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夏が来た


雨上がりの土の色は濃く、敷き詰めたレンガの庭には跳ね返るほどの白い日差しが刺す。
怪しげな灰色の空と青空がせめぎ合う中、真っ白な夏雲が威力を増す。
少し前までは新緑と青空が初夏の初々しさを伴っていたが、その後のひと雨で一気に夏が来た。

昨日できなかった洗濯物を庭に干し、朝からずっと縁側で空を見上げている。洗濯物の番人。

風が気まぐれに向きを変え、その度に日が差したり陰ったりしている。
道路向こうの大きな木々はオーケストラの指揮者のように体を大きく揺らしながら葉の擦れ合う音を輪唱させ、耳にやわらかい音色を届けてくれる。

ときどき私の方へ背筋を伸ばしたくなるような風が吹き抜ける。ピンチハンガーがくるくる回る。夏の風には緑の匂いがする。何故か懐かしい匂いがすることも多い。雨上がりの匂いが濃いのも夏だ。今は柔軟剤の匂いがする。

ああ、どうやら青空が優勢になったようだ。
洗濯物の番人の役目は終わりにしよう。


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