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飛行機が見せてくれたもの

今で言う恋人繋ぎは昔、握力MAXで握って相手を打ち負かす手段だったりしたのは私の地域だけだったのだろうか。

私はその恋人繋ぎ握力MAXで夫の手を握り、飛行機の離陸に耐えた。
「新幹線は無理なの?」
「え、いいけど5時間くらいかかるよ。」

飛行機は20年前に岩手に転勤するとなったとき産まれて初めて乗った。それ以来だ。
「シートベルトゆるゆるなんだけど。」
『ここを引っ張るんだよ。』
「ああ!動いた。」整備の人に手を振る。
『こんな時でも手は振るんだね。』
「このまま地面をずっと走ってくれないかな。」
『今日中には着かないね。』
『あ、エンジンかかったね。』
「ああ!飛行機がやる気を出した!」
「何でそんな急いで飛ぶのっ!?」握力MAX。
『痛てて、、、』
「何で斜めになるの!?」
『離陸の向きが仙台方面じゃないからね。』
「最初っからそっちに飛べば良かったんじゃ?」
『逆走だね。』
「ああ、車がゴミのようだ。」
『恐怖で口が悪くなってるね。』
「何で揺れるの!?」
『雲の中は揺れるからね。』
「飛んでるのにガタガタいうとか意味わかんない!」
「あ!晴れた!」
『雲の上はいつも晴れてるからね。』
「すごい!!」

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それから到着までの間ずっと窓の外を見て過ごした。
「いつも見上げる空は雲の向こうに空があるのに、今は雲の向こうに地球がある。」
「高さによって風の強さが違うから、それぞれ雲の形も動きも違ってる。」

夫は私のMAXの握力に打ち負かされたのか、気づいたら眠っていた。


帰りの飛行機では
「飛行機って自力でバックできないのは可愛いね。」
「飛行場を走る自転車のおじさんは何かシュールだね。」
『余裕が出てきたね。』
『でも手は握るんだね。痛ててて、、、。』

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