としてはSESメインの企業の方が多い気がします。)

前提として日本のソフトウェア開発事業は大きく3つのカテゴリに分類されます。(一つの企業で複数の事業を運営している企業も存在します)

① 自社サービス運営
自社のWebサービスの運営やパッケージの販売を行う。収益はサブスクリプションによる利用料やシステム運営費、パッケージ販売利益など。

② 受託開発
請負契約でシステムを開発し、発注元企業へ納品する。納品する成果物に対して売上をもらう。

③ SES
技術者の労働価値自体を提供する。(派遣に近い) 成果物に対しての報酬ではなく、稼働時間に対して売上が発生する。

未経験を採用する企業にSES事業者が多い理由は明確で、これらの事業のうち、もっとも技術力に影響しない事業形態が「③ SES」だからです。

理由を簡単に記載します。

自社サービスの売上は、製品のクオリティに直結します。そのため技術者のスキルが高いことが売上に大きく影響を与えることも少なくありません。他社との競合優位性を得るためにも優れたエンジニアを欲しがる企業がほとんどのはずです。

受託開発は、自社サービスほど高スキルが必要ない仕事も多く存在しますが、納品によって売上を得るモデルのため技術力の不足による「スケジュール遅延」や「品質低下(バグが多い)」が瑕疵担保責任の対象となり、売上損失につながる可能性があります。そのため、完全に技術者が低い人のみでチームを構成することは大きなリスクになるため、技術力の高いエンジニアは一定数必要です。

一方でSESは、「労働力」自体を他社に提供して売上を得るモデルです。仮に現場に所属したエンジニアの技術者が、現場に必要な技術力に足りず、契約が切られてしまったとしても、契約期間中の売上は発生します。契約が切られたとしてもまた営業が頑張って他社に売り込みに行けばいいのです。また必要スキルは現場で得ることがほとんどのため、教育コストも他の事業よりも抑えられます。(※個人的にこの考え自体は全く共感できないですが、事実そう考えている企業も少なくないはずです。)

つまり、SESは極論「人さえ増えて、営業が頑張れば売上が上がる」という労働集約型のビジネスモデルなのです。
これが未経験でも積極的にエンジニアとして採用する。という企業にSES事業者が多い理由です。

ちなみにSESは一人当たりの単価から会社の利益を引いた金額がざっくり給与になるため、報酬的にも話題のIT企業のような高い年収をもらうことは難しいと思います。

このように業界構造が大きく変わっていない以上「未経験者が目指す転職先の環境」は昔から今も日本において大きく変わっていないではないかというのが僕の考えです。

※ もちろん、優れた自社製品を持つ企業が育成のため素質のある未経験者を採用するケースもあることは理解しています。

なにが良くなったのか?

では昔と比べたとき、今は何が良くなったのでしょうか?
大きく変わったのは「2社目以降の転職先やキャリアパスが広がったこと」ではないでしょうか?

プログラミング経験者が転職を考えたときの選択肢は、昔と比べて圧倒的に増えました。転職サイトに登録すればスカウトやおすすめされる企業は圧倒的に増えたことがわかります。都内に限定すれば超売り手市場である程度の経験があれば引く手あまたでしょう。

売り手市場であることから各企業もエンジニアの採用にはかなり積極的であり、雇用条件も優遇されていると思います。
転職したら年収が上がるケースや自分の望む勤務形態で働けるようになったという事例も増えたでしょう。

また、「フリーランス」という働き方も随分と一般的になりました。フリーランス(個人事業主)というと自分で営業をして仕事をとる必要があり、保険などの福利厚生も不安定というイメージでした。しかし今はフリーランサーのための福利厚生のサービスや営業代行のエージェントサービスも充実しており、サラリーマンの代替手段としてフリーランスを選択するエンジニアもかなり増えました。

このように、エンジニア経験者になりさえすれば状況は、昔よりも大きく改善されているといえます。「一社目は修行の場だと思い我慢する」ぐらいの割り切った考えで、技術力をしっかりと見に付けてその後のキャリアパスに備えることも有効かもしれません。

個人的な考え

個人的には未経験者からのエンジニア転向は目指していいものだと思っています。単純に自分の業界の立場が良くなって同じ業界の人間が増えることは単純に嬉しいです。

また、未経験者に対して優遇されているかは別として、学位が重要視されるアメリカのような環境でエンジニアをめざすよりは未経験にもパスが用意されている日本は可能性として開いていると言えます。
全く未経験から高収入で自由に働けるようになったという人も少なくないでしょう。

しかし、日本の職業として考えたときにソフトウェアエンジニアというのが希望に満ち溢れた夢のような職業かというとそうでもないだろうということは理解はしてもらいたいと思います。

最後に言いたいこと

色々と書きましたが、個人的にエンジニアを目指す人に最も言いたいのは「プログラミングを楽しんで学習して欲しい」ということです。

ソフトウェアエンジニアというのは、続けている限りは新しいことに挑戦して知識をアップデートしていく職業です。未経験の人からみると勉強し続けるというのは、大変に見えるかもしれません。しかし、新しいことに常に触れられてしかもその勉強の対価としてお金をもらえるということは何よりとても楽しいことです。

職業としての収入や将来性を考えるのは確かに重要ですが、それだけでは長くエンジニアを続けていくのは難しいと思います。まずはプログラミングを楽しむことから覚えることでエンジニアの基盤が作られると思いますし、将来のキャリアも明るくなっていくのかなと思います。

未経験からエンジニアになった人が、生き生きと働けるような環境が今後もっと増えることを願っています。

つたいない文章ですが、読んでいただきありがとうございました。

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