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最近とこれからの本屋さんに関するあれやこれや

最近は、コーヒーの飲める本屋さんが増えている。大抵、個人経営で、雑誌はほとんど置いていなくて、本も店主が選んで置いている感じだ。本のセレクト書店とか、独立系書店とかいうらしい。

そういう本屋さんが増えるのは嬉しいが、私の欲しい本は、あんまり見つけることは出来ない。また並んでいる本も、ジュンク堂で探せば売っていそうな本ばかりだったりする。それに、どこか友達や知り合いの家の本棚みたいんで、ちょっと気恥ずかしいのだ。

シェア型書店というのも増えている。棚貸し古書店だ。棚ごとに売主が居て、本だけでなく、小物や立体作品も売っていたりする。棚ごとに傾向が違うので、それを把握する前は、本を探すには、全部の棚を見なければならない。

この棚貸し古書店の場合、棚のレンタル代でスペースの運営費が賄われているようだが、本の売り上げとレンタル代を相殺すると、全体として儲けが出ているのかわからなくなる。コミュニケーションの場としての意味が大きいのだろう。


1990年代までは、東京ならどこの駅前にも本屋さんがあった。個人経営の本屋さんだ。

店は小さいけど、入口付近には、新聞の書評欄にあった本を並べた本棚があったり、春陽文庫がやけに充実していたり、某出版社の本だけに特化した棚があったり、それぞれ個性があった。

私は本屋さんが好きな人間だったので、入ったことのない本屋さんを見つけると、入って、眺めて、なにがしかの本や雑誌を買って出てきたものだった。

当時は、新刊本は書店で実物を見て、その本が出たことを知ったりした。東京の場合、新聞広告よりも一日早く店頭に並んでいたりした。だから、某駅前の小さな書店でいつも読んでいる著者の新刊本に巡り合って、購入したことが何度かある。

インターネットなどなかったから、本の情報もそんなになく、全体がゆったりとしていた。

現在は出版社のサイトを見れば、書影が見られたり、これから出る本の情報がある程度わかるのが普通だ。本によっては、SNSを駆使して、イベントが組まれていたり、内容が少し読めたり、著者のインタビューや編集者の短文が読めたりする。

本を巡る事情も、21世になって、だいぶ変化しているのだ。

本やCDが売れた時代は、1995年くらいをピークに終わってしまったと言う。それにともなって、駅前にあった本屋さんも、一つ消え、二つ消え、今ではほぼなくなってしまった。

今残っている本屋さんは、チェーン店がほとんどだ。そういうチェーン店の本屋さんも、最近は変化している。共通しているのは、どこの店も、以前より本の量を減らしていることだ。本が売れないから在庫を減らしているのだろうか?

一番目立つのは、本の置き方だ。背表紙を見せる棚が減り、表紙を見せる面置きの棚が増えている。また、本来、6段だった本棚を、5段とか4段にしていたりする。

そしてどこの本屋さんでも、多分、売れ筋なのだろう限られた同じ本が、平置きされるようになっている。かといって、その本が実際に売れている感じもしないのだ。

本の代わりに別なものを売ろうとしている本屋さんも多い。一番多いのは、文房具を売っているケースだ。そういう店でも、定番文房具の売り場の面積は限られていて、どちらかというと、流行に左右されるオシャレな趣味の文房具といった品揃えの売り場の方が広くなっている。

だから、定番の文房具や必需品を買おうと思っても、売っていなかったりする。商店街から文房具店もなくなってきている。ちょっとしたものなら、コンビニやスーパーでも売っている。

一番、頼りになるのは、ホームセンターやヨドバシカメラの文具売り場だ。面積が広いから、商品が揃っているのだ。定番の文房具を確実に買うことが出来る。だから、本屋さんの文具売り場は、私みたいな人間には、あんまり役に立たないのだ。


本屋さんのハナシに戻ろう。私が時々行く吉祥寺コピスのジュンク堂も、現在、模様替えの真っ最中だった。本棚の配置も変わり、本棚そのものを減らしていた。二年くらい前に比べたら、本の在庫は40%くらいしか残っていない印象だ。

空いた売り場は、絵本売り場になりそうだった。その他にも、文房具売り場の面積も拡張されて、また、雑貨やらの売り場もできそうだった。

ジュンク堂は、昔の丸善のようになるのだろうか? 昔の丸善は、高級文具も売っていたし、輸入スーツやコートも売っていた。現在、ジュンク堂と丸善は一つの会社になっているようだから、昔の丸善に戻るのだろうか?

昔の丸善には、洋書や書籍と並んで、文具や輸入ものの紳士服売り場があった。考えたら、変なお店だった。ぐるっと回って、昔に戻るのだろうか?

あ、でも絵本を充実させるのか……。

正直、これからのジュンク堂吉祥寺店には、私にとって欲しい本はなくなり、欲しい文房具も、多分、ないのだと思う。この年になって絵本でもないし……。

私にとってジュンク堂は、図書館のように背表紙で並んだ本がたくさんあるのが、一番の魅力だった。ジュンク堂は、本がいっぱい詰まっていたから、フラッと行って探せば、欲しい本が確実に買える本屋さんだった。

そうでなくなってしまうのだから、これから私はどうしようか、ちょっと困っている。


現在、欲しい本を買おうと思ったら、Amazonなどのネットを利用する方が確実だ。新刊本といっても本屋さんに入荷していない場合が多いし、文庫だって出た時に買わないと、後に映画化でもされない限り、店頭からはすぐに姿を消してしまう。

書店に注文すると、系列店に在庫があれば翌々日くらいに届くが、そうでないと未だに10日くらいかかったりする。

ところが、Amazonの場合は、注文した翌日に届いたりする。それも送料無料だったりする。

何かが大きく間違っている気がするが、Amazonの方が素早く、確実に欲しい本が手に入るのだ。

欲しい本が決まっている者にとっては、リアル書店はもう魅力的ではないのかもしれない。

私の場合は、図書館のようだったジュンク堂は、未知の本と出合う場所でもあった。私には、知らない、著者、知らないジャンルの本を読みたいという欲求があり、とにかく本棚を眺めて、ン、これは、と思う本を手に取って、中を見て、面白そうだったら買う、という習性があった(…今はそうでもないが…)。

だから、料理本だろうが剣道の本だろうが、林業の本だろうが、ジェットエンジンの開発者の本だろうが、手当たり次第に読んでいた。

私にとっては、そういう本選びが出来る本屋さんがジュンク堂だったのだ。本が少なくなったジュンク堂では、そういう本選びが楽しめなくなってしまった。

なんだかな、だ。

かつて駅前にあった個性的な小さな本屋さんも、その個性に沿って、面白い本を見つけることが出来た。そういえば、コロナ以降は、コンビニで雑誌の立ち読みも出来なくなった。

なんだか、寂しい。

昔を懐かしがっているジイさんになってしまった。


ところで、本屋さんで、文房具以外に何が売っていれば私は嬉しいだろうか?

と考えてみたが、私は中学生の頃から、本とマンガとレコードとCD以外にはお金を使わない人間のまま今まで来てしまったので、何も思いつかないのだ。子供の頃から62歳を過ぎた今まで、そんな調子だ。

新刊本と古書店が一緒になっていると嬉しい気がする。うーん、なんだろうか? 目薬とか眼鏡とか、電子書籍用の端末とかがあったら嬉しい気がする。

自分の手持ちの端末に、電子書籍がその場でダウンロード出来て、現金払いが出来るようになると、それを利用したいと思う。電子書籍も本屋さんで買いたいのだ。結局、本のことしか思いつかない。

しかし、その場合、出版社から買うよりも、書店の取り分が派生するから価格が高くなるのだろうか? 正直、私は電子書籍的なものには詳しくないのだ。青空文庫しか利用したことがない。

ところで出版社から直に本を買ったとして、それも書店と同じ価格なのだろうか? 紙の本の場合、出版社から直に買うということは、できるのだろうか?

って考えたら、出版社のサイトからでも本は買えることに気がついた。しかし、価格は書店で買うのと一緒だ。詳しい仕組みはわからないが、再販価格維持制度っていうのが関係していそうだ。



世の中、色んなものが値上がりしている。当然、本の値段も上がっている。新書で1000円越えは当たり前になってきたし、文庫で1500円も普通になってきた。

単行本は、エンタメ系の小説こそ2000円未満の価格がついているものがあるが、その他は3000円前後が多くなってきた。消費税を入れると4000円5000円も普通になってきた。

…結局、愚痴しか書いていない。

ああそうだ、高い本は買えないから、レンタルしてくれたら嬉しい気もする。貸本屋が復活すればいいのだ。なんて思いついたが、その場合、図書館とどう違うのだろうか? 貸本屋? 有料の民間図書館?

本屋さんにも出版社にも著者にも、読む人にも、みんなに有益な展開ってないのだろうか? 90年代は、本がいっぱい売れたから、本屋さんも出版社も著者も潤ったし、読者もそんなに高くない価格で本が買えたのだ。

私としては面白い本を見つけて、それを読める状態が、ストレスなく得られれば良いのだ。

ジジイの繰り言になってしまった。

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