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映画日記 『ビバリー・ヒルズ・コップ アクセル・フォーリー』を見て、ミッキー・スピレインの『殺す男』を思い出した

とどのつまり私は感傷的なジジイだから、あの頃よもう一度という感じで、エディー・マーフィーの『ビバリー・ヒルズ・コップ アクセル・フォーリー』も見てしまった。

見て、ビックリしたのだが、『ビバリー・ヒルズ・コップ アクセル・フォーリー』は、警察を舞台に2020年代に作られた映画であるにもかかわらず、パソコンがほとんど出てこなくて、刑事が足で歩いて捜査をするのだった。パソコン・モニターが何台も並んだ捜査本部なんてものも、ほぼ出てこなかった。

街中には監視カメラがあることはあるのだが、ギャングは1980年代の映画のように自分の身を平気で晒しながら銃を撃ち移動しているし、ギャングのボスの拠点でも、警備は警報装置や防犯システムではなく、機関銃を持った警備員なのだった。

そういう現代ではありえないアナクロなものと、今のビバリーヒルズの風景が入り混じっているところを、楽しめばいいのだろうか、と思いながら見ていると、やたらに派手で破壊すること以外に意味のないカーアクションや、ドンパチも含めたなにもかもが、1980年代そのままに再現されていて、やっぱり、いったい、いつの映画なのだろうか、と不思議になるのだった。

では、懐かしいのかといったら、よくわからなかった。考えてみたら、以前の『ビバリーヒルズ・コップ』シリーズを、私はちゃんと見たことがなかった。

映画館では絶対に見ていないから、見たとしたらテレビだ。しかし、テレビで見たとしても、私のことだから、最初から最後までちゃんと見ているか、当てにならない。

それでも音楽は、とっても聞き覚えがあるし、登場人物の何人かは、見覚えがある。今回は、悪役でケビン・ベーコンが出ていた。しかし、以前も悪役で出ていたのか、それとも今回初めての出演なのか、その辺がわからない。

ウィキで調べてみたら、『ビバリーヒルズ・コップ』はこれまでに3作が作られている。『ビバリーヒルズ・コップ』(1984年)、『ビバリーヒルズ・コップ2』(1987年)、『ビバリーヒルズ・コップ3』(1994年)だ。

今回の『アクセル・フォーリー』は、それらの30年ぶりの続編になるようだ。

ちゃんと1、2、3を見ていたら、『アクセル・フォーリー』は、もすごく楽しいのだと思う。


『アクセル・フォーリー』を見て思い出したのが、ミッキー・スピレインの『殺す男』という小説だ。って、今時、ミッキー・スピレインなんて誰も知らないか……。

ミッキー・スピレインの探偵マイク・ハマーのシリーズは、戦後、世界各国で大ヒットしたベストセラー小説だった。バイオレンス&セクシーが売りの、かなり低俗な部類に入る探偵ミステリーなんだと思う。私は大好きで、主に二十歳前後の頃に夢中になって読んでいた。

スピレインの小説は、日本ではハヤカワ文庫とポケットミステリで出ていた。文庫のカバーイラストは生頼範義で、読んでる側の私の感覚では、同じ生頼範義がカバーイラストを手掛けていた平井和正のウルフガイ・シリーズと同じ系統のもののように感じていた。スピレインも平井和正も、形態は小説だったけど、本質はマンガだったと思う。

『殺す男』は、探偵マイク・ハマーのシリーズの一番最後の作品だ。そもそも19年ぶりだかで出た新作だった。それが1990年頃のことだから、既に四半世紀も前のことを私は持ち出していることになる。

さすがに1990年前後の新作小説だから、作中に少しだけパソコンが出ていた。フロッピーディスクとかも登場していたように思う。小道具や風俗は、時代に即して変化していたが、肝心の小説の中身は、恐ろしく昔と一緒だったのだ。マイク・ハマーはまるで変っていなかったのだ。変わっていなくて、とっても面白かったのだ。

そのまるで変っていない感じが、『アクセル・フォーリー』も同じだなと思ったのだ。だから、『アクセル・フォーリー』も、昔を知っている人が見たら、恐ろしく面白いに違いない。




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