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夫vs鳥よけネット

今年も夫がブルーベリーに鳥よけのネットを張った。その日から朝と夕方、ネットをチェックするのが私の日課となった。
昨年ムクドリが1羽、ネットに引っ掛かかるという出来事があったからだ。

夕方、夫がブルーベリーの収穫をしようとネットの中に入り、しばらくすると「うおおっ!」と叫び声をあげた。何事かと見に行くとネットにムクドリが絡んでいた。周り中に羽が飛び散り動かない。「なんて事が、、」とショックを受けていると、夫が「あ、生きてる。」と呟いた。「良かった!」と近くに寄って見てみると、まあるい目をパッチリ開けてジッとしていた。ネットから逃れようと暴れすぎて疲れたのか、夫にされるがまま無事に救出された。庭のイスの上にのせても、すぐに飛び立つ様子もなくボーッとしていた。このまま力尽きてしまうかとハラハラしていたけれど、ちょっと目を離した隙にどこかへ飛んでいってしまった。

これに懲りてネットは諦めるかと思いきや、夫は今年も張るという。
昨年の鳥よけのネットは、高さ2メートル超えのブルーベリーを囲うように四隅に物干し竿をブッ立てて、ネットを天蓋ベットの様にかけるというものだった。去年はまだ私も元気で、その無謀な作戦に加担してえらい目にあった。これを「机上の空論」というのだとしみじみ実感した。
なので今年はキャンプ用のテントを買い、屋根部分のシートを取り外して骨組みだけにして、それに一面ずつネットを貼り付けるという作戦に変わった。
物干し竿からテントへの変更はかなり体力を温存できた。しかし昨年余ったネットを使い回すという選択は夫に過酷な労働を強いた。
私は手術と投薬治療の末、今回全く戦力にはならずクリームパンを頬張りながら応援していた。

夫が昨年買ってきた鳥よけのネットはかなりの強者だった。農家さん用かと思うほどの大きさのものを切って使うタイプで、とにかく絡む。鳥だけでなく人間にも容赦なく絡む。サンダルの飾り、帽子のマジックテープ、メガネ、芝生、柿の木の新芽などなど、あらゆるものに突っかかって絡んでいく。反抗期さながらのネットに夫もイライラがつのり、にわか手伝いの私に「そっち足りてる?」「真っ直ぐなってる?」「そうじゃなくてさ!」ととばっちりが来る。

弄ばれるように何度もメガネを絡め取られながらも、ようやくネットを貼り終えた夫は私に「来年はこのネットはイヤだ。」と言いに来た。「高くても四角いのにする。」「そうだね。頑張ったね。」

今年の完成したものを見ると、人間に無駄に絡んでくるような弛みもなくスッキリとしている。鳥がうっかりぶつかってもすぐに捕獲されるようなこともない。

それでもいつか夫が「もうネットはいいか。鳥にも食べてもらおう。」と言ってくれることを私は密かに願っている。

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