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人間の条件とヒトを超えていく人間

 アーレント『人間の条件』において、活動とその継承のための制作は、異なる能力に、おそらくは別々の主体により、その多数性によって人間性は支えられる。ベルクソン『道徳と宗教の二つの源泉』で主に論じられるのは、種としてのヒトを超え続ける未規定な人間である。それは、道徳的創造者、神秘思想家の存在に支えられる。『源泉』における調教と神秘性のあいだには知性が位置づけられる。『条件』はこのあいだに位置づけられるだろう。ここでは、法(=道徳規範)は活動と制作という知性によるからである。
 活動は、判断力の条件であり、活動の条件は、交通のある、限られた規模の都市である。社会の進展は、誰かに帰されるのでなく、都市に帰される。ベルクソンの「神秘思想」は、作者に結びつけられ、むしろ、作者が思想である。社会の進展は、思想の新しさと、その模倣者による。
 労働は、活動の、解釈である制作によって、社会に保存された規範によって調教されたものたちによる相互行為である。先にも述べた通り、知性は活動から制作までの過程と置換できる。余り物である、神秘思想は、その新しさによって、規範や戒律ではなく、規範や戒律を変更する活動のルールを変更する。
 神秘思想とは、偶然にも間違えて生まれてきたものの生へのそれ自身による祝福である。


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