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図書館の大魔術師はいいぞ、という話

※この記事は『good!アフタヌーン』(講談社)にて連載中の圕の大魔術師の第一巻までのネタバレを含みます
正式名称は「圕の大魔術師」ですが、変換で出てこないのでタイトル及び以降の本文では「図書館の大魔術師」と表記します

図書館の大魔術師はいいぞ

これより長い長い物語が始まる!!
君がこれから紡ぐ冒険譚だ!!
開かれたその見開きには何が映るだろうか!

眼を背けたくなる箇所もあるかもしれない!
けれど!
どんな時も!!

頁を進めるのは
自分自身の手に他ならない!!

シオ!!
主人公は君だ!
己の力で物語を動かし!!

世界を変えろ!!!

出典:泉光『図書館の大魔術師』第一巻

これは作中で、主人公であるシオ・フミスが人生を変えるきっかけとなる言葉です。
物語は、田舎に住む本が大好きな少年、シオ・フミスがある出会いをきっかけに、
この世界の書を管理する中央図書館の司書(カフナ)を目指すことから始まります。

・中世ファンタジー
・魔法がある世界
・異世界転生ではない

ここから先、本編の内容に触れながらこの作品の紹介が続きますので、ここまでで興味を持ってくださった方は回れ右して読んでみてください。(後半に推しポイントを書いていますので、そっちだけ見たい方は物語の紹介はここまでですから先をご覧ください)

ちなみに、コミックDAYSアフタヌーンマガポケなど複数の漫画サイト、アプリで1巻に収録されている4話までが無料で読めますので、とにかくまずは1巻まででもいいので読んでみてください
Kindleでも2022/6/23まで1巻無料です

既刊6巻、2022/6/7に6巻が出たばかりですので、是非追いついて一緒に語りましょう!











・・・よろしいでしょうか?行きましょう。

図書館の大魔術師の世界

この世界では、本の都であるアフツァックにある中央図書館によってすべての「書」が管理されています。
書とは、いわゆる紙が閉じられた本以外にも、文字が刻まれた石板、粘土板、巻物、冊子といったものも含まれます。
司書はあらゆる書を保護します。中には魔術書もあり、魔術書に封印された精霊が暴走した際に魔術を用いて鎮圧するような役割も担っています。

中央図書館は、地方に存在する図書館にも図書館法を課し、書が適切に運用されるように努めています。
図書館法には、「図書館はいかなる民族・性別・社会的または経済的身分の違いにおいて貸し出す者を選んではならない」と定められていますが、にもかかわらずこの物語の主人公であるシオ・フミスは村の中の貧民街に住む”耳長”で、このことから村の図書館の館長に図書館への出入りを制限されています。

シオ・フミスという少年

その少年は苔のような緑の目を
不相応な金色の髪と
血の気のない白い肌と
そしてみにくい長くとがった耳を持っていました

出典:泉光『図書館の大魔術師』第一巻

6歳のシオは、本が大好きな少年です。シオは村の他の子どもたちと異なる見た目をしており、その見た目から子どもたちには仲間外れにされ、大人たちからも腫物のように扱われています。
友達と言えるものは村の女の子のサキヤと一角獣のククオくらいしかいません。

サキヤちゃんは、村の図書館の館長の娘です。出入りを制限されているシオが図書館を利用することができるのは、このサキヤちゃんが館長の留守を狙って手引きしているからなのです。
サキヤちゃんとシオは本好き仲間です。同じ娯楽小説を読み、感想を言い合えるシオはサキヤにとってよい友人であり、サキヤはシオにとって数少ない村の中での理解者でした。

また、シオには姉がいます。姉はシオを育て、学校に通わせるために働きづめですが、シオにとてもやさしく、シオもまた姉のことが大好きです。
なお姉は”耳長”ではありません。

シオは信じていました。

いつか自分の前にも”主人公”が現れて
この嫌な世界から冒険に連れ出してくれるのだとーーー

出典:泉光『図書館の大魔術師』第一巻

ある司書との出会い

中央図書館へ1通の手紙が届きます。
ある男が倉庫を整理していると、不気味にぼんやりと光り続ける本を見つけました。この本が貴重な者か、処分していいものなのか判断できないといった内容でした。
中央図書館はこれを受け、この本が魔術書であると疑い司書を派遣します。この派遣先の村がシオの村でした。

中央図書館には各職務に特化した「室」があり、中央図書館外の各地の書の管理を主に請け負う渉外室、書の修復のスペシャリストである修復室、主に魔術を持って書を賊や精霊から守護する守護室などがあります。
村に派遣された司書達の中に、守護室に所属するセドナ・ブルゥという女性がいました。
セドナは空気中のマナと協力し大気を操る「風の魔術師」です。

    ↑一番右のお姉さんがセドナです

村に到着したセドナは、シオが村の子ども達にからかわれているところに通りかかります。
子ども達をいさめたあと、セドナはシオにこう言いました。

ここはヒューロン族の村だよね?
その中で君は少し変わった姿をしているね

出典:泉光『図書館の大魔術師』第一巻

その言葉に対し、シオは「やっぱりバカにするんだ」と言います。
それに対してセドナはこう返します。

馬鹿に?とんでもない!
物語の主人公はいつだって他の人とは違う
それってすごく特別でかっこいいことだと思うけど?

出典:泉光『図書館の大魔術師』第一巻

そのあともシオとセドナの村での交流は続きます。
シオがセドナに村一番の景色を紹介した礼として、セドナは大気を操り一緒に空を飛び景色を見せたり、関係を深めていきます(セドナはとても負けず嫌い)

村に滞在している少しの間の交流のうちに、シオはセドナこそが自分にとっての”主人公”ではないか、そうであってほしいと思うようになります。

セドナはシオにある本を貸しました。
村の図書館への出入りを制限されているシオにとって、本を貸してもらえるのは初めての経験です。
村での任務を終えアフツァックに戻るセドナはシオに、こう言います

君が本を愛する限りまた必ず出会うだろう
その時 返してくれればいい

出典:泉光『図書館の大魔術師』第一巻

シオは問いかけます

本当に・・・お別れですか・・・?
(中略)
僕は・・・ッ
主人公を待ってるんです・・・ッ
いつか僕の前に主人公は現れますか・・・!?

出典:泉光『図書館の大魔術師』第一巻

セドナは返します

主人公は現れたりしない
誰の前にも
決して

出典:泉光『図書館の大魔術師』第一巻

うつむくシオにこう続けます

なぜなら
君の目に映る景色は君だけのモノであり
他の誰の目を通しても見ることはできないからだ

出典:泉光『図書館の大魔術師』第一巻

そして、この記事の冒頭の口上に続きます。

こうして、「"主人公"の物語」が始まったのです。








物語の紹介はここまでです。

この先は私の「図書館の大魔術師好きポイント」をつらつら書いていきます
ちなみに、コミックDAYSアフタヌーンマガポケなど複数の漫画サイト、アプリで1巻に収録されている4話までが無料で読めますので、とにかくまずは1巻まででもいいので読んでみてください
Kindleでも2022/6/23まで1巻無料です(大事なことなので2回言いました)

絵がめちゃくちゃきれい

漫画家の先生に対して素人が「絵がうまい」などと極めておこがましいですが、本当に絵がきれいです。
人物も非常に魅力的、動物もかっこよくかわいく、背景も建物、風景どれもとても細かく書かれており、隅々まで見たくなります。

他にも登場人物が感情をむき出しにするシーンがたくさんあるのですが、そのどれもが本当にその人の感情が伝わってきて、すごく感情移入できます。

ベタだが心揺さぶられる展開

「コミュニティで不当な扱いを受けている主人公が、ある出来事をきっかけに自分の境遇を克服し成長していく」
というのは、名作の黄金パターンのように思います。周囲から認められていなかった主人公が努力を重ねている姿、徐々に認められていく姿はグッとくるものがありますよね。
一巻の中でもシオはセドナとの交流を通してすさまじい成長を遂げますが、その生い立ち、また育った環境から、一巻以降も様々な壁にぶつかります。
健気にくじけずに立ち向かっていくシオに心打たれること請け合いです。

痛々しいほどにかっこよく、本当に格好いいセドナ

シオの運命を変える司書であるセドナ、負けず嫌いな一面もある彼女ですが、べらぼうにかっこつけで口を開くと痛いセリフ、クサいセリフのオンパレードです。
物語の中の話だから、と「そういうもの」と処理されているわけではなく、劇中でも同僚からはちゃんと痛いヤツ扱いをされています。

ただ、本当に格好いいです。
村の中で頼れるものも少なかったシオにとっては、正真正銘の主人公に映ったことでしょう。

シオとセドナは近い将来に再開することになりますが、めちゃくちゃニヤニヤします。うるっと来ながらニヤニヤしました。

また、「この作品の”主人公”」ではなかったセドナですが、「この世界の”主人公”」の一人ではあると思われる彼女。
どういう意味か是非本編を読んで確かめてみてください。
(尤も、彼女の弁では全ての人が自分自身の物語の”主人公”なのですが)

謎に包まれた「原作」と「著者」と「訳者」

第一巻の表紙を見ると、

画 泉光
原作「風のカフナ」
著 ソフィ=シュイム
訳 濱田泰斗

と書いてあります。
最初これを見て、「あ、原作あるんだ~なろうなのかな、でも訳ってあるから海外のなろうみたいなサイトが原作なんかな」
と思って、先が気になって原作を読もうと思って調べたんですが、

全然ヒットしません

「風のカフナ」もソフィ=シュイムも濱田泰斗もひっかかりません。
そう、この原作、著者、訳者はこの現実世界には存在しないのです。

ん、「風のカフナ」・・・?大気のマナを操る風の魔術師である司書(カフナ)がいたような・・・?
「風のカフナ」は、たびたび作中で本文が引用されています。
この謎の原作、著者、訳者について、この先本編の中でどのように触れられていくのか、非常に楽しみです。是非皆さんも追ってみてください。

是非、一巻だけでも読んでみてください

グダグダと語ってきましたが、図書館の大魔術師、本当にいい作品です。
特に一巻のラストがこれ以上ないと思えるほどかっこよく、心揺さぶられます。
いい映画を見た後のような読後感が得られます。
もちろん、2巻以降も魅力的なキャラクター、わくわくするストーリーが続いていきますので、是非読んでください。
図書館の大魔術師を何卒よろしくお願いいたします。

ちなみに、コミックDAYSアフタヌーンマガポケなど複数の漫画サイト、アプリで1巻に収録されている4話までが無料で読めますので、とにかくまずは1巻まででもいいので読んでみてください
Kindleでも2022/6/23まで1巻無料です

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